孤独の日常 ーその2ー
雫が裕哉と出会う少し前のことだった。八百屋のおばあちゃんが倒れてしまった。客足が減っても、生活できるように副業などを増やした結果、体が耐えきれなかったのだ。
命に別状はないものの、店は閉めるしかなくなり、雫はまた一人になってしまった。それでも生活できるのは、おばあちゃんがこの時のためにコツコツとお金を貯めていてくれたからだ。雫はそのお金を使いたくはなかったが、入院費にかなりのお金が必要で、雫の収益をそっちに回すしかないので仕方なかった。
「ねぇ、仕事、増やせないの」
「増やせるが、どうしたんだい?」
「お金が必要なの、今すぐに」
しかし、雫の収益は言っても数か月に一回で、年にだいたい十万ほど。一回の入院にかかるのは、どれくらいかにもよるが二十万は超えるだろう。だから、仕事を増やして稼がないといけないのだ。
「…報酬は減るが、それで構わないかい?」
「えぇ、大丈夫よ」
「わかった、一回につき五千円。週三回で、月に約六万円にしよう」
それから、雫は夜になると街に繰り出してはターゲットを狩る生活を続けた。寝食に回すお金を減らして、貯金を続けた。結果、体はボロボロになり、体内の『ナスラ』も枯渇寸前まで来ていた。
"吸命衝動"に関しては、年齢が上がるにつれて、ある程度は抑えきれるようになっていた。また、超能力の扱いも上手くなったことで、『ナスラ』消費量も減っていたため、普通に生活していれば枯渇はしないはずだった。
そして…。
「もう…だめ…」
家に帰る前に力尽き、廃ビルで倒れてしまった。そのため、裕哉と出会ったときの雫は、衰弱しきっていたのだ。
裕哉にもらった、生野菜で『ナスラ』を回復できたものの、それでも全快には程遠い。しかし、休むわけにもいかずに、仕事は続けていた。
「はぁ?!今、何て言ったの?!」
四人組のターゲットを取り逃がしたことを報告していたとき、雫は衝撃の事実を聞かされることになる。
「あいつ、一人で乗り込んだの…?」
「あぁ、どうもそうらしい」
「…私も行くわ。場所を教えて」
「いいのか?これで君の報酬は激減することになっても…か?」
「もちろんよ」
(どうして…)
それが、雫の気持ちだ。裕哉がなぜ一人で向かったのか。それを聞くには、裕哉の元へ向かうしかない。
裕哉の無事を願いながら、日の下を雫は走り出すのだった。




