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38.ラジウスside

「とりあえず目的地付近で待ちましょう」

「ああ」

「ラジウス様」

「ああ」

「情けない。しっかりなさい」

「リ、リアンヌ様!」

「いい、俺が悪い」


俺は、ナウルがリアンヌに向け手を剣の柄にかけたのを見て、それを制した。


リアンヌは、上の空の俺の頬に軽いとはいえない衝撃をしかけ、更に二発目をくらいそうになり、それを術ではねかえし、そこで俺は、やっと我にかえったのだ。


こんな事で動揺を態度に出すなど、戦だったら確実に負けている。


──どうやら、本当に俺はユラに溺れているらしい。


「ククッ」

「ラ、ラジウス様?」


思わず出た笑いに、ナウルは気味悪がっているようだ。俺も自分で驚きだ。


さて、どうするか。

ダーウを海面に一時停止させ、海の魔獣を倒しながらも、主を海に突き落とし見失った為にいつもの攻撃的な態度を一変させ、リアンヌの腕の中で小さく身を縮めているノアを眺めながら、考えを巡らす。


リアンヌの言うように、地の国に入る前にある街は、情報ではかなり規模が大きく歓楽街もある為、治安は場所によっては悪いだろうが、出入りが多いという事は目立ちにくいだろう。


「地に入る前、確か街は、バージュと言ったか。そこで待機する。リアンヌ、街に入る前に、髪の色を変える。それと──俺の魔力は高すぎ目立つからカバーをかけてくれ」


「カバーって、ラジウス様の魔力を封じるのですか?そんな事が可能なんて…」


「我が国で使えるのはリアンヌだけだ。しかも最大でも2日が限界だろう。それに5割ほど抑えるくらいだ。まあ気配でわかる者もいるだろうが時間稼ぎにはなる」


「よろしいのですか?」

「街にいる間だけだ。それに、剣がある」


そう易々と殺られるつもりはない。


「…ユラは、無事か?」

「耳飾りに施した術をたどった限りは、体調に変化はないようです」

「えっ、リアンヌ様は、そんな事も事前に?」

「俺が最初に彼女の護衛と監視を命じたからだ」


ナウルは、監視と聞き驚いているようだが、今でこそ彼女自身は危険人物ではない。が、初期段階での監視は当たり前だ。まあ、そのおかげで彼女の無事がわかるのだから無駄ではなかっただろう。


「ひとまずバージュへ向かう」

「はい」

「はっ」


俺たちは目的地へ移動し始めた。



「ラジウス様!あれ!」


一夜明け、俺達は、バージュの入り口に近い飯屋で少し遅い昼食をとっていた。

室内は混みあっており、外に出された壊れかけた木の椅子に座り、入り口がよく見える場所にいたのだが、いち早く気がついたのは、ノアとナウルだった。


ちょうど街へ入る小柄な女。

髪の色が茶色に変化し、布を頭からかぶり表情はまだよく見えないが、ユラに間違いない。

俺達は食事もそこそこに立ち上がり、彼女の元へ近づく。


その時、ユラが顔を上げたために、彼女の楽しそうな顔が見えた。



…誰だあれは?


彼女は、一人ではなかった。

二人の男と一緒だった。

いや、片方は見覚えがある。


片方は──風の国、ヴァーリアの王子だ。


ジリッ

どこかが酷く痛む。

──これが、嫉妬というやつなのだろうか?





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