49.まだ始まりはこれから
「強く拒否を示しているようですが。 どうされますか?」
私は、強い憎悪と拒絶を露にする神器を横目に念のため次期女王様とやらに確認をとる。
「よし…じゃあ、行きましょ」
無言の、けれど少しの苦笑を浮かべた彼女の仕草で合意と判断し、弱りきった神器に声をかけながら彼らに背を向けた。
「僕も行くよ」
声の主は、陶磁器の人形のような端正な顔をしたスフィー君。
純粋な親切心なのかな?
それとも…。
「最短の道をできれば今日中に教えて欲しいかな」
どちらにしろ本人にとって気分のよい場所ではないだろう。来なくて大丈夫よという意味をこめ表情の乏しい彼に返してみれば。
「心配してくれるの?」
心配?
答えはノー。
「違うわ」
「そうかな?」
そうよ。
私は、自分が可愛いだけ。
「とりあえず、最短かつ安全な道があれば書いてくれると助かるわ。お願いしていいかな?」
すなわち責任をとりたくない。
もうこれ以上メンバーを増やしたくない。
だって、ただでさえ不安だらけなのに。
もし何かあったら…。
「でも、いた方が便利だと思うし。メルベ様、よいですよね?」
「好きにしなさい」
私の言葉は彼には届かなかったし、親玉のメルベ様まで許可をだした。
「私は、頼んでないけど」
拒否を示すも、世間話をするように明るく軽く話す彼の口からは悲しい言葉が紡ぎだされていく。
「僕は暇だし。それに、ほら」
肩をすくめて最後のしめに。
「どうせ死んでるし」
「スー!」
偽メルベの青年の非難の声。
呼び方からしてスフィー君と親しいんだろう。
「だって本当だし。それにもう──」
“もう充分生きた”
スフィー君は、そう締めくくった。
若すぎるよ。
今の状態がいつからなのかは知らないけれど、君は10代でしょ?
そもそも子供から出る台詞じゃないわよ。
「…分かった。支度して」
私の口から気持ちとは違う言葉がでた。
「おまえっ?!」
「マート。救世主様に失礼だし僕が望んでいるんだ」
「スー!」
偽メルベの青年はマートという名らしい。
凄い目つきで私を睨んでいる。
そんな彼のとなりで空気を読まない彼は、私に笑いかけた。
「役に立つように頑張るね。ありがとう」
…なんて返事をすれば正解なのかな。
* * *
『ユラ、貴方が私達の力を使わず望みを叶えたいなら、目の前のモノを消すしかないですよ?』
「わかってる」
『ほら、来ましたよ』
「わかってるわよ!」
私は、後に夢にうなされる夜を何日も迎える事になる。