シンパシー 二
「涙くん?」
「…?」
「その金髪は、やっぱり涙くんだ。」
「愛嘉理。俺の判断材料、そこか?」
「ふふ。涙くんは身体が大きくて、綺麗な金髪だから目立つね。染めてるの?」
「いや、元からなんだ。これも先祖返りの影響でな。」
「そうなんだ。」
「随分不気味がられたよ。黒髪の両親から、何でこんなのが生まれるんだってな。」
「こんなに綺麗で似合ってるのにね。」
「ありがとう。でも言わなければ皆染めてると思ってくれるから、今はもう気にならないよ。まあ、この髪のせいで不良呼ばわりされることもあるけどな。」
「それは、涙くんの強そうな雰囲気もあると思うよ。」
「何だそれ?」
「うーん。初めて会った時程じゃないけど、いつもちょっとそんな感じ。あと、それとか?」
「ああ、これか?」
「似合ってると思うけど、先生に注意されたりしないの?」
「入試の日に、一度だけ。でも基本的に余り厳しくないんだろうな、この学校。」
「確かに…。」
「とは言え、これ鬼目家のしきたりらしくてさ。物心ついた時には、もうしてたよ。」
「そうなの?」
「魔除けだって。五歳の誕生日を迎えると、一族の長が耳飾りを授けるんだ。鬼の俺がするのも、変な話だけどな。」
「ふふ。」
「でも多分、そういう家だからなんだろうな。他の妖に狙われやすいから。」
「そっか。」
「鬼目を追い出された俺が未だに従う義理はないんだけど、これも一応お祖父様の形見だしな。」
「そうなんだ。それも、大切な物なんだね。」
「でもそのせいで不良に間違われるんだったら、しない方が良いかもな。」
「そんなことないよ。ただそれを格好良いと取るか、不良と取るかの違いだよ。」
「そういうものか?」
「…多分。」
「しかし前にも自分で言ってたけど、愛嘉理こそ大変だったんだろ?その瞳…。」
「ああ、うん。ずっと眼鏡で隠してたんだけどね、色々あって意味なくなっちゃったからやめたんだ。」
「そっか、俺はその方が良いと思うよ。前から思ってたけど、愛嘉理の瞳こそ綺麗だしな。」
「あ、ありがとう。吾生や繋くんもそう言ってくれたから、私も奇異の目で見られても今では余り気にならなくなったんだ。」
「あの二人にも言われたんなら、きっと本当にそうなんだよ。愛嘉理は自分の瞳、好きじゃないのか?」
「う、うん…。涙くんは?自分の髪、好き?」
「俺は特に何とも思わないな。これがあろうとなかろうと、忌み嫌われることに変わりはなかっただろうし。」
「私はこの瞳さえなければって、ずっと思ってた。色だけじゃなくて見えちゃいけないものまで見えるから、化け物の子って呼ばれちゃうのかなって。」
「…。」
「だからね、瞳を閉じて生きてきたんだと思う。眼鏡で蓋をして何も見ないように、何が起きても全部自分のせいにして、だから人と関わらないようにしようって楽な方に逃げてたんだと思う。」
「…愛嘉理も、俺と同じだったんだな。」
「うん、私もずっと死にたかった。…消えたかった。」
「でも私も涙くんも、今はもうきっと違うよね。」
「ああ。じゃなきゃ俺達、今こんなふうに話してないだろ?」
「確かにそうかも。何かごめんね、こんな話をするつもりじゃなかったんだけど…。」
「いや、別に。まあ、愛嘉理とじゃなきゃこんな話なんてできないけどな。」
「それは私もだよ。何か、涙くんと私って似た者同士だよね。」
「ああ、だからこそなんだろうな。」
「うん。」




