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白い黒猫のタンゴ(短編集)

裏の寿司屋 ~貴方の所にくるかもしれない?~

作者: 白い黒猫

私が勤めていた会社で、本当にあった出来事です。

貴方の職場にこの男性が現れたらどうしますか?

 お昼休みまであと三十分チョットというタイミングで、その男は会社にやってきた。

 薄い頭髪に細身の身体の調理白衣に身を包んだ中年はフラッとした様子。視線で泳がせオドオドとした様子でギョロっと血走った目で、どこか異様である。フロアにいたみんなは何事かとその訪問者を見つめていた。


「裏の寿司屋でございます。助けてください!

 実は家の馬鹿倅が、仕出し寿司を十四個を間違えて四十個と受けて作ってしまいました。

 千二百円の寿司ですが、どうか五百円で良いのです!

 どうか買っていただけないでしょうか?

 お願いします」


 男はヒロヒロとした震える声でそう訴え、深々と頭を下げる。恥も外聞もなく土下座せんばかりに頭を下げる男の様子は悲壮感さえ漂う。


(今日のお昼は寿司か、悪くないかもしれない。人助けになるし、かなりお得だし)


 フロアの多くの人間はそう考える。緑の竹の模様のついた包装紙に包まれた二十六個の寿司は瞬く間に売れ、男は泣かんばかりにペコペコ頭を下げお金を受け取り去っていった。

 そして昼休み、その寿司を買った者は、その包みワクワクとした気持ちで開けて驚く。


(カッパと干瓢だけ?)


 どうみても三百円チョットの内容。

 箸袋にも包みのどこにも寿司屋の名前がない。それに会社の裏に寿司屋なんてあっただろうか? 会社の裏は住宅街が広がっていて、お店といったら団子屋とうどん屋くらいしか思いつかない。


 なんとも地味な詐欺にあった事に気づいたものの、怒りよりも苦笑しか出てこない。その日は皆でチープな寿司ランチを妙に穏やかな空気で楽しんだ。

 

 その後、豪雨等で外にお昼を買いにいくのが面倒な時。


「今日、裏の寿司屋きてくれないかな」


「裏の何屋でもいいけど」


 社内でそんな会話が交わされるようになるが、裏の寿司屋は二度と訪れる事はなかった。

たしかにこの方法だと確実に作った弁当を売り切ることは出来ますが、決して、真似をしないでください。


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― 新着の感想 ―
[良い点] オチが何とも言えません! 最高ですよ!! [一言] 実話ですか...私は学生ですけど、学校にこんな人が来たら愉快ですね。
[一言] 笑えましたー 悪い人なのに、なぜか憎めないところがいいですね。
[一言] びっくり詐欺ですね~! 私は架空請求とオレオレ詐欺に出会ったことはありますが すぐに気づいて事なきでした。 かっぱとかんぴょうだけは寂しいですね……
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