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70,粉砕

「うわっ、」

 念力に引っ張られて末木は黒木の隣の床に転がされた。

「く、クロさん!」

 近くで見る黒木の凄まじいやられ具合にカアッと怒りが燃え上がり、

「きっさまあーー…」

 と幽鬼を睨み上げた。

「マッチョな兄ちゃんだな? んじゃ自慢の筋肉拝ませろや!」

 末木の鍛え上げた厚い大胸筋がビクビクうごめき、ゴリゴリ痛んで張り切り、末木は顔を真っ赤にして汗を噴き出した。皮膚がミシミシ音を立てて裂け、バチンッ!、と筋肉がぶっ千切れて飛び出した。

「うっぎゃあああっっつつつつ!!!!」

 末木は神経の焼き切れる凄まじい激痛に気が狂ったような絶叫を上げた。

 ジャンパーの胸がぐっしょり赤黒く濡れ、白目を剥いて倒れた。

「う……、すう……、すえ……き…………」

 黒木がヒクヒク白目を剥きながら痙攣した。

「よおし、目が覚めたか」

 幽鬼は喜んで舌なめずりした。

「思ったより根性ねえな? じゃあひと思いに八つ裂きにしてやろうかあ!?」

 黒木がザアッと立ち上がった。

「ぶっ飛びなあっ!!」

 黒木の全身の骨がミシッと軋んでバラバラに離れようとした。

「ぐ…、ぐぶふっ…………」

 黒木の顔が歪み、血をだらだら噴き出し、ぶくぶく泡混じりの血を溢れさせた。

「く、クロさん………」

 末木がまぶたをヒクヒクさせながら、体をブルブル痙攣させながら手を伸ばした。黒木はもちろん自分で立っているのではなく、念力にがっちり掴まれ、床にかろうじてつま先立ちしている。

 木場田がダダダ、と走り、

「ヒイッ」

 ひどい顔で怯えるメイコの腕を掴み、無言で引っ張り上げ、黒木の後ろを通って通路へ出ていった。

「フン」

 幽鬼はあざ笑って見逃し、

「さあて」

 半ば失神している黒木を始末しようとした。

「ばあん!!」

 ぎょろ目で叫ぶと、

「ぐほっ、・・・・」

 幽鬼はぎょろ目を自分の腹部へ向けた。白い体の腹が割け、どろどろと赤い臓物が流れ出ている。

「な、なんじゃこりゃあ?」

 ボコン、と胸に穴が開き、

「うぎゃあっ」

 心臓が破裂して血が爆発し、ぶふっと鼻、口、目から噴き出した。

「うぎゃあああああ!!!!!」

 黒木がドッと床に崩れ落ち、幽鬼は胸を押さえて狂ったように暴れ回った。

「く、くそお、誰だ? この、神に、なにさらすんじゃああああああ・ぎゃああああああああああっっっ!!!」

 ボンッと右腕が肩からふっ飛び、左手がビシャッと潰れ、やはり肩からふっ飛んだ。

「ぐお、ぎゃああああああああ!!!!!!!!!」

 下腹部がぐちゃぐちゃになり、股が広がって両脚がだらんと下がった。

「お、お、お、俺様は、神様………ぎゃああああっっっ」

 右脚、左脚が股から外へ外れて吹き飛んだ。

 手足を失った幽鬼は哀れに宙に張り付けにされたように動けず、

「ひっ、……や、やめるおおぐがががががが…………」

 顔がいびつに変形し、ぐちゃっと潰れ、汚い汁が宙に飛び散って漂い、やがて白いもやもやになって体も雲散していった。


「末木! クロさん!」

 斎木が懐中電灯を持って駆け込んできて、凄まじい惨状に一瞬息をのんで立ち止まり、

「末木っ! クロさんっ!」

 二人の元へ駆け寄った。

「おい、クロさん…、末木い……。なんてざまに………」

 末木が呻きながら言った。

「ど、どうした? け、ケイは?……」

「ケイは…寝かせてきた…。巫女を連れた木場田さんが血相変えて走ってきて、二人がたいへんだ!、って……」

 末木が宙でバタバタ手を掻き、

「お、起こしてくれ……」

 斎木が手を取って起こしてやろうとすると「あああっ・・」と恐ろしく顔をしかめて悲鳴を上げた。

「い、いいから、起こせ!」

 末木は鬼の形相で痛みを堪えて起こされ、

「クロさん、クロさん!」

 と呼びかけた。黒木はごぼごぼと血の泡を吹きながら、こちらも鬼の形相で起き上がった。

「い、いぐおう…」

 斎木と末木の手を借り、ブルブル震えながら立ち上がった。

「クロさん、大丈夫か?」

 黒木は激しく鼻息を吹き、どういう意味でか首を振った。

「ケイはあ……、見つけたのか?」

「ああ、大丈夫だよ。魂は抜けたままだけど、体はどこも怪我してないよ」

「つあっ、……魂、わああ……、紅倉の、中、だ…………」

 黒木は血を吹きながら

「・・・・・・ふううんんんんんんん!!!!」

 無理やり気合いを入れて自分を奮い立たせた。

「行くぞお。ミズキに合流してケイを託す。芙蓉美貴に同道し、紅倉からケイの魂を戻してもらう。行くぞお」

 黒木が率先して歩こうとして、末木と斎木が左右から支えた。

 防御壁の向こうでケイは無事眠っていた。再び斎木が背負い、末木が黒木を支えて歩きながら、男たち三人には、これが自分たちの生涯最後の戦いになるだろう予感がしていた。

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