親切心の行く末に ーその3ー
「どこだ…!!」
裕哉は、連絡の取れない蓮介を探すために、夜の街を奔走していた。第十三区画を二人で手分けしているため、どこにいるかある程度の範囲まで絞ることができるが、それでも範囲は大きい。とはいえ、別れてからどのくらいの時間がたったかは知っているため、そこから逆算してもう少し範囲を絞ることはできる。ただ、それくらいだ。後は、運に身を任せるしかないのだが…。
そして、気づけば時刻は零時を回り、裕哉はいつの間にか日をまたいでいた。そして…。
「支部長!!」
裕哉はついに、道端に倒れている蓮介の姿を発見した。服は乱れ、顔には殴られた後もある。そのせいで、口から血が出てしまっていた。
意識があることを確認して、楽な体制になるようにゆっくりと体を動かした。
「すまないね、裕哉」
「何があったんですか?」
蓮介は、呼吸を整えて、自分の身に何があったのかを話し始めた。
その話を要約すると、裕哉と二手に分かれた後、夜間に外出している学生を発見。家に帰るように補導していると、後ろから一人の男が現れ後頭部を殴られたらしい。そして、意識が徐々に薄れて今に至るそうだ。
「支部長が負けたんですか?」
「面目ないね。超能力を使えないことに動揺している隙をつかれてしまったよ」
「超能力を使えない?」
超能力を使うためには、体内に『ナスラ』と呼ばれるものがないといけない。つまり、それがなければ超能力は使えなくなる。そんなことは常識で、動揺するほどのことではない。それに、体内の『ナスラ』は超能力を使わなければなくならない。聞いた話では、支部長は超能力を使っていないので、なくなることはあり得ないのだ。
「つまり、そいつらは何かしらの方法で、超能力を使えなくさせられるということ…ですか?」
「わからない。誰に襲われたかも、覚えていないし…そうだ!確か…」
蓮介はそう言うと、ポケットから一枚の写真を取り出した。そしてそれを、裕哉に手渡した。
「これは?」
「私が意識を失う直前に、あいつらが私に何か言ってこれをポケットに入れたんだ。何を言われたかまでは、思い出せないのだが、ヒントにはなるかもしれない」
街灯もなく、写真をはっきりと見ることができなかったので、ポケットからスマホを取り出してライトをつける。そして裕哉の目に飛び込んできた、写真に写っていたものは…。
「…?!」
そこには、約一時間前の裕哉と雫の姿が写し出されていた。裕哉が、雫が狙われていることを伝えているときのものだ。
シャッター音はしなかったし、そもそも夜の暗い中でここまで鮮明に撮れるとは思えない。つまり、超能力によるもの…。それよりもだ。雫の姿がここまではっきり写っているのはまずい。
裕哉の嫌な予感は的中していた。
「"この写真をばらまかれたくなければ、以下の場所にこの女を連れてこい"?」
写真の裏側には、一つのメッセージが残されていた。これは、『マッドキラー』を探す依頼主の集団からのもので間違いいないだろう。なんとなくだが、なぜ蓮介が襲われたのかが見えてきた。
依頼主は、学生治安維持委員会に『マッドキラー』の捜索を依頼した。しかし、この写真には学生治安維持委員会に属している裕哉と、『マッドキラー』と思わしき少女が一緒に写っている。どのタイミングで、雫が『マッドキラー』であると確信したのかはわからないが、見つけたのに報告しなかったことに怒りを感じて、蓮介は襲われたのだろう。
つまり、蓮介が襲われたのも雫の正体がバレたのも、どちらも裕哉のせいということになる。
裕哉は、未来都市が運営する学生治安維持委員会のために設立された病院から来た救急車に蓮介を引き渡すと、一人帰路をたどるのだった。




