夢の佳人
礼はよく夢を見る。
霊夢、とでもいうのであろうか。
予知夢とも違う不思議な夢だ。
今日は、夢の中、少女が現れた。
背が高く、すらりとしたスタイルのよい美少女。
眼鏡をかけているが目元が涼しげなのがわかる。
「だれ?」
礼はそう問いかける。
少女は面を上げた。
礼を見るとかすかに微笑んだようだ。
「ママ…」
そう言った。
その瞬間、世界が広がった。
そこは、普段、礼が使っている自宅のダイニングキッチンであった。
そこには大きめのテーブルといすが六脚あり、そのひとつに少女は座っていたのだ。
礼は夢の中の少女に近づき、その顔をまじまじと見た。
自分が子供を作るのなら相手は弥仁しかいない。
それは疑いようのないことだ。しかし、少女は自分や弥仁には似ても似つかない。
自分の身長は150cmちょっとしかないが、少女は160cmを越えているのではないか?
礼と少女は目線を合わせた。
少女は人懐こそうに笑っている。
見た感じ、冷たそうな印象を与えるのは眼鏡のせいだろうか。
「あなた…」
「?」
礼は問いただそうとして、言葉を詰まらせた。
確かに自分の子供だ。
そう、なぜだかわからないがそうわかった。
兄弟もいない礼には血縁は母と祖母しかいない。
叔父や従姉妹はいるが礼の家系の特異性により接点は持てない。
親密な関係を持つと<竜の息吹>で相手を殺してしまう。
そのせいで母の世代までは人身御供を常に身近に置いていたほどだ。
その習慣が途切れたのは母の親友である弥仁の母<恵>のおかげである。
だから、結婚するのは弥仁だし、子供も弥仁しか作れない、それは礼が子供の頃からの決まりである。
じっと、礼は少女を見る。
少女は恥ずかしげに目線をはずした。
「なにかな?」
少女が聞く。
「弥仁ちゃんに似てない」
少し不満げにつぶやく。
「パパに?」
「パパ!」
その言葉に礼の気分は少し持ち直した。
「やっぱり、パパは弥仁ちゃんなんだ」
にんまり笑う。
「うん。弥仁パパ」
「うんうん」
ニコニコしながら少女に抱きつく。
「なに」
驚く少女、いや、娘の体温を感じながら礼は肉親というものを実感した。
抱きつきながら意外とふくよかな体にあらためて驚く。
胸あるんだ。
そう、少女の胸をもむ。
「なに、ママ」
そう、胸をかばう少女。
「だって、私の娘にしてはおっぱいあるし」
と、自分の胸と見比べる。
「え、そんなの知らないし」
そう、あえぐ。
そういえば年齢も今の礼より年上なのかもしれない。
大人びた風貌をしている。
私も大人になればこうもなるのだろうか?
そんな疑問を思い浮かべるが、すぐに消えた。 この肌から伝わる暖かさ、温もりは間違いなく子供だ。
自分と弥仁の…。
その心地よさは格別なものだった。
礼が目覚めた。
何か夢を見ていたらしかったが、思い出せない。
けど、格別に愉快な夢だった、そんな気がした。