彼らのその後 四
「ねえ、大蛇さん。」
「何だい?」
「何故、愛嘉理に会いに行っちゃいけないの?」
「お前、そんなことも分からんのか?」
「では、君は何故だと思う?」
「え?それは、あの、えーと…。あれだからに決まってるだろ。」
「あれ、とは?」
「だから、えーと…。そう、取り込み中だからだよ。今そいつは取り込み中なんだ。」
「学はどう思う?」
「うーん、愛嘉理が人間だからかな。」
「だったら、何で前のそいつや今の狗神様はこの山に出入りしてるんだよ。人間でも例外はあるんだろ?」
「そうだね。それが彼女の意思だったからとしか言えないけど。」
「じゃあ、今の愛嘉理は僕達に会うことを望んでないの?」
「そういう訳じゃないよ。ただ、今はまだ思い出せないだけなんだ。」
「思い出せない?」
「そう、ここで得た記憶をね。」
「それなら、教えてあげたら良いんじゃないのかな?」
「それはならないよ。」
「何故?」
「もしかしたら彼女は、今のままが良いと思ってるかもしれない。それを決めるのは、彼女自身だ。」
「もしかして、狗神様が愛嘉理に記憶を語らないのもそれが理由?」
「そうだね、私はそう思うよ。」
「けっ、くだらん。お前、そんなにその人間に会いたいのか?」
「す、少しは…。」
「元々おいら達と人間は交わらない存在なんだ。本来の在るべき関係に戻っただけだろ?」
「それは、そうだけど…。」
「だったらぐずぐずすんなよ。それとも、またおいらに泣かされたいのか?」
「ぼ、僕はもう泣かないよ。」
「じゃあ、試してみるか?」
「望むところだ!」
「こらこら、二人共…。」
「ほっほ、相変わらず大変そうじゃな。」
「貴方は…。」
「毎日、風の気紛れに漂っておる。今日はここという訳じゃな。」
「そうでしたか。」
「この身体じゃと、木に引っ掛かって動けなくなることも少なくなくての。その度に彼に助けて貰っておる。」
「学に?」
「うむ、立派に育ったものじゃの。」
「これさえなければ、ですが…。」
「本当に止めたいなら、あの二人の間に塗壁を置いてみてはどうじゃ?」
「ご冗談を。彼がやられてしまいますよ。」
「ほっほ。何だかんだ言いつつ、これも必要なことと思っているのじゃろ?」
「…そうですね。彼がいなければ学は強くなりたいと思わなかったでしょうし、彼もまた学がいることで傲りを改め相手を認めることを知った。良い関係だと思います。」
「そうか。」
「…しかし、いつまでも好き勝手やらせておく訳にはいきませんね。そろそろ止めに入るとしましょう。」
「うむ、それが良いじゃろう。」
「あ!大蛇さん、危ない!」
「何?」
「二人共、そろそろ気が済んだかな…?」
「う、動けん…!」
「大蛇さん…?」
「化かし合いはもう終わり。良いね?」
「…ふん。」
「返事は?」
「は、はい…。」




