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あおとあかのきせき 下書き  作者: 世渡 繋
第三章
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百鬼夜行 二

「…良かったのか?神が嘘なんか吐いて。」

「ふふ、良くはないね。僕には天罰が下るかも。」

「じゃあ、協力した俺も同罪だな。」

「僕と一緒にこれから地獄を見に行く?」

「望むところだ。」


「ふん、やっとお出ましかい。遅いよ。」

「話は全て聞かせてもらったぞ。私達も是非協力させてくれ。」

「その為に、もう皆集まっておりますぞ。」

「君達も来てくれたんだね。」

「狗神様、あっしらも協力するでやんすよ!」

「微々たるものかもしれぬが、日頃お世話になってる分、拙者達も力になりたいでござる。」

「ふん。どんなに少ないかと思って来てみれば、中々人望があるではないか。」

「私にはその人望の一端に、お前さんが加わっているように思えてならぬが…?」

「そりゃもう、話を聞いて一番に勇んでたのは築でやんすからな!」

「だ、黙れ、河童!」

「ありがとう、築。素と忍も。」

「師匠、僕も!僕もいますよ!」

「お前のような小僧が役に立つとは思えん。手柄を立てるのはこのおいらだ。」

「そんなことないよ!僕だって強くなったんだ!」

「相変わらず二人は元気だな。」

「君達も、よろしくね。」

「はい!」

「あと、仲良くね。」

「…はい。」

「皆、集まってくれてありがとう。」

「今夜これから起こることには、少なからず危険が伴うと思う。今からでも、恐ろしくなった者は遠慮なく申し出て欲しい。僕が安全な場所へ案内するよ。」

「僕は怖くないです!」

「学…。」

「強いですから!この山の皆は。」

「おおー!」

「皆…。ありがとう…!」

「皆には、僕の管狐を付ける。」

「ほう、中々愛嬌があるね。」

「これで君達は傷を負いにくくなり、相手の術にも掛かりにくくなる。つまり、僕の加護だよ。」

「おおー!」

「皆が持ち場に付いたら、結界を解く。その時が合図だよ。皆、くれぐれも気を付けてね。」

「狗神様こそ、ご無事で。」

「ありがとう。よし、それじゃあそろそろ行こう。」

「おおー!」


「君達には、山頂からこの村全体を頼んでも良いかい?」

「やっとあんたの団扇が役に立つんだね。」

「そうだな。」

「では、我らはここにて待機しよう。」

「うん、よろしくね。気を付けて。」

「狗神様も。」


「君達には愛嘉理を頼みたい。」

「あっしらにそんな大役を?」

「丁度水も豊富にあるから、力を発揮しやすいでしょ?」

「任せろ。愛嘉理は私の大事な友人だ。何としても、守ってやる。」

「心強いでござるな。」

「そうだ。おい、そこの塗壁と一反木綿。」

「何じゃ?」

「ああ。お前達は役立ちそうだから、我らと共にここを守れ。」

「と、言っているのじゃが…。」

「僕からも頼むよ。」

「あい分かった。」

「くれぐれも気を付けて。」

「お前こそ、簡単にやられるなよ。」

「築、またお主は何と無礼な口の聞き方を…ぬぐっ!」

「ここは拙者達にお任せあれ。」

「儂らも一肌脱ぎますぞ。」


「学、君の持ち場はこの鳥居だよ。神社に続く山の出入り口はここだけだ。大切な場所を、君に頼みたい。」

「師匠…!」

「そういうことなら、おいらもここに残らせて貰う。」

「そう言うと思った。じゃあ、よろしくね。二人共。」

「はい、師匠!」

「うむ、狗神様もおいらの強さを思い知ることとなろう。」

「それは心強いな。そうだ、君もここにいて貰っても良いかな?」

「勿論ですとも。」

「ありがとう、助かるよ。二人を頼むね。」

「任せてください。」

「皆、呉々も余り無茶はしないように。気を付けるんだよ。」

「ありがとうございます!師匠もお気を付けて!」

「おいらは心配ご無用だ。そこの小僧は分からんがな。」

「むー…!」

「ほら、二人共。仲良くと言われたろう?」

「は、はい…。」


「粗方持ち場に着いたな。では私は私の場所で、待ち受けるとしよう。」

「澄風、ありがとうね。」

「水くさいことを言うな。それより、私には気を付けろと言ってくれぬのか?」

「君がやられる時は、僕もやられてるんじゃないかな。」

「何を馬鹿なことを…。」

「気を付けて。」

「うむ、お前さんもな。」

「ありがとう。」


「さあ、行こうか。涙くん。」

「ああ。…ん?」

「やあ、添。」

「こんばんは、狗神様…。君は…?」

「鬼目 涙だ。」

「愛嘉理の友達だよ。で、彼はこの家の座敷童子。」

「愛嘉理の友達ってことは、もしかして触のことも…?」

「…ああ、ここ不知火の家だったんだな。」

「うん…。」

「いつも不知火がよく笑うのは、君のお陰なんだな。」

「よく笑う…?本当に…?」

「本当だよ。」

「最近は、前より家でも笑うようになったでしょ?」

「うん…。でも、今はそれより…。」

「さっきまで山があんなに騒がしかったのに、今は不気味な程静かだ…。それにそんな深刻な顔をしてここを通るなんて、一体何事…?」

「今日これから、この村に張ってる結界を解く。君も今日は家にいた方が良い。外にいるよりは幾らか安全だよ。」

「俺に何かできることはない…?」

「その気持ちだけで充分だよ。ありがとう、添。」

「俺に、もっと力があれば…。」

「そんなことないよ。君の役目は触の傍にいること。そうでしょ?」

「うん…。」

「それなら、そうしてあげて。はい、これ。」

「…?」

「管狐。お守りの代わりに。」

「ありがとう…。」

「じゃあ、僕達は行くから。」

「気を付けて…。」

「ありがとう。」


「ここは…。」

「うん、可視名思神社(かみなしじんじゃ)。」

「良いのか?確かにここに貴方のような存在の気配を感じたことはないが、一応別の神を祀ってるところだろう?」

「同じ土地に、守り神は二体以上宿らない。ここには神はいないよ。」

「そうなのか。」

「代わりに、僕が加護を授けてる。」

「何故、そんなことを…?」

「…。」

「…?」

「そろそろ結界を解くよ。」

「ああ。」


「やあ、待ってたよ。」

「僕も、この時を待ってた。どんな理由であれ、結界が解けるこの時を。」

「…そう。」

「それで?罠のつもりかい?僕を誘きだして、倒そうとでも?」

「いいや。僕はただ、話し合いたいだけだよ。」

「話し合う?」

「うん、愛嘉理を狙うのはもうやめて欲しいんだ。」

「何故?それで僕には何の得がある?」

「…確かに君に得になることはないね。だけど…。」

「何?」

「何故、君は愛嘉理を襲うの?本当にそれは、君の意思かい?餌にしたいだけなら、僕はその行いを許すことはできない。」

「流石、やはり噂に聞く土地神は違うね。君程になれば、何でもお見通しって訳だ。」

「でも、それなら分かるだろう?餌代も馬鹿にならないんだ。きちんと餌を与えなければ、僕の命がこいつらの餌になってしまう。何の恨みもないその愛嘉理?ちゃんには可哀想だけど、僕の命の為にも犠牲になって貰わなきゃ。」

「…。」

「そう怒った顔をしないでよ。何せ効率が良いんだ。最近になって幾らかへってきたとは言え、彼女はたくさんの恐れを生み出している。彼女を消すことで、その大量の恐れを全て頂ける。当分安泰だ。」

「…本当にその蟲達は、人間が負と呼ぶ感情しか食べられないの?」

「そうだよ。」

「本当に?」

「何が言いたい?生まれた時からこいつらと契約してる僕が言うんだから、間違いない。」

「…!」

「何をする気だ…?」

「へえ、もう一人いたんだ。まあ、バレバレだったけど。」

「見事罠に引っ掛かってくれてありがとう。こうすれば出てきてくれると思ったら、大正解だったね。」

「…。」

「逃げて!」

「僕を無視して逃げろなんて酷いな。ところで君、名前は?」

「だめだ!」

「…?」

「何だ、冷たいな。まあ君は半分人間みたいだし、もしかしたらただで教えてくれるかもと思って何となく聞いてみただけで、特に必要はないんだけどね。」

「やめろ!」

「もう遅い!」

「鬼目 涙。今から君は、僕のものだ。」

「手始めに、目の前の神様をやっつけちゃってよ。」

「分かった。」

「涙…!目を覚まして…!」

「まあ神様に勝つなんて無理だろうけど、削れるだけ削って貰おうっと。そうしたら、次は君の番だよ。」

「…!」

「わざわざ最初に君のところに来たのはね。どうせ邪魔されるの分かるからっていうのもあるけど、土地神の中でも特に強い君を手に入れられたら作業効率ももっと上がると思ってさ。」

「…くっ!」

「それに僕にとって蟲達に餌をやることはね、ただ自分の命を繋ぐ為だけの行動じゃないんだよ。」

「僕は、他人の不幸を見ることだけが唯一の幸せなんだ。だから今の君のその顔、実に愉快だよ。はっはっはっは!」

「…涙、ごめんね。僕がちゃんとしてなかったばかりに…。」

「お困りのようだね、吾生くん。」

「繋…?何で君がここに…?」

「詳しいことは後だ。彼は僕が引き受けよう。」

「何?どこへ消えた?」

「…まあ、良いや。彼は中々の駒だったし、もっと君が消耗してくれればより操りやすかったんだけど。」

「…。」


「くそ、キリがないな。狗神様の加護のお陰で、今は何とかやられずに済んではいるが…。」

「弱音を吐く暇があるなんて、まだ随分と余裕があるみたいじゃないか。」

「抱。」

「ほら、いくよ。」

「ああ。」

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