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「女神伝説」 礼の世界  作者: 海夢
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新しい絆

 あれからしばらくの間…


 礼は、なるべく弥仁と一緒にいるようにした。

 弥仁が嫌がることはやめた。

 特に美姫や弥美にやきもちを妬くのは止めた。

 若葉にも頼んでそれとなく妬心を隠すようにした。

 そのせいか、友人の少ない美姫から驚くほど友好的な態度をとってもらった。

 あれほどの美人に仲良くされるのは意外な副産物になった。

 美姫とはいい友人になれるだろう。――弥仁を抜きでなら。

 自分が猫を被れるなんて思ってもみなかった礼は、男の前でかわいこぶる少女達に理解と親近感を覚えた。

 彼女たちも必死なのだろう。

 次の夢を見るまでに、弥仁との仲を発展させなければならない。 毎朝、洗面台の鏡を見るたびに気を引き締める。

 これは、女の勝負なのだ。

 目を閉じるとかわいい我が子たち。

 娘、息子。

 私の家族。

 (なんとしても手に入れてみせる)

 礼の鬼気迫る気迫に礼の母<ひろみ>は心配そうに声をかけた。

 「礼、あまり根を詰めるんじゃありませんよ。あなたはオロチの息吹に憑かれているのだから」

 礼は洗面台の鏡から目線を母に移すと、かわいげな笑みを作り母を安心させた。

 「大丈夫よ、ママ。弥仁ちゃんと仲良くするだけだから」

 「そう?ならいいけど」

 (あの子達を手に入れるまでは…)

 そう、礼は心でつぶやいた。


 この頃になると、弥仁は忙しく、あまり家にも寄り付かなくなっていた。

 泊まりに行っても本人が居ないのでは張り合いがない。

 礼は付き添いの若葉と弥仁の部屋でコタツに入りくつろいでいた。

 「礼ちゃん、あまり弥仁くんの部屋を荒らさないほうがいいよ」

 勝手に本棚から漫画を取り出し読む礼を、若葉はそう注意した。

 「うん、わかってる。それに、見られて困るものは弥仁ちゃんは置かないよ」

 弥仁には常に四巫女の少女達が側にいるのでヘタなものは置いてないのだ。

 一般の青少年のごとく、ベッドの下なぞに隠していてもすぐにバレるから。

 礼もそれくらい心得ている。

 弥仁攻略のヒントに18禁関係が置いてあると有り難いのだがとも下世話な事を考える。

 もっとも本当にあったら、軽蔑していたろう。

 「ねえ、若葉ちゃん。お姉ちゃんてどう?」

 「どうって?」

 「仲いいよね?」

 「うん。お姉ちゃんは私が大好きだから。この間も、一緒にお風呂入ろうって勝手に入ってきて体を勝手に洗い始めるし」

 「ふーん」

 礼にはあまり興味がわかない話だ。

 あの子達が一緒にお風呂に入るとか、考えづらい。

 「おやすみのキスとかしてくるし」

 顔を紅くしながら若葉は続ける。と、声が止まった。

 礼が顔を上げるとドアが開いて弥仁が若葉を見つめていた。

 弥仁は部屋にすっと入り若葉が入っているコタツの合い向かいに潜り込む。

 「続けて」

 礼がお帰りと、言おうとするのを制し、弥仁は催促する。

 「えっと…」

 恥ずかしくなったのか、若葉は口ごもった。

 「弥仁ちゃん!」

 と、無視され怒ろうとした礼はふと気が付いた。

 弥仁が興味深げに若葉と桜子の仲睦ましげなさまを聞いている。

 「弥仁ちゃん…」

 「待って」

 その真剣な様を見て礼は目を細めた。

 ひとしきり若葉の姉とのエピソードを聞き終わると満足げにニンマリし、やっと弥仁は礼に耳を傾けた。

 「なに?」

 いつもの礼なら無視された事に憤慨したろう。

 しかし、今回は違った。

 「今度、美姫ちゃんと温泉に行くんだ。お泊まりもするの」

 「ふーん」

 あまり、興味がなさげだ。

 「美姫ちゃんと体洗いっことかするの」

 と付け加えると弥仁の顔色が変わった。

 「へぇ…」

 「美姫ちゃんてお肌すべすべだし、気持ちいいの。洗い方も上手いし」

 手応えを感じて礼は更に加えた。

 「で、いついくの?」

 「弥仁ちゃんもいきたい?」

 「いや、別に」

 そう答えながらも、弥仁は何かを考え始めた。

 「どうしてもっていうのなら、美姫ちゃんと相談してみるね」

 そう、礼は勝利の笑みを浮かべた。



 弥仁の部屋から自分達にあてがわれた部屋に戻る時、若葉が礼に尋ねた。

 「いつ、八上姫様と約束したの?」

 「してないよ」

 しれっと言う礼。

 「だって…」

 そう言う若葉を遮って

 「若葉ちゃん、手配しておいて」

 と、当然のように言った。

 「えっ、だって先方にも都合が…んもう!」

 若葉のため息を尻目に礼は布団に潜り込んだ。



 光が見える。

 礼は、またあの夢だと確信し感嘆した。と、慌てて口をふさぐ。

――覚醒しないよう意識を落ち着かせる。

 落ち着いて、目が覚めないよう慎重に前に進む。

 前?だろうか。とにかく光に向かう。

 光が収まると礼の家のダイニングが現れた。

 「やったわ!」

 テーブルに長男の姿を認めると、礼は抱きついた。

 「まったく…」

 長男はあきれたように礼に抱きつかれた。

 「だって、ママ頑張ったんだから」

 「ママなにやったの?」

 長女も、あきれるような声を出す。

 「えっ、なにが?」

 長女に促されてテーブルを見ると、自分とそっくりの少女がニコニコ笑っていた。

 「私?」

 年齢は中学生くらいだろうか。

 中学生の頃の礼にそっくりだった。

 「妹よ。ママ」

 「妹?」

 「うん、三人目。未来が変わったみたい」

 「また、未来が変わったの?」

 「今度は増えたの」

 「えっ。増えるんだ」

 礼は次女であろう少女に近寄りまじまじと確認した。

 次女は恥ずかしそうにニコニコ笑っている。

 「私そっくりみたい」

 思わず頬にキスした。

 次女は困ったようにニコニコ笑い続けた。




 礼は目を覚ました。

 思わずニンマリ笑う。

 達成感を感じていた。

とりあえず美姫と温泉に行こう。

この幸せを手放さないために。

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