10.ラジウスside
「その髪どうしたんですか?!」
「乾かすの大変だし、サッパリしました」
俺の驚きの声にキョトンとして、何も問題ないですと言うユラ。笛の音で呼ばれて来てみれば、彼女の長く美しい黒髪は耳辺り迄になっていた。
それだけじゃない。
彼女のまとう気が変わった?
俺は改めて彼女を観察する。
見た目は髪以外何も変わっていない。
──いや目だ。
不安でゆらゆらと揺れていた今までの瞳と違う。強く意志を漂わせているが陰もある。
神は、この短時間で彼女に何をした?
思わず聞いた。
「何がありました?」
「特に何もないですよ」
短くなった髪が風にあおられ、それをうっとしそうに首をふり払いながら彼女は答えた。
嘘だ。
そう口から出そうになった時
「何もってわけはないか」
彼女はそう呟き此方に近づきながら口を開いた。
「友達が前に小さな事は変えられるけど、大きな事は変えられないと思うと言っていたの」
見上げた彼女と目が合う。
「でも、私は大きな事を変えようと思います」
そう言うとニッコリ笑った。
「なので、シルビアさんに会う、この国の王様に会う、あとは何回か騎士で呼び方あってます?騎士さん達の剣と魔法の訓練を見学、ああ地形等も知りたい」
手配してもらえますか?
次々希望を伝えてくる彼女は別人のようだった。貴方は何者なんだ?
"何かを期待したくなる存在"
リューの言葉が頭に浮かんだ。