澄風の瞳に映るもの
「…愛嘉理、紡。私もそろそろみたい。迎えに来てくれる…?」
「貴方は…?」
「触、やっと会えた…!」
「貴方は…!あの時夢で会った…!」
「思い出してくれた…?」
「添…!」
「そうだよ…。」
「そう言えば長い間忘れてたけど、私が小さい頃に描いた座敷童子によく似てるね。雪光村は寒いからって、描き足した襟巻きまでそっくり。」
「覚えててくれたんだ…?」
「え…?」
「俺はその座敷童子だよ…。生まれたその瞬間から、ずっと触を見守ってたんだ…。」
「…!そっか…。私一人じゃなかったんだね、ずっと…。添がいてくれたから…。」
「…。」
「ありがとう、添。」
「…!」
「行こうか…。」
「うん。」
「澄風。」
「お前さんは…!?」
「待たせたね。」
「そうか、お前さんか。待っておったぞ。相変わらずだな、繋。」
「君は随分変わったね。」
「うむ、しかしこの美しい姿はどこからどう見ても私であろう。」
「ふふ、中身は全然変わってないね。」
「当然だ。」
「最近は様々な分野で活躍してるみたいじゃないか。」
「うむ、明日も生放送が控えていてな。私のこの美しい姿が、電波に乗り衆目に晒されるのだ。今日はこの後帰ったら、明日の準備を念入りにせねばなるまい。」
「そっか、頑張ってるんだね。」
「頑張っているのではない、楽しんでいるのだ。」
「それは失礼、確かにそのようだね。」
「うむ。」
「…こうしてまた生きることを選んだんだね。吾生くん達と同じように。」
「うむ。前世で私の美しさを理解できなかった愚かな人間達の目に、私という至高の存在を刻み付け知らしめる為にな。」
「人間は虹に感動する者が多いし、そんなことはないと思うけどね。」
「しかし愛嘉理と言い涙と言い、圧倒されるばかりで全く私の美しさを理解できなかったではないか。まあ、私がすご過ぎるのだろうけどな。」
「前向きだね。」
「うむ、人間として生きるのも中々悪くない。」
「そのようだね。君は、これからも見守っていくんだね。」
「無論だ。ところで、護狗神社や美風川の方にはもう行ったのか?」
「うん。」
「ならばもう説明の必要はないと思うが、良いところであろう?」
「そうだね。」
「特に美風川は素晴らしい。さすがは私の弟分だけあって、空気も水もとても美味い。まあそれでも、前世の私にはまだまだ遠く及ばぬがな。はっはっは!」
「僕が去ってからの五百年で、色々なことがあったんだね。澄風河は涸れ、美風川が生まれ、吟くんは土地神としての存在を選んだ。」
「うむ、皆それぞれに生きている。」
「…。」
「何、そんな顔をするな。お前さんなら分かっているであろう?形あるものはいつも変わり、そしていつか消える。私は今こうして人間に生まれ変わり、謳歌しているのだ。何も嘆くことなどない。」
「…そうだね。」
「うむ、また旅立つのか?」
「うん。」
「そうか、達者でな。」
「ありがとう。澄風も元気で。」
「うむ、ではな。会えて嬉しかったぞ。」
「僕も、君に会えて良かった。さようなら、澄風。」




