再会 一(愛嘉理視点)
よく晴れた休日の朝、私は余りの寝心地の悪さに目覚めた。固い床を押してよろよろと立ち上がると、視界に洗面台の鏡が写す自分の姿が飛び込んだ。
昨日まで確かに存在していた違和感は、もうない。そこには紛れもなく他の誰でもない、人見 愛嘉理がいる。
いつものように身なりを整え、当たり前のように外に出る。気付けば私は、導かれるように大きい鳥居の前に立っていた。ここは月見山の入り口のようだ。
躊躇うことなく、その奥に立ち入る。初めて来る場所のはずなのに、迷うこともなく足は動き続ける。
暫くすると、再び鳥居が見えた。その脇には古ぼけた石が立っており、“狗護神社”と掠れた文字が刻まれている。
間違いない、ここがあの場所だ。
確信を持って鳥居を潜ると、奥の社に何やら人影が見えた。巷では妖山と恐れられるこんな山奥に、そうそう人などいるはずはない。しかし私には、分かる。何故なら、私はその人物を求めここに辿り着いたのだから。
「愛嘉理…!?」
そこには、驚いた様子の吾生の姿があった。
「吾生…、吾生なんだね…?」
私が思わず足を止めると、目の前で綺麗な銀色の髪が揺れるのを感じた。
「えっ?」
「愛嘉理。全部、思い出したんだね?」
気付くと私は、きつく抱き締められていた。
「あ、吾生…!うん…、そうだよ…!」
私が何度も頷くと、吾生は大切なものを抱くように腕に力を込めた。
「ずっと、逢いたかった。愛嘉理。」
「吾生…、夢じゃない…?」
私の問うと吾生は私を腕から解放し、微笑み頷いた。吾生の顔に私は手を伸ばしそっと触れて、その存在を確かめる。
すると呆然と伸ばしたままだった手を軽く引かれ、再びその腕に優しく抱かれるのを感じた。そして、感動しているのか溜め息混じりに吾生は言う。
「やっと逢えた。ずっと、この日を待ってたんだよ。」
耳を擽るその懐かしい声に、私は胸がぎゅうっと締め付けられるような苦しくて心地好い不思議な感覚に侵された。そして、そっと瞳を閉じて吾生の身体に腕を回す。
「うん。…うん…!ありがとう…!!待たせちゃって、ごめんね。」




