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54.我儘に我がままに
進めないで。
話についていけない。
なにより。
「ラジっ救世主とやらの私が命令する! 降ろしなさい!」
教わった技でラジの脇腹の急所を足で突き、ありったけの声をだした。
「光っ! いい加減にしなさいよ! 力を貸しなさいよ!」
勝手に決めんな。
私は欲張りなんだから。
絶対諦めない。
「ユラっ危ない」
暴れ出す私に一瞬ラジの腕が弛んだ隙をつき更に蹴りあげ、転がりながら距離をとりなんとか立ち上がり両腕を上につき出す。
『…地を起こしなさい。あなたの中に眠る片割れとあそこにいる…片割れ…』
「オッケー!」
弱々しい光の声は気になったけど、とりあえず今を優先する。
皆で帰るんだ。
もう他はどうでもいい。
「地の片割れさん病んでいるところ悪いけど力貸して。他の皆も」
息を吸う。
全てを体にとりこむように。加減なんかしない。
浄化とやらの力が私にあるなら今やらないでどおすんの。
溜めてもっともっと。
室内なのに風が頬を焼くような火を感じる。耳にはコポリと水の音が。
「諦めないんだからー!」
固く閉じた扉に両手をつき出した。
ありったけの力を込めて。
光が飛び散って何も見えなくなった。




