彼らのその後 一
「あんたも飽きないねぇ。」
「何がだ?」
「何がって、見りゃ分かるだろ?それのことだよ。」
「ああ、これか。やはり中々奥が深くてな。一度やり始めると次はもっとこうしたいと、止まらなくなってしまうんだ。人間の伝統工芸って奴は。」
「はあ、毎回付き合わされる私の身にもなっておくれよ。」
「む?退屈ならば、無理する必要はないぞ?」
「な、あんたそんなこと言って良いのかい?私がいなきゃ、誰がそんながらくたを引き取ると思ってるんだい?」
「気を悪くしたなら謝る。私なりの気遣いのつもりだったんだが…。」
「ふん、別に怒ってなんかないさ。しかしいつまでもこんな辛気臭いところに籠ってるのも性に合わないね。あんた、今日は私に付き合いな。」
「付き合うって、どこか行きたい場所でもあるのか?」
「良いから黙って付いてきな。モタモタしてたら置いてくよ!」
「やれやれ…。」
「はあ、やっぱり山の頂上は風が冷たくて最高だね。」
「どこに連れて行かれるのかと思えば、ここだったのだな。」
「たまには良いだろ?ほら、ここからなら村を一望出来る。」
「…そうだな。」
「あんたはもう会ったのかい?」
「いや。」
「そうかい。」
「お主は会ったのか?」
「いや。自分から会いに行くつもりもないけどね。」
「そうだな。彼らがまたここにいる。私達にはそれで充分だ。」
「…ふん。しかし、あんたは良いね。」
「何がだ?」
「その立派な翼で、どこへでもひとっ飛びだろ?さぞ眺めも良いんだろうね。」
「それなら、見てみるか?」
「な、何するんだい!下ろしな!」
「しっかり捕まってろ。」
「ひゃあっ!」
「どうだ?」
「どうって…。」
「今日は天気も良いし、中々の眺めかもしれぬな。」
「へえ、やっぱりあんたはいつもこんなに良い思いをしてたんだね。隣町もその向こうも、よく見える。」
「実は私もこんなに高く飛ぶのは久々なんだ。良かったら、また見に来るか?」
「も、もう良いよ。あんたが私を落としたらどうするんだい。」
「そんなへまはしない。それに、落ちたところで私達はたかが知れてると思うが…?」
「…。」
「もしやこの景色は、思いの外気に入らなかったか?」
「そ、そういう訳じゃ…ないけど…。」
「…?」
「しかし澄風河が海と繋がってるって聞いてはいたけど、初めて見たよ。あれが海なんだね。」
「ああ、私も最初は驚いた。この世に果ての見えない、あんなに大きい水溜まりがあったとはな。」
「本当だね。私達の知らない景色がたくさんあるんだね。」
「そうだな。思い出も良いが、まだ見ぬ未来に心踊らせるのも悪くないかもしれぬな。」
「…そうだね。」




