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あおとあかのきせき 下書き  作者: 世渡 繋
最終章
59/69

運命のきせき 五

「人見さん、ちょっと良い?」

「…?」

「何か、最近調子乗ってない?」

「ちょっと狗神くんに構われてるからって、地味なくせに何かうざいんですけど。色目使ってんじゃねーよ。」

「これ以上、纏わり付かないでくれる?」

「…。」

「何とか言ったらどうなの?」

「…っ!」


「痛っ!」

「あ、狗神くん!」

「君名さん、不知火さん。どうしたの?」

「愛嘉理の居場所知らない?」

「知らないけど…。どうかしたの?」

「さっき大勢に囲まれてどこかに行くのを見たんだけど、何かただならぬ雰囲気だったからちょっと心配で…。」

「…まさか!」

「狗神くん!?」


「愛嘉理!」

「狗神くん…は、こんな私にも…目を見て話し掛けてくれる…。」

「ただの優しさに何その気になってんの?バカじゃない?」

「分かってるよ。でも…私は狗神くんと…もっと話したい!」

「はあ?」

「愛嘉理…!」

「調子に乗ってるって…言われても良い。私だって…皆と同じだよ。私は…狗神くんと…友達になりたい!」

「ふざけんな!あんたなんかと狗神くんが、釣り合う訳ねーだろーが!」

「…うぐっ!」

「うっ!」

「大丈夫?狗神くん。どうしたの?」

「体調悪いなら保健室に行った方が良いんじゃ…?」

「ありがとう、でも大丈夫。それより、愛嘉理が…。」

「そうだよ、私先生呼んでくる!」

「…待って。」

「これでも、さっきと同じこと言えんの?」

「…何度でも、言うよ…!私は…!」

「もうやめてよ!充分でしょ!?」

「い、狗神くん…?」

「こ、これは…その…。」

「…友達になりたかったのは、僕の方なんだ。」

「え?」

「愛嘉理はずっと君達の存在に怯えて、気にしてた。僕と必要以上に関わるのを避けてた…。」

「…。」

「ごめんね、愛嘉理。僕のせいで、こんなに…。」

「ご、ごめんなさい。狗神くん…。」

「謝るなら、僕じゃなくて愛嘉理に謝って。愛嘉理の意識が戻ったら、ちゃんと…。」

「うん、分かった…。」

「じゃあ、僕は愛嘉理を保健室に連れて行くから…。」

「…。」


「ごめんね、愛嘉理。僕が傷付けた…。」

「…狗神くん…?」

「愛嘉理、気付いた?」

「手、握り過ぎ。痛いよ…。」

「あ、ごめん。」

「ありがとうね、来てくれて。」

「ううん、ごめんね。守れなくて。」

「守ってくれたよ。これ、ご利益かなりあるかも。」

「…!愛嘉理の言う通りだった…!僕の認識が甘かったせいで…!」

「狗神くんのせいじゃないよ。」

「…。」

「あのね、私さっきあの子達に宣言したんだ。狗神くんと友達になりたいって。」

「うん、聞いてた。」

「え、聞いてたの?」

「うん、すごく嬉しかったよ。」

「ほ、本当?」

「本当だよ。だって、僕ばっかりそう思ってるのかと思ってたから。」

「え?」

「だから、僕も愛嘉理と友達になりたいんだってば。」

「うん、よろしくね!吾生くん…。」

「え、良いの?下の名前で呼ぶの、あんなに嫌がってたのに…。」

「だって、もう関係なくなっちゃったし。」

「そっか。でもどうせなら、吾生って呼び捨てにしてよ。」

「それは…。」

「僕も愛嘉理って呼んでるんだし。」

「うん、分かった。あ、吾生…?」

「ん?」

「ありがとうね。」

「それは僕の台詞だよ、ありがとう。」


「澄風、帰ってたんだ?」

「うむ、昨日な。」

「金めだるおめでとう。」

「うむ、私にかかれば当然の事だ。しかしお前さんのその横文字の発音の癖、生まれ変わってもまだ直らぬのか。」

「そういう澄風もでしょ?」

「まあな。三つ子の魂百まで、か。」

「ふふ、そうかもね。」

「そう言えばこの間、私には及ばぬが話題の人物にあったぞ。」

「それって、もしかして…。」

「そう、愛嘉理の家庭教師だ。」

「運命というのは、数奇なものだな。」

「じゃあ彼は今世でも、愛嘉理を思ってるんだね?」

「うむ、しかし全てを理解していた。」

「どういうこと?」

「愛嘉理には愛嘉理の運命の人がいる。好きでいられるだけで充分幸せだと言っていた。」

「…今の僕には理解出来ないな。」

「そうかもな。しかし涙がそう思うのは、きっと相手がお前さんだからだと私は思うぞ。…前世がそうであったようにな。」

「…。」

「お前さんは悔しいが敵わないと思わせるような相手だったのであろう。それでも愛嘉理を好きでいられて幸せと言うのだから、大したものだ。」

「…そうだよね。それなら尚更、僕は頑張らなきゃ。」

「そうだな。」

「でも頑張るって、何したら良いんだろう…?」

「私に聞くな。」

「…まあ、お前さんがお前さんであれば良いのではないか?愛嘉理を強く思う心、それさえ持ち続けていれば伝わる日もそう遠くはあるまい。」

「そんなものかなぁ…?」

「そんなものだろう。」

「時に聞くが、吾生。」

「何?」

「お前さん、今の愛嘉理についてはどう思っているのだ?」

「どういう意味?」

「いや、お前さんが前の愛嘉理を思っているのはよく知っている。しかし、今の記憶のない愛嘉理についてはどう思っているのかと思ってな。」

「本質的には何も変わってない。強くて優しくて真っ直ぐな愛嘉理のままだよ。」

「では仮に、このまま記憶が戻らずに愛嘉理がお前さんに振り向いたら受け入れるのか?」

「勿論だよ。」

「では、振り向かなかったら…?」

「振り向くまで、思いを伝えるだけだよ。」

「成る程な。それを聞いて私は安心したぞ。無粋なことを聞いてしまったかもしれぬな。」

「全然。僕も考えたから答えられることだよ。」

「そうか、では私は陰ながら見守るとしよう。二人の幸福を祈っているぞ。」

「ありがとう。」

「うむ。では、またな。」

「うん、またね。」


「前から聞いてみたかったんだけど…。」

「ん?」

「吾生って、その…。もしかして、見えたりする?」

「見えるって、霊とか妖とか?」

「うん。」

「愛嘉理もでしょ?」

「え、知ってたの?」

「知ってたっていうか、愛嘉理がそうであるように僕も分かるよ。」

「そっか。」

「…あ、危ない!」

「愛嘉理、下がってて。」

「吾生…?その姿…。」

「今の僕にはもう前程の力はないけど、君を守ることはできるはずだよ。」

「前…?」

「大丈夫、愛嘉理?怖くなかった?」

「ううん、吾生が守ってくれたから。ありがとう。」

「そっか、良かった。」

「吾生、すごいんだね。神様みたい。」

「…?」

「聞いたんだけど、吾生の家って護狗神社だったんだね。」

「うん。」

「何か、ピッタリって感じがするよ。」

「そっか。これからは、来てくれると嬉しいな。お祭りの時は騒がしいけど、普段は静かで良いところだよ。」

「うん、ありがとう。もしかして、いつもは吟くんもそこにいるの?」

「吟のことも知ってるんだね。」

「うん。澄風さんや、美風くんのことも。」

「そっか。愛嘉理の言う通り、吟はいつもは神社にいるよ。」

「そうなんだ。前から思ってたけど、吟くんは吾生にそっくりだよね。」

「…そうだね。初めて見た時は、僕も吃驚したよ。」

「やっぱり!何であんなに似てるんだろ?特にさっきの姿なんて瓜二つで、まるで兄弟みたいだったよ。吾生の家が護狗神社ってことと、何か関係があるのかな?」

「…。」

「吾生?」

「ん?」

「どうしたの?」

「ごめん、ちょっと考え事してた。」

「もしかして、テストの事とか?」

「え?ああ、うん。」

「もうすぐだもんね。でも吾生はいつも成績すごく良いよね。いつ見ても一位だし。」

「まあね。でも愛嘉理も中学に入ってから、成績良くなったんじゃない?」

「うん、良い家庭教師が付いてますから。」

「成る程。ねえ、それってさ。」

「ん?」

「金髪で身体が大きくて、少し怖そうだけどすごく格好良い人?」

「うん。」

「それで右目に涙黒子があって、僕と同じで八重歯が特徴的な人だったりする?」

「そうそう、よく知ってるね。」

「最近この辺で結構話題になってるよ。“凄腕のいけめん家庭教師”って、奥様や生徒の女の子から大人気だって。」

「そ、そうだったんだ。全然知らなかった…。」

「ん、僕何か変なこと言った?」

「う、ううん。」

「もしかして、横文字の発音…?」

「…うん。」

「昔からの癖なんだ。中々直らなくて…。」

「そうなんだ。吾生にも苦手なことってあるんだね。何か意外かも。」

「それくらいあるよ。幻滅した?」

「ううん、寧ろ何かちょっと親近感が湧いたよ。」

「…。」

「ところでさ。」

「ん?」

「愛嘉理はその家庭教師さんのこと、気になったりしないの?」

「勉強以外にもよく相談にも乗ってくれるし、良いお兄さんみたいな感じかな?」

「…ふーん。」

「何でそんなことを聞くの?」

「何となく。」

「…?そっか。」

「ねえ、愛嘉理。それならさ…。」

「ん?」

「今度の護狗神社のお祭り、一緒に行かない?」

「え?」

「どう?あ、でももしかして人混みとか苦手?」

「あ、うん…。」

「そっか…。」

「でも、少しだけでも行きたいなって思ってたんだ。だから、良かったら一緒に行こう?」

「本当?」

「うん。」

「やったぁ!楽しみだなぁ!」

「ふふ、何か子供みたい。」

「大人っぽい方が良い?」

「私はどんな吾生でも良いと思うよ。」

「…!」

「…どうしたの?」

「い、いや…。」

「そっか。じゃあ、また明日ね。」

「うん。」

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