新学年
「おはよう、愛嘉理。」
「おはよう。紡ちゃん、触ちゃん。」
「私達、また同じクラスだよ。」
「本当だ。」
「今年も一年、よろしく。」
「あ、涙くん。おはよう。」
「おはよう、愛嘉理。また別のクラスだな。」
「そうだね。」
「鬼目くん、残念そうだね。」
「そ、そんなことは…!」
「あ、赤くなってる!」
「…?」
「ち、違うんだ、愛嘉理。これは…その…。」
「…?」
「愛嘉理の友達って、容赦ないんだな。」
「そう?」
「…少なくとも俺にはな。何でだろ?俺、何かしたかな?」
「さあ…?」
「鬼目くんってさ、本当素直だよね。」
「うんうん。」
「何かついつい、ね。」
「涙くん、困ってたよ。」
「そこがまた、ね。」
「…?」
「愛嘉理とある意味少し似てるかもね。」
「そうなの?」
「うん。」
「まあ、何でも良いけど程々にしてあげてね。」
「はいはい。」
「…。」
「涙くん。どうしたの?」
「いや、何となくな。愛嘉理こそ、今日は一人か?」
「うん。二人共、今日は委員会の打ち合わせがあるんだって。」
「そうか。愛嘉理はやってないのか?」
「私は、二年連続で図書委員だよ。」
「勝手なイメージだけど、真面目な愛嘉理には向いてそうだな。」
「そうかなぁ?図書委員は毎日放課後に本の整理があったり、持ち回りで休み時間の受け付けもするんだけど、それが結構大変だからか皆やりたがらなくて…。」
「立候補したのか?」
「うん。」
「偉いな。」
「そんなことないよ。最初は、皆の役に立てたら少しは嫌われなくなるかなって思っただけだし。」
「それでも、充分立派だよ。それにもう嫌われてないんだし、今年は違う理由なんだろ?」
「私が人の為に頑張るのは、いつも自分の為だよ。少しでも役に立ってその人が笑顔になってくれたら、私は嬉しいから。」
「そうか。きっと愛嘉理のそういうところに、俺は救われたんだな。」
「え、いや…。」
「しかし図書委員の愛嘉理は、余り本は読まないのか?」
「読むよ。」
「へえ、どんな?」
「料理が出てくる本。」
「レシピ本か?」
「それは勿論、美味しそうな料理が出てくる小説とか…。そこから新しい料理の着想を得たりもするからね。」
「成る程。」
「涙くんは、本って読む?」
「そこそこな。」
「どんな本が好きなの?」
「昔話とか童話が多い気がする。何か共感するのかな。」
「あ、それは確かに分かるな。私もたまにファンタジーを読むけど、その中なら私は普通でいられる気がするもん。」
「はは、そうだよな。」
「ところで、涙くんは何か委員会とかやってないの?」
「俺も愛嘉理と同じで、去年も今年も体育委員。体育祭以外の仕事が殆どないから、去年はそれを見越してクラスの皆がそうしてくれたんだろうな。お陰で休んでる間も余り周りに迷惑掛けずに済んだよ。」
「そっか、今年は?」
「クラス全員の推薦。」
「すごいね。でも涙くんはスポーツが得意だから、何か分かるな。私も推薦しちゃうかも。」
「そいつは光栄な限りだ。」
「去年もそうだったけど、今年の体育祭でも大活躍して女子の注目の的だったもんね。」
「あれには参ったな。」
「モテるのは、嬉しくない?」
「うーん、騒がれるのは苦手なんだ。」
「そっか、それは確かに分かるかも。」
「だろ?平穏が一番だよ。」
「ふふ、そうだね。」
「ところで、その、愛嘉理は?」
「え?」
「愛嘉理は、その女子の中に入ってないのか?」
「私?勿論、私もすごいと思って見てたよ。実際、負けちゃったし。」
「いや、そういう意味じゃなくて…その…。」
「?」
「いや、何でもない。」
「…?うん。」
「…愛嘉理は好きな人とかいないのか?」
「す、好きな人?」
「うん。…あ、愛嘉理分かってなさそうだから先に言っとくけど、恋愛の話だからな?」
「れ、恋愛?でも、私にはまだそういうの早くないかな…?」
「そうか?俺はそうは思わないけど。」
「…どうだろう?改めて聞かれると、自分でも分かんないや。」
「その様子だと、気になる奴はいるみたいだな。」
「え?いや、違うよ。そういうんじゃないし…。」
「…。まあ、良いよ。でも、俺は諦めないからな。」
「え?」
「じゃあな。」




