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あおとあかのきせき 下書き  作者: 世渡 繋
第二章
39/69

強さの真髄 一

「相変わらずお前はすぐ泣くな。」

「だ、だって…。」

「まあまあ、今日のところはその辺にしてやりなさい。」

「ふん、毎回お前も小僧のお守りなどよくやるな。」

「…。」

「良いだろう、今日はこの辺にしておいてやる。続きは明日のお楽しみだ。」

(まなぶ)、君ももっと強くならなければいけないよ。いつまでも泣いてばかりでは、何も変わらない。」

「…うん。でも、どうやったら強くなれるのかな…?」

「そうだな、君は狗神様に会ったことはあるかい?」

「狗神様?前に大蛇さんが言ってた、色々な霊術を使うっていう…。それ以外でも、噂で聞いたことはあるけど…。」

「それなら実際に会ってみると良い。あの方はそれはそれは大層な強さの持ち主だからね。と言うより、あの方をおいて強さで右に出る者などそうそうおるまい。」

「本当?」

「そうとも。狗護神社へ行ってみなさい。きっとそこにおられるよ。」

「うん、ありがとう!」


「行き方を聞いておけば良かったなぁ…。」

「うわっ!な、何…?」

「だ、誰か…助けて…!」

「む、何じゃ?」

「あ、貴方は…。」

「こんなところでどうしたんじゃ、迷子か?」

「は、はい…。狗護神社へ行きたいんですけど…。」

「塗壁に阻まれてしまったのじゃな。」

「ぬ、塗壁…?」

「うむ、放っておいても夜明けにはいなくなるじゃろうが…。」

「夜明け?それまでこのままなんですか?」

「ほっほ、尋常ではない怯え方じゃの。」

「だ、だって…。」

「それにもう一つ言うとな、こちらは真逆の方向じゃぞ。」

「ええっ!?そんなぁ…。」

「仕方ないのう。ほれ、乗りなさい。」

「い、良いんですか?」

「うむ、ひとっ飛びじゃ。」


「ほれ、着いたぞ。」

「ありがとうございます!」

「ではな。帰りは気を付けるんじゃぞ。」

「はい!」

「ここが狗護神社かぁ…。狗神様って、どんなお方なのかなぁ?優しいと良いなぁ…。」

「す、すみません。誰かいませんか?」

「おかしいなぁ、気配はするんだけど…。」

「う、うわぁっ!」

「え?あ、ごめんね。驚かせちゃった?」

「え、えっと…。貴方が狗神様…?」

「え、私は人間だけど…?」

「あ、なぁんだ。本当だ。それにしても、この山に人間なんて珍しいな。」

「私は人見 愛嘉理。」

「僕は学。」

「学くんは吾生を探してるの?」

「吾生?それって、狗神様のこと?」

「この山の皆には、そう呼ばれてるみたいだね。」

「狗神様を知ってるの?」

「うん、でも吾生なら今はいないよ。」

「そっかぁ。神様って、忙しいんだね。」

「そうだね。どんな用で来たの?」

「僕ね、強くなりたいんだ。狗神様はすごく強いから会ってみると良いって、大蛇さんが言うから来たんだ。」

「そっか。どうして強くなりたいの?」

「いつも苛められて、泣いちゃうから。強くなったらもう泣かなくて済むし、苛められなくなるかなって。」

「そっか。」

「あ、愛嘉理。」

「吾生!お客さんだよ。」

「君は、学だね。」

「ぼ、僕のことを知ってるんですか?」

「勿論。この村の全てを、僕は知ってるよ。」

「す、すごいなぁ…。」

「…あ、そうだった。初めまして。今日は強くなる為に来ました!」

「君の思う強さと僕の思う強さは、何か違う気がするけどね。」

「…?」

「まあ、良いや。君は霊術の修業をしたいの?」

「何でも分かっちゃうんですね。」

「まあね、僕は神だから。でも、君にとっては師匠かな?」

「師匠!」

「ふふ。可愛い弟子ができたね、吾生。」

「そうだね。」

「大蛇さんから聞きました。師匠は、色々な霊術を使えるんですよね。僕にも教えてください!」

「うーん。それは良いけど、君に教えられる霊術はそう多くはないよ。」

「そうなんですか?」

「変化と分身、それから幻術くらいかな。」

「そんなに?教えてください!」

「一つ言っておくけど、分身や幻術はともかく僕変化は苦手だよ。」

「え、そうなの?」

「そうだよ。だってほら、耳と尻尾が出ちゃってるじゃないか。僕的にはもっと忠実に人間に化けてるつもりなんだけど、何かこれと横文字の発音だけは上手くいかないんだよね。」

「そ、そうなんだ…。」

「…。」

「でも師匠は、やろうと思えば何にでも化けられるんですよね?」

「まあ、一応はね。」

「やっぱりすごいですよ!」

「あ、ありがとう。」

「…じゃあ、そろそろ修業しようか。」

「はい、よろしくお願いします!」

「ん。こつはね、変化したいものをしっかり想像すること。そして霊力で身体を覆う感じ。じゃあ、最初は何が良いかな…。」

「師匠!」

「ん?」

「師匠が良いです!強い師匠になれたら、僕も強くなれる気がするから。」

「良いけど、さっきも言ったようにこれは僕の本当の姿じゃないよ。僕の本当の姿はこっち。」

「じゃあ、その姿にします!」

「そう。」

「いきますよー!想像…想像…!」

「どうだ!…あれ?」

「全身をしっかり霊力で覆わないとね。」

「はい、もう一度!」

「そうだ、君にこれをあげる。」

「葉っぱ…?」

「うん。これをこうやって頭に乗せて、ここから滝みたいに霊力で自分を包んでく感じにするとやりやすいかも。」

「はい、ありがとうございます!」


「学くん、頑張ってるね。」

「うん。」

「どうして学くんの修業に付き合ってあげることにしたの?」

「上手くいかないことに向き合うのも、一つの強さだよ。頑張った分だけ、できた時には自信になるはずさ。」

「そっか。ところで、吾生は努力して霊術を身に付けたの?」

「僕は元からだよ。人々が望んだ力を持って生まれた存在だからね。だから僕は、別のことで努力してるんだ。」

「別のこと…?」

「し、師匠!」

「ん?」

「できました、手だけだけど!」

「すごいね。もっときちんと霊力が制御できるようになれば、修得まで待ったなしだよ。」

「本当ですか?」

「うん、でもここからの道程が厳しいからね。ただし、それができれば分身もすぐにできるようになるよ。」

「頑張ります!」

「じゃあ、今日はここまで。また明日ね。」

「はい!」

「ところで、ちゃんと帰れる?」

「た、多分…。」

「来る時はどうやって来たの?」

「偶々会った一反木綿さんが送ってくれたんだ。」

「そうなんだ。」

「一人で帰ることも修業だよ。」

「は、はい!」

「気を付けてね。」

「ありがとうございます!」


「あれから毎日、あんな感じだね。」

「うん、学は自分の中にあるああいう強さを知らないだけだよ。」

「そうだね。」

「師匠!どうですか?」

「すごいね!」

「うん、君には僕より変化の素質があるみたいだね。」

「本当ですか?」

「もう他のものにも化けられるんじゃない?」

「んー…、はっ!」

「わ、私?すごいね、鏡見てるみたいだよ。」

「やったー!」

「見本がないものにまで化けられたら、もっと幅が広がるよ。」

「たとえば…、こうですか?」

「流石だね。君は元々想像力が豊かだから、霊力の制御さえ覚えれば修得はすぐだったね。」

「じゃあ、次の修業ですか?」

「そうだね、次は分身にしようか。」

「はい!」

「霊術全般に言えることだけど、基本は想像と制御。分身もこれを抑えておけば、すぐにできるようになるよ。」

「はい!」

「やる気満々だね。」

「そりゃあそうだよ。僕は強くなるんだ!」

「じゃあ、分身のこつを説明するよ。」

「お願いします!」

「目の前に自分の分身を想像して、そこに霊力を注ぎ込む感じ。やってみて。」

「んー…、はい!」

「霊力を固める感じだよ。そうだ、前にあげた葉っぱを持ってるよね?」

「はい。」

「それをこんなふうに、自分の前に投げてごらん。」

「こう、ですか?」

「そう、そこからまずは霊力を滝のように流して自分の形を作る。そして、そこに霊力を注ぎ込む感じ。やってごらん。」

「はい!」

「あと分身の強さは注ぎ込む霊力で決まるけど、注ぎ込み過ぎると本体が疲れちゃうから気を付けてね。」

「はい、師匠!」


「分身も中々板に付いてきたし、いよいよ幻術の修業に入ろうか。」

「はい、師匠!」

「幻術は今までの術より難しいけど、その分できるようになればかなり強力だよ。頑張ってね。」

「はい!」

「これは相手の目に、自分の想像を映す霊術だ。今までより更に繊細な制御が必要だよ。まず、見せたい幻を思い描く。そして相手の目に霊力を集中させ、中で爆発させる感じ。僕に向かってやってみて。」

「はい!」

「んー……、どうですか?」

「もっと集中させないと、相手に幻は見えないよ。」

「はい!」

「あ、そうだ。言い忘れてたけど、相手に幻術を掛けられた時の対処の仕方も教えておくね。」

「そんなことができるんですか?」

「うん、これは相手の想像を利用した有効な方法だよ。でも大前提として、自分が幻術に掛かってる自覚をしないとだめだからね。そしてその感覚を磨くには、経験を積むしかない。」

「名付けて幻術返し。幻の中の自分を相手に置き換えて、一気に霊力を解放する。そうすることで、相手を自ら造り出した幻に引き摺り込む。」

「す、すごい術ですね。」

「それだけ難しいけどね。」

「学。」

「はい。」

「僕と一つ約束して。」

「?」

「今まで君に霊術を教えてきたけど、その力を無闇に使わないこと。」

「どうしてですか?」

「どうしてだと思う?」

「え、うーん。何でだろ…?疲れちゃうから、とか…?」

「良いかい?本当に強い者は、力で相手を脅かしたりはしない。力は使うべき時にだけ、出すものだよ。」

「使うべき時?」

「そう。それは大切なものを守る時かもしれないし、叶えたい夢を実現させる時かもしれない。その時にこそ、力は君の助けになってくれるよ。」

「助け?強さは力じゃないんですか?」

「僕はそうは思わないな。」

「どうしてですか?」

「力を振り翳す時、それはどういう時だと思う?」

「自分の強さを相手に分からせたい時、かな…?」

「うん。じゃあ、何でそうしたいのかな?」

「弱いって思われたくないから…?」

「そう。裏を返せばそれは、弱さを知られたくないから。隠したいからなんだ。」

「じゃあ必要な時以外に力を振るうのは、弱いからってことですか?だから強い人は、無闇に力を使わないって…。」

「まあ、そんなところ。でもね、弱さがなければ強くもなれない。それも忘れちゃだめだよ。」

「?」

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