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34.厄日

ザバンーザザー


「本当にここから?」

「はい」


合流したナウル君とラジは、私の質問に何か問題が?みたいな顔をして頷いた。

また私は下を覗きこんだ。


だってね、がけなのよ。


柵もなく、先端まで行けばからからと岩の欠片がはるか下の海へ消えていく。

まさにサスペンス劇場に登場しそうな場所である。


…ちょっと寂れた感じの船着き場を想像していた私は、やはり甘い人間なのだろうか。


「いつまでも此処にいてもしょうがないので」

「え?」

「失礼します」

「ちょっと!まっ」

「待たない」


そんな事を考えていたら、いきなり背後から肩に手がまわされ次の瞬間、荷物のように肩に担がれた。


抗議しようとしたら。


「怖いなら目を閉じて」

「ラジ!普通のOLにはキツイって!」


軽く弾みをつけたラジは、私を担いだまま崖から飛び降りた。ラジの口調が、若干変化している事に気づきもしない私は、ただ叫ぶだけだった。いや怖すぎて飛び降りてから着地するまで声がでなかった。


トン。


高い場所から飛び降りたから着地にはかなりの衝撃がくるかと思っていたら違った。


ヴーンー


その代わりに何故か懐かしい機械音が。


「このままの状態で向かいますか? 俺は一向に構いませんが」


音に気をとられ、担がれていた状態から姫抱っこになっていることに気づかなかった私は、その声で見上げ後悔した。見下ろされていた瞳とバッチリ目があったからだ。


甘い。

甘すぎるんだけど視線が。

明らかに今までと違う。

そして私は、この甘ったるい視線が何かを知っている。


「…何故急に?」

「俺は、どうやら貴方が欲しいみたいです」


思わず出た言葉にラジは、衝撃的な台詞を吐いた。そして今朝、自覚したと言い。


笑った。


何…この威力。

普段無表情な人がただ笑っただけで、こんな凄いの?


違う!

さらりとラジ何て言った?


「ラジウス様!準備出来ました!」

「先に出てくれ。こっちもすぐ出す」


ラジは、ナウル君に呼ばれストンと私をおろし、彼に声をかけた。


ナウル君!ナイスタイミングだよ君!

とりあえずラジの腕から逃れたと思いきや。

足元が揺れたと同時に腰に腕が巻き付いてきた。


「俺の言葉が聞こえなかったとは言わせない。外面は昨日で終わりだ」


よろけた私を支えてくれたんだろうけど。それに加えて、話し方変わりすぎ。


…オバサン赤面だわ。


「グルルッ」


服の上着のあわせの胸元にいたノアが、顔を急にだしたかと思えば、ラジに向けて威嚇した。


「気分は悪くないか?」

「全然」


だいたい、時計がないからわからないけど、1時間半くらい経過したかな。

周囲は何もなく遠く海水浴をした時と同じような海の景色が広がっている。

ただ移動手段の船が意外な形だった。


この今乗っているダーヴという乗り物は、葉っぱの形で、大きさは、二人乗りでかなり小さい。ボードの板二枚分くらいかな。先端から少し後退した場所にT字の鉄製に似た銀色のものがあり、それがハンドルだ。

そして、操作しながら体が安定するようにか腰辺りの位置にクッションがきいた湾曲の背もたれ。


そう、立ちっぱなしなのよ。

でも不思議と揺れが電車よりないくらいで、寄りかかっている背もたれの造りがいいのか疲れない。


このダーヴ、乗っていると下が見えないけれど、海面スレスレに浮いていて、周りは球体のような形で薄く膜がはられ、波やある程度の衝撃を受けても、その膜がバリアとなり大丈夫らしい。そして音は残念ながら機械音ではなく、魔力を使い変化させ、ようはエンジン部分の音。まあ、わかっていたとはいえ少しガッカリ。


同じような景色が続き、隣で操作しているラジとの距離が近すぎたりで、色々限界になってきた頃。


「もうすぐ着く」


ラジがそう言い指をさしたので、前方に目を凝らした。


高い山々。

でも水の国と全く景色は異なってて、距離もまだあるせいか茶色一色しか見えず、山も尖った形をしている。


とりあえず地面に足をつけれると思った時。

左前方から、何かが飛び出した。


グワー!!

まるで亀を物凄く大きくして、そうまさに恐竜だ。

その恐竜のような生物は首を伸ばして此方に向かって吠えた。

あまりのダイナミックさに驚き固まる私。

だけどノアは違った。

私の胸元を踏み台にして亀もどきに飛びかかったのだ。


で、私は?

はい、ノアが急に華麗な跳躍をしたせいで海に落ちた。


私、泳ぎが壊滅的なんだけど。


ああ、昨晩といい今日は厄日だ。


まるでスローモーションのように落ちていく感覚の中、そう思った。

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