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55.加減しない力は

…ユ…ラ。


とても遠い所から名前を呼ばれている。それはずっとだ。そういえば、つい最近もあったなこんな感じ。


ああ、まだ呼ばれている。起きたくないのに。


ただでさえ最近寝ても疲れがとれない。それになんだか体が凄くだるい。それに夢なのに誰かが私の頭を撫でている。あとほっぺたが微かに痛い。


「起きないならもっと刺激を…口づけでもしてみたらどうかなぁ。好きなんでしょう? 救世主様の事。 僕はもう少し穏やかな子がよいですけど」


はぁ?


「なんですって?! あだっ!」

「ぐっ」

「大丈夫ですか?」

「痛そう」


ラジの呻く声とため息、同時にリアンヌさんの気遣いの声とナウル君のラジに同情する声。


「貴女が静かなのは寝ている時だけだな」


ぶつかりジンジンするおでこをさすりながら、ラジを睨み付ければ呆れたような顔。ラジは、どんな時でも美形で。さらに近いと目に毒だわ。何この鼻の高さは。ちょっと分けてほしいわ。


そうだ毒といえば。


「リューさん達は!?」

「生きてはいますよ。今は急遽用意された救護室です」


ラジの言葉にごまかしはなさそうで、ほっとした。よかったよ。しかし確かいたのは最下層だったはずなのに。今いる場所はどうやら外のようだった。僅かに所々で仄かな光がみえるけれど辺りは暗い。


「いつの間になんで外?」

「いやだなぁ。救世主様が全部吹っ飛ばしたんじゃないですか」


スフィー君が疑問に答えてくれた。よかった君も無事かって。


「私?」

「そうですよ。凄いですね」


周りを改めて見る。私達はクレーターのように大きく窪んだ中心にいた。お城を壊してしまったって事? じゃあ中にいた人は。血の気が一気に下がる。


「無傷とはいかないが、生きていた者達は無事だ」

「…ホント?」


建物が消えて人は大丈夫なんてあるのか。


「嘘を言っても仕方がない。爆発したような音の時、強い光が我々を包んだ。おそらく光の神器だろう」


そっか。

護ってくれたのかな。

とにかくリューさん達に会いたい。


「…動かない」

「だろうな。落としたくないから暴れないでくれ」

「うわっ」


抱えられ不安定で思わずラジの首に腕をまわせば。


「それでいい」


なんか、上からで気に入らない。でも早くリューさん達の様子が知りたいから文句は言わなかった。ただ顔に出ていたらしく側にいたリアンヌさんのクスリと笑う声が聞こえた。


この時はまだ平和だった。


私は、気がついてなかった。

光の、神器達の声が聞こえなくなっていた事に。

距離が近くなった人との別れが間近にせまっていた事にも。


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