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20.油断のせいで!

両手を上に伸ばし広げた手をみればブルブル震えている。


情けない私。

周りを見れば戦は始まったらしく地響きがする。


上から見た時、火の国フィルラは矢印のような形を。風の国ヴァーリアは、横列だけど、ただ横に並んでいるわけではなく、ある程度のグループが集まり各グループとの間隔が広くとられているようだった。


陣形は名前とかあるんだろうけれど、興味なんてなかった私はまったく分からない。

そもそも魔法も戦もさっぱりだ。


2つの国の兵士達は、お互い距離を縮めていく。火の国フィルラは、トカゲに似た動物に乗っている兵士もいる。


ふと風の国の兵士を見た。

高さはそこまで高くないが宙を浮いている兵士達がいるのを見て、予定を変えた。お互いの兵がなるべく近づくまで待つ。


ヴォー


なんとも言えない叫びと地響き。

両サイドから迫り来る兵達に本能的な恐怖がでてしまう。


怖い…でも、まだ早い。

耐えろ。


──今だ。

私は上に上げた両手に気を集中させる。

全てをすいとるように深く深く息を吸う。


「光」

『はい』


光にお願いしフラッシュのようなとても眩しい光を発生させた。

目を開けていられない兵士達。


「水、お願い」

『わかった』


今度は、膝を地面につき空に向けていた両手を地面につけた。


息を吐く。

細く長く。


バキバキバキッ。

パキンー。



兵士達の叫び声と地鳴りのような音がした後は。


辺りは無音になった。


「──できた?」

「ノア」

「キュ!」


大きくなったノアの背に乗る。

低空飛行し、空から見下ろした地上は。


5メートルは陥没した地面の底には凍った物言わない兵達。思っていた以上に広範囲を陥没、氷漬けにできた。


兵士達は、苦しむ間もなく一瞬で凍っただろう。音がなくなった平原の中。


「いったい何が?!」


…生きている人がいる?

ノアに乗り声がした場所へ向かえば。

豪華な服装をした男がひどく驚いた表情をし、たたずんでいた。しかもまだその男の周りには数名の兵がいて、その豪華な服装の人に陛下と叫んでいたから間違いないだろう。


「やっぱ、そういうオチあるわよね」


出来る限り広範囲にしたけど、全員は無理だったか。


「剣になれ」


私は、すぐノアから降りながら光に剣になってもらい、恐らく一番後方にいたお陰で陥没、氷漬けに巻き込まれなかった風の国の王であろう人物だけに狙いを定め剣を振り上げた。


いける!


「つぁ!」


いきなり横から体全体に強い衝撃がきて飛ばされ地面に尻餅をついた。まるで突然、人に思いっきり突飛ばされた感覚だった。


いえ、もっと酷いかも。

衝撃で吐き気がする。


そうか。

魔法だ。


私は体を直ぐに起こしたけれど、その時には既に逆に剣を私に突き立てようとしている風の王が目の前にいた。


やっぱり無謀だったか。

でも!

この前の闇からの攻撃の時みたく諦めない。

体勢は最悪だけど片膝をついたまま剣を構えた。


ギィン!


王の剣を受けたのは私じゃなく。

私の僅か数センチ前に大きな背中が。


──なんてカッコイイ登場しちゃってんのよ。


「嬢ちゃん」


リューナットさんだった。

私は、背中に話しかけた。


「どうして」

「アレ破るの苦労したぜ! 力を使い過ぎたのと、まだあいつの出番は早いから強制的に留守番させている」


この場にいないラジウスさんの事を教えてくれた。


「何を呑気に話している!」


風の国の王が攻撃を受け止めているリューナットさんに怒鳴った。リューナットさんは、剣を力で押し返し少しだけ風の王との距離ができた。


その時、私は他の兵士達を甘くみていた。

兵士の1人はかなりの魔力もちだったようだ。

頭のどこかで兵士は主に剣など接近戦だと思いこんでいた。


水の国ミュランで訓練をさんざん見ていたくせに。


「つ!」

「ガァッ」


鋭い風がいきなりきたと思ったら。

それは、私ではなく、リューナットさんの右足に直撃し下を見れば。


彼の右足は、膝から下が消えていた。


「リューナットさん!」


グラリと彼は傾いたが倒れる寸前に水でできたブーメランのような物を王と兵に放ち、それは狙い通りに飛んだが王には致命的とまではいかなかった。でも、かなり効いたようで脇腹を押さえながら此方に背を向け逃げる体勢をとった。


「大分力は削いだ」


倒れこんだリューナットさんに触れようとしたら彼は鋭い視線を私に向けた。

足からは、大量の血。

痛みなんて想像もつかないほどだろう。


…私のせいだ。

なのに彼は。


「行け」


まだ固まっている私に。


「まだ始まったばかりなのに、もたついてんじゃねーよ」


だって…。


「帰るんだろ?」

「っー! ノアっ!」


私は、その言葉でリューナットさんに背を向け、ノアに飛び乗り風の王を追いかけた。



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