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一人目:過去そして目覚め

火が全てを燃やすかのように村を焼き尽くす。泣き叫ぶ人達の声。悲鳴。恐怖に慄く人達。魔物達はそれを邪魔とばかりに殺していく。それから一夜過ぎた。軍は被害にあったこの村を調べていた。


そこに一人の少年がいた。少女にも見える美しい少年だ。しかし今ではそんな面影も消えている。血をかぶさり服は焼け焦げ正気のない目でただただ目の前の焼けた家を見ていた。するとマスクと防護服をつけた作業員達は彼に近づく。

「生存者か?」


「生きているようだが・・・。」


「待て、今検査する。」


一人の作業員が彼に金属の機械を当てる。するとピピピ・・・という音が鳴り響く。

「駄目だ。感染している。」


「おいおいマジかよ。でも何で生きてるんだ?あのウイルスに感染してんだろ?まさかゾンビだとか言うんじゃねえぞ。」


「・・・確かにその可能性もあるな。一応隊を呼ぼう。」


『こちら第二調査隊。現在南西側で生存者を確認。ただし感染している。念の為に隊を送ってくれ。ーーー以上。』


『了解した。すぐに向かわせる。ーー以上。』


「さて、これからどうする?」


「とりあえずは隊が来るまで様子見だ。」


「「「了解。」」」


「・・・・うぅ。」


少年は急に呻き出す。その声を聞いた作業員達はすぐにその場から離れる。だが一人だけ動かない。いや、動けないのだ。

「か、体が動かない・・・!」


「うぅ・・・あぁぁ・・・。」


「た、隊長!どうしたんですか!?」


「体が動かないんだ!は、はやく俺を助けてくれ!」


焦り出す隊長。しかし隊員はどうしていいのかわからない。その間にも少年はゆっくりと立ち上がる。それをみたのか隊長は体の震えが止まらなくなる。

「ひ、ひぃ!ははは早く!た、助けてくれぇ!」


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」


少年は叫びながら動けない彼に襲い掛かる。あと数センチで触れるその瞬間。パァン!という銃声が鳴り響く。そして少年はその場にドサリ。と倒れ込んだ。どうやら麻酔銃のようだ。そして隊長は腰を抜かす。隊が来たようだ。

「大丈夫ですか?」


「あ、あぁ。助かった。有難う。」


「いえ・・・しかし、この少年は一体・・・。」


「わからん。とにかく調べる必要があるだろう。あと、あのウイルスに感染している。気をつけてくれ。」


「了解。皆、この少年を運ぶぞ。」


「「「了解!」」」


彼らは少年を運ぶ。作業員達は彼らを見送りまた調査を始める。すると一人の隊員が少年のいた家の目の前に二つの焼死体を発見する。

「これは・・・あの少年の両親か。まだ小さいのにかいわそうな子だ・・・。」


「あぁ・・・しかもこれは魔物に襲われた後だ。酷い有様だ。」


「しかし何故あの子だけ生きている?」


「・・・私達には関係のない話だ。さぁ、早く調査をはじめよう。」


彼らはまた焼けた村の中に消えていった。




ーーーーーーーーーここはある古ぼけた小屋。ここにはある言い伝えがある。この小屋には100年前からある化物がいると。その化物は錆びた柩の中で眠っているらしい。固い鉄に覆われた柩に。


冷えた地下室。そこには壊れて動けなくなった機械が沢山ある。そして一番後ろにある鉄のカプセル。そこにはガスマスクだけを着けている少年がいた。もはや生きているようには見えない。髪は肩まで伸び、痩せこけた体。彼を覆うカプセルは今や錆びた塊だ。少年は今、目を覚ます。

「・・・ん。」


ここは・・・?俺はどうしてこんなところにいる・・・。苦しい。此処から出たい。誰か・・・誰かいないのか?出してくれ。ここから出してくれ!


彼が目を見開く。すると鉄の扉がバァン!という音を立て吹き飛ぶ。それと同時に彼の口にあるマスクが取れる。息を吸った彼は咳き込む。

「ゲホッ・・・ゲホッ、一体此処は・・・どこだ?俺は・・・誰なんだ?」


あたりを見回す。壊れた機械が無情にも置かれているだけで何もない。だが、入口の方に机が置かれている。彼は口元を抑えながらゆっくり、ゆっくり机に近づく。そこには古くなったノートがあった。彼はそれを手に取りページを開く。

『3月16日。被検体に異常なし。まだ彼がここに来て初日。彼の名前はわからないが私は彼をアレスと名づけた。少女のような中性的な美少年だ。』


「アレス・・・?俺の事か・・・。」

さらにページをめくる。


『3月17日。アレスに異常なし。今日はウイルスの研究について調査した。彼は何故ウイルスに感染し、魔物の血液を持っているというのに生きられるのか?他の研究者達は彼を研究しあいようだ。彼がここにいる為か、少し優越感がある。』


「ウイルス?魔物?なんなんだ・・・。」

ページをめくる彼。しかし特にこれといった物はない。


『10月15日。アレスに異常なし。だんだんと彼に惹かれ始めている。彼の可能性もそうだ。不思議すぎる。何故彼は生き延びる事がでいるのか?それに彼の過去についても知りたい。』


「俺の過去・・・?可能性・・・?一体何が起きている?」

アレスは困惑した。今自分は何もわからない事だらけだ。ページをめくり、最後のページになる。そこには彼を惹きつける内容だった。


『5月22日。アレスに異常なし。今日彼とのお別れがきた。魔法が完成したらしい。彼と分かれるのが悲しい。嫌だ。彼と別れたくない。だが、上の命令には逆らうことができない。だが幸いにもこの場所は誰にも知られていない。私はこの場所を隠す事に決めた。そして、もしもアレスがこの日記を見ているのなら。一言でいいから謝りたい。たとえ殺されても構わない。それだけの事を彼にしたのだから。当たり前の代償だ。そして彼に伝えたい。生きて欲しいと。』


「・・・魔法?俺がこの人を殺す?何を言っているんだ?」


ページはそこで終わっていた。俺は日記を机の上に置き、部屋を調べると、そこには服があった。フード付いた全身を覆うマントもある。俺はそれを身に付け、外に出ようとドアを開く。そこは森だった。当たり一面木が生い茂り、日光をも遮る森だ。

「とりあえず、ここが何処なのか調べる必要がありそうだ。」


俺は山を駆け下りた。


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