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50. 最下層の場所へ

メルベ様に会ってから二日後の現在。

一般人でも芸のある者を宴に呼び派手に行うパーティーという名の王様主催の酒飲み大会に参加した私達一行は、抜け出し目的地であるお城の最下層に急いでいた。


「お姉さんは怖くないんだね」

「そういうのはまだないかな。正直イメージと違って驚きはしたけど」


てっきり暗い洞穴や土壁みたいな道を想像していた私には、少し狭く快適とは言えないまでも真っ白なタイルが貼られたようなトンネルの道は予想外だった。


「そうかな。あっ、そこ高さがあるから気をつけて下さい」


長く薄いドレスが一歩を踏み出す度に足に絡まりもたつくと同時に苛々しだした私に案内役のスフィー君が先程から気遣って声かけをしてくれる。


「助かるわ」


お礼を言えば、彼の頬はあがる。


…彼に対して一気に好感度が上がってきている私は単純かしら。


そんな事を思っていたら私の後ろから不機嫌そうな声が。


「何がお姉さんだ」

「君はなんでさっきからスフィー君に文句ばっかりなの?」

「ち、違います! 文句なんて言ってませんよ!」


なんだか二日ほど前から不貞腐れているナウル君。私には原因が分からず今に至る。そもそも男の子は何を考えているのかわからない。いや、まてよ。それとも私が歳をとったせいで理解ができないのかも。


「ふらついている」

「大丈夫ですか?」

「はい、なんとか。ありがとうございます」


ラジに足元がおぼつかなくなってきたのをみられリアンヌさんに心配され始めた頃。


「ここから変わります」


スフィー君が足を止めたのは、もはや見飽きた真っ白い色の扉の前。


私は、数歩前にいる細い彼の背中に聞いてみた。


「スフィー君、この今まで歩いて来た道はやたら清潔過ぎて明るい道だったし、いくら特定の人しか入れないとはいえ誰にも遭遇しないのっておかしくない?」


そうかなというように首を傾けた彼は実に分かりやすい解説をしてくれた。


「僕達、この石が嫌いなんです。僕は成功したほうだけど失敗した奴らが来ないようになっています。まぁ、こんな場所に近寄りたい人なんていないんだけど。来る人は仕方なくというか。この白くて明るさが保たれないと危ないから掃除する人とか」

「…そっか」


本人から語らせるには良くない内容だったと後悔。


「普通は、この扉から入るんですが、なるべく見つかるまでの時間があったほうがいいと思うし、あとお姉さんがビックリしないようにこっちから入りますね」


そんな私の心なんて知るよしもない彼は、淡々と進めているし異議も勿論ない。


「なんか、やっとイメージ通りかも」

「しっ。彼らは、目は悪いけれど耳はよいから気をつけて」

「あっ、ごめん」


つい口から出ちゃったよ。

だって、やっぱり病院みたいな通路よりこんな感じよね。


扉の横にある隠し扉に誘導された私達は、傾斜のある道を音をたてないよう進んでいるのだが、岩場を登るような道になり私は皆に煩く言われながらもドレスの裾を膝上で結びなんとも色気もへったくれもない格好だ。


「頭低くして、下を見てください」


少し開けた場所に着いたら今度はほふく前進って…。聞こうにも声は出せないし、仕方なく彼の近くへついていく。他の皆もスフィー君の近くへ私より遥かに素早い動きでたどり着いていた。


ああ、お姉さん疲れた。珈琲、勿論ブラックで一杯下さい。叶わぬ願いを抱きながらスフィー君の隣へ。


「人なの…?」


見下ろした場所は、室内が暗くてもその異様な光景は充分過ぎるほどだった。


地面を這いずる生き物。

彼らは人なのだろうか。

強いなんとも言えない匂いと言葉ではない悲鳴や遠吠えのような声の中。


──あれは。


「リューさんっ…」


変わり果てた彼がいた。


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