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29.リューのつぶやき

「あったあった」


目をつぶったまま、ハンドルを探し閉めた。


「昨日は飲みすぎたな」


宿舎の共同の水場で頭と顔を洗い顔を上げた。

正面の鏡に映るのは、充血した目にくたびれた顔。水滴が目に入りそうになり前髪をかきあげた時に手が止まる。


額の印を手でなぞれば、微かにくぼみがある。

色は紺のまま。


──これが漆黒になり印が完全に消えたら相手の死、契った相手ミュリが死んだという事だ。


「ミュリ…そんなに俺が嫌だったか?」


ミュリは、地の若い男に自分の意思でついて行ったのだ。


ただ、世間知らずな妻は知らなかった。


その男は、ミュリの持つ知識と珍しい力を国に売るのが目的だったという事を。


ピシッ


拳をあてた鏡はひび割れ顔も映らなくなった。

ふと昨日の光の神器の言葉を思いだした。


『そういえば、足に違和感はないですか?完全に造りなおしたので。ユラが自分の世界から唯一持ち出せた指輪は、かなり強い力を秘めていたので大丈夫だとは思いますが』


「足はなんともないがー指輪だと?」


『はい。恋人だった人間から貰ったようですが、風が体内に取り込み吸収しました』


嬢ちゃんは、そんな事一言も言わなかった。

頭を無意識にバリバリ掻いていたようで水滴が肩に落ちていく。


ため息をつきながら側にひっかけておいたタオルを頭に被せる。


「なんだかなー。嬢ちゃん…俺はそんな価値ないんだよ」


サイテーな奴なんだ俺は。

深いため息が出た。


「今日の隊長のシゴキは、キツかったな~」

「でも、まだ短時間でよかったー」

「俺もう腹がへった」


若い騎士達が早朝の訓練を終え汗を流しにきたようだ。


とりあえず食堂が混まないうちに食いに行くか。


今日は、1日嬢ちゃんのお供だ。

意外と行動力があるので今日はどこへ連れていかれるやら。まあ、嬢ちゃんといるのは嫌ではない。俺は、頭にタオルをひっかけたままその場を後にした。


「あっ鏡割ったの誰だよ!」


後ろで声がしたが、そのまま足をとめず、すまねぇなと俺は小さく呟きその場を後にした。



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