表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/132

22.どうして!?

「オマエ誰だよ!」

「ただの人だよ」

「嘘だ! アンタが父さんを!!」


オマエからアンタ呼ばわりされたなーとぼんやり思った。その少年は、縁から滑り降りこちらに飛びかかってきた。手には小さなナイフが。


私は避けなかった。


「つっ」


一瞬おいて痛みがきた。


痛い!


でも、リューナットさんは、もっと痛いよね。


「っ! 俺っ!」


腕に刺さったナイフを見て少年は、ナイフから手を離した。その手は震え、瞳は刺さったナイフを見て見開いていた。


よかった。


私はそう思った。

だってこの子の反応は、まだ救いがあると思ったから。


「かなり痛いけど大丈夫。怒るのは無理ないけど、相手を傷つけても何にもならないよ」


きっと虚しいだけなんだよ。私は少年にそう言い微笑んだ。ついでに刺されていない左腕で少年を軽く抱きしめてみれば固まったままの少年。


「ユラ様!」


急に呼ばれて上を見上げれば。

空から誰も乗せてないノアとヴァルがきた。

ヴァルの背には、ラジウスさんとぐったりしているリューナットさんが。


「ラジウスさんは出てきちゃ不味いってリューナットさんが言ってましたけど」

「どうせすぐばれる。それよりその腕は!」


腕を見たとたん彼の気配が一気に変化した。


「──お前か?」

「いいの」


苛立っているラジウスさんは、少年へ低く唸るように問いながら剣を鞘から抜こうとしたので慌ててそれを止めた。


「私から刺されたの」

「何故?!」


理解ができないと彼の瞳は言っていた。


「氷漬けにした張本人だから」


少年が怒るのは当たり前だ。

それより私は、ヴァルの背にいるリューナットさんが気になってしかたがない。彼は、ずっとうつ伏せのまま目を閉じ動かない。


早くしないと。


「ノア、下に連れていってもらえる?」


腕も痛いし、吐き気もしてきたのでノアに乗せてもらい陥没した地面に降り、火の国の王様に近づき火の神器に話しかけた。


私と来れば面白いこと沢山ありますよ。


光から火の神器は新しい事が好きで飽きっぽいと聞いたのだ。なら、もうこの台詞しかない。


正直面白いかは分からないけど、ある意味刺激的な日々を送れると思う。


しかし、そろそろ限界かも。貧血の症状も出てきたみたい。そう思っていたら。


ブァヮン!


凍った火の国の王様の腰にある金のベルトに埋め込まれていた真っ赤な石から火が勢いよく飛び出し、私に向かってきた。


「熱っ!」


鼻先で火の塊は急停止し、今度は溶岩のようにドロリと溶けていく。


『嘘だったらすぐ離れるからな!』


少年の声が頭に響くと共に手首に熱い感覚。

左手首には赤い腕輪。

色は紺色が混じったような赤。


『変わりませんね』


光がため息をつき呟いた声がした。


「オマエ父さんに何をした!」


叫ぶ赤い髪の少年。

今なんて言った?


「君のお父さんって」

「火の国の王だ! 俺は次期王になる!神器を返せ!!」


少年は、将来かなりのイケメンになると思ったけれど、王子か。


「悪いけど無理」

「なんっ?!」


私は、少年を見た。


「貴方達がしっかりしないから神器が穢れ、この世界の神様達も見放そうとしてるんでしょ?それに人のこと言えないけれど、怒りに任せて人を傷つける王様を皆が慕うかしら?」


私は周りを見た。

今は動かない数えきれないほどの人達。


「ここにいる人達には、それぞれ家族がいる。戦う人の背後も考えないといけない」


王子に言った言葉は、まさしく自分にも当てはまる。


ゲームの駒じゃない。

皆、生きている。


「光、悪いけど王子も動けないようにしてもらえる?」

『はい』

「なにをっ?! フゴッ!」


王子はスマキになってもらう。

ごめんね。今騒がれても困るんだ。何より私が限界きてる。耳が、音が遠く感じる。


「こっちにリューナットさんを運んでもらえますか?」


私は上にいるラジウスさんにお願いした。ヴァルとラジウスさんが降りてきてラジウスさんが地面にリューナットさんをそっと寝かせた。


「影響ないと思いますが、上にいてください」

「だが」

「王子と風の王様お願いします」


先に話し口をはさませない。


「リューは…」

「助けます」


琥珀色の瞳がゆれている。

私と彼は一瞬視線が絡む。

私のせいなのに彼の瞳には私に対しての怒りはまったく見られない。ただ、彼の、リューナットさんへの想いだけ。


大事な友達をこんなにしてごめんね。


「出血が酷く、もう、あまり持たない」

「絶対助ける」

「…頼む」


言い切った私の言葉で彼は上に上がった。



「さて、やるか。悪いけど、光と水もお願い」

『はい』

『うん』


私は立っているのが辛いのもあり、膝だちになり両手を前に出した。


息を吸い、ゆっくり吐く。両手を呼吸に合わせ徐々に上に上げ体から放出するイメージをえがく。


自分では気づいていなかったけれど、ラジウスさんいわく、私の身体から大量の魔力が白い光と共に放射線状に広がっていき、それらは兵士の身体に吸い込まれていったらしい。


『それくらいで』


光の声で今度は、徐々に抑えるイメージをする。兵士達は、倒れて気を失っているけれど、もう凍ってはいなかった。


自分の右腕を見た。


刺さっていたナイフは地面に落ち、腕の傷は無くなっていた。


よかった!

成功したみたい。

リューナットさんは?!

横たわっている彼に急いで近づく。


「…どうして?!」


彼の右足は、消えたままだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ