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100/132

100.ヒントの答えは

「何処か支障はないか?」

「ない。ありがと」


景色が歪んだと思えば、次には冴えない天井を見ていた。そして医師を呼んだ方が早いと判断したらしくラジのベッドに寝かされていた。


同じ素材なんだろうけど匂いが違う。

あの人と全く違う。


時折、予期せずやってくる波は暗く重い。最近いやに思い出すな。


「何か言ってた?」


ないと分かっていても、迷惑をかけたのには変わりないから、心に澱む何かを振り切るように尋ねた。


「寝不足、精神的な疲れ。よく休むようにと言っていた」

「ラジャー」


ふざけた答え方には不満なようでラジの眉間に川ができるが、気になるのはそこではなく上にいる生物だ。


「脱力感すごくない?」


短い手足をだらりと伸ばしたままラジの頭にデロンとくっついている憎たらしい子ワニ。


「ユラが気を失い、これも動かなくなった」


なんか心配そうな言い方じゃないの。


「ノア、その子、力の使いすぎとかで伸びてんのよね?」


私との頭突きでは決してないと言いたいのよ。


「キュキュ!」


そうだと解釈し、私は石頭ではないと証明できた。


「それより本題は」


夢の中のような不思議な場所での会話をノアを撫でながら伸びた子ワニを眺めつつ改めて考える。


『神は貴方を還せなくはない。だけど犠牲は出る』


その前は何を言われた?


「芹沢 夏海と芹沢 麻里を消せるのか」


「ユラ? どうした?」


鼓動が速くなる。


「違う。もっと前だわ」


思い出せ。

何かが引っかかる。


「キュ?」


ノアが私を見上げた。

灰色の瞳。



『無理に召喚の術を使うと空間が歪み物を希に引き寄せまた引き込む』



──まさか。


「ユラ、急に起き上がると」


無意識にラジの手を払ったようだと触れた皮膚が感じたけど、そんなのどうでもいい。


「そうなの。そういう事」


信じたくない。

けれど嘘ではないと冷静な言葉が頭の隅から聞こえる。


「キュー」

「ユラ」


ノアとラジの声が遠い。


私が帰る為には、あの時、家にいたであろう母と妹が引き込まれるという事だと。


「アハハッ」


私は、壊れたように笑い続けた。



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