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18.束の間の

ギィーン!

ガッ!


「嬢ちゃん楽しいか?」

「勉強になります」

「そうかね」


今日も朝から私は騎士さん達の訓練を見学していた。ラジウスさん達と話をした夜から数日が経っていた。その間に何をしていたかって?

色々ですよ。覚えたい、考えなければいけない事は沢山ある。


でも、退化してきている脳ミソはパンクしそうになりヒントを求め、という名目のもと息抜きに外へ出ているのだ。


「あっ」


騎士さん達は、剣だけでなく今度は魔法も使い始めた。


剣に何か力をまとわせたり、片手で剣、もう片方の手は何かを込める仕草をした直後、氷でできた鋭く太い杭のような物を何本も発生させ、それらは相手めがけて飛んでいく。


不謹慎だけど思ってしまう。

カッコいいじゃない!と。


もちろん訓練だとはいえ戦に備えてなのだろうから皆真剣だ。



一つ気づいた事が。

後ろにいるリューナットさんに質問する。


「魔法は、動作が必要なんですか?」

「なんつーか、力を溜めて出すからどうしてもそうなるな」

「あと、呪文みたいなのも必要なんですか?」

「必要か必要じゃないかと言われれば必要だな。ただ、多分お嬢ちゃんが思ってるのとは違う」


リューナットさんが右手をグーにしてパッと開いた。


「可愛い」


その手のひらから現れたのは、半透明の鳥だ。


あれ?

でも、今。


「そう、俺は何も言わなかった」


鳥は私達の頭上を優雅に飛ぶ。


「口には出さないが念じてはいた。基本の唱えはあるが、それぞれが変化させ自分のモノにし口には出さず唱える。そもそも戦いで長々唱えてたら、その間に殺られちまうだろ?」


「短く簡潔にが理想だから、呪文というより単語だな。まあコイツらは、個人の魔力が強いから剣と共に訓練しているが、魔法使いは専門部隊が別にある」


なるほど。


近づいてきた水色の鳥に触れたら、水になり突然消えた。


「…水?」


「まあ、水の力を借りてるんだな。俺は説明とか向いてねーんだよ」


ため息をつき草むらにドカリと座ったリューナットさんは、汚れんの気になんないなら嬢ちゃんも座んなと言ったので、私は隣に体育座りをした。


上を見上げれば、今日もよく晴れた青空が広がっている。これが温泉旅行とかだったら、あ~空気もいいし、癒されるで済むんだけどな。ついに仰向けに寝転びはじめたリューナットさんと話を続けた。


「嬢ちゃんとこは、魔法ないんだったな」

「本など架空ではありますけど、私はまったく興味なかったので分からないです」


知識はいくらあっても邪魔にならないと言っていた同僚を思い出す。


あなたは正しかった。


リューナットさんは、下手だと言いながらも教えてくれる。


「ざっとになるが魔力は皆もっていて、それは個人差が激しく得意な分野もそれぞれだ。だが、魔法は自然界の力を利用するからそれが乱れていれば俺達の力も上手くだせなくなる」


リューナットさんは、手振りで周りを示しながらさらに説明を進める。


「ちなみに、この国は水の国だから水系統を使いやすい。いる国によっても力の発揮に差がでてくるが嬢ちゃんのおかげで今は、前より力も出しやすい」


私?


「数日前に派手にやったろ?」


ああ、腕輪のやつか。


「腕輪の濁りをきれいにしたからですかね」

「俺は神器の事はよくわからねぇ」


だが、とリューナットさんは空を眺めながら話す。


「嬢ちゃんは分からないようだが、前より空気や水がきれいになってんだよ。あの後、気温の急激な変化もない」


「はあ」


ピンとこないが、相づちはうっておく。


「それって俺らからすれば劇的な変化なんだが、本人がこれじゃあな」


なんか、リューナットさんは呆れたような口調だ。


突然、彼は来ると呟き立ち上がった。しばらくすると見慣れた顔、ラジウスさんが此方に歩いてきた。


…リューナットさんは、何かセンサーを持っているのかしら。


「ユラ様」


ラジウスさんは、いつもあまり変化のない表情だけど、最近少しわかってきた。


今のラジウスさんは、少しピリピリしている。

彼はすごく小さい声で話した。


「2日後、始まります」

「──わかりました」


どうやら束の間の、のんびりとした時間は終わったようだ。私は立ち上がり、草をはらいながらラジウスさんにお願いする。


「詳しく教えて貰えますか?」


私はその二日後に始まる戦へ乗り込むために頭を再びフル稼働させた。


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