35.ゴツ&細イケメンに遭遇
「ゲホッ!うぇっ!」
『大丈夫ですか?』
「な、なんとか…う~鼻に海水入って痛い」
咳き込みゼイゼイしながら光の声に返事を返した。あー急に嫌な事を思い出した。昔、流れるプールで小さかった私は水中で二回程クルクルでんぐり返しの様になり、それ以来プールが大嫌いなのだ。
私、ノアの蹴りの反動で海に落ちたのよね。
「あれ?」
今、気づいたけど何故か呼吸ができている。
でも、海に落ちたのは確かで全身びしょ濡れなうえに口や鼻に海水が入ったせいで、酷い有り様だ。
私は、とりあえず落ち着こうと自分に言い聞かせ腰に提げていた巾着袋から濡れたハンカチを取り出し、よく絞って顔を拭いた。
そして、幾分心臓のバクバクが治まり今更ながら自分の状況、周りを見た。どうやら私は、シャボン玉のような丸い膜に守られ、水中を漂っているみたい。光が差し込んでいて視界がいいはずなのに心なしか濁っているような。時折魚が私に気がつき驚き急いで通過していく。
魚…亀怪獣。
「皆、大丈夫かな?」
ラジやシルビアさんだったら、なんとかなっている気はするから正直そんなに不安はないんだけど。
「それより問題は1人はぐれた私よね」
本格的に考えようとした時、珍しい声が頭の中に聞こえてきた。
『慣れてなくてもう限界かも』
女の子の声、水だ。
いやそれより限界?
「えっ、限界って…とっ!」
水の声がした直後強い揺れで転がり膜にぶつかりボョンと跳ね返された。
「破けなくてよかった!」
危ない!
もう海水は飲みたくない!
そして揺れはまだ続いていて私は凄い速さで上に向かっているみたい。
「あれっ上に浮上?」
わたしの呟きに水が答えた。
『岸のある辺りに向かっているの。今着くよ』
パンッ!
バシャン
「ぶっ!」
小さな破裂音と同時に私は海水に頭からダイブした。顔を上げれば、前は砂浜で浅く溺れはしなかったけど、顔が砂だらけで口にも砂が入った。
…それよりも。
「私は決して太ってないから!!」
こんな状況でも水が最後に言った台詞はちゃんと聞こえていたのだ。
『重っ』
確かに水はそう言った。
前の若くなる前なら確かに少しウエストがきつくなりだした服もあった。
けどね。
「今はスレンダーよ!!」
『叫んでいるところすみませんが、誰か来ますよ』
まだ寝そべったままの私は光の若干呆れたような声で急いで起き上がり、お願いをした。
「光、とりあえず一番強力な防御はってね!」
『はい』
よし、最低限死にはしないだろう。
なんでも来い。
水中から陸に上がった私は少し強気だった。
そして光が防御してくれたのと同時に不思議な生き物に乗った数名の人が近くの草むら現れた。すぐ攻撃されるかと思いきや。
「貴方は…」
一番前にいた細めの男性がそう言いながら深く被っていた布のフードをとった。高い位置で結んだポニーテールに深い緑の目。緑の瞳は風の国の人だけど。
…確か。
「風と火の戦の時…私に何の得があるのか聞いた人?」
「はい」
イケメンは目を細め笑った。
癒し系イケメンだわと思った時、ガサガサと彼らから少し離れた場所で葉の擦れる音と共に大柄な人が現れた。
「おい、リース先行くな。あ?アンタ誰だ?」
今度はゴツいイケメンが登場し、ギロリと睨み付けられた。
…なんか嫌な予感がする。
面倒な事になるかも。
そしてこの時の予感は後に的中する事になる。