親切心の行く末に ーその1ー
裕哉が、雫と出会ってから、約一週間が経過した。その間にも、『マッドキラー』もとい雫による正義の執行が下され、約七名の超能力犯罪者が逮捕された。ただし、蓮介と裕哉の聞き込みもむなしく、なぜ雫がそんなことをしているのか、何が目的なのかなどは全く分かっていなかった。
「やはり、夜ですか」
「そうですね」
夜、未来都市『希望』は学生の外出を禁止しているため人が全くいなくなる。そのため、そのタイミングであれば、誰にも見られずに正義を執行できるというわけだ。もちろん、学生の親や大学生は外出できるが、夜の時間帯にこぞって外出する者は少ないだろう。
もちろん、それを守るのはまともな人間だけだ。ゴロツキや超能力犯罪者はそんなのお構いなしに出歩いている。そのため、皆夜は出歩かないし、その時間帯に正義が執行されるのだろう。
「一応、学生治安維持委員会達なら、申請を出せば夜間も外出できるわけですが…」
「理由が理由ですしね…受理されるかどうか…」
『マッドキラー』を追うために夜間も外出させてください…と言って、受理されるかどうか。逆に、そのおかげで犯罪者を捕まえられているのだから、調べるなとも言われるかもしれない。ならそもそもなぜ、裕哉は、聞き込みなどで調べることを禁止されていないのか…。それに、夜の街は犯罪者やゴロツキどもの巣窟と化してしまっているため、単純に危険ということもある。
受理される・されないに関しては、結局どうなるか見当もつかない。申請して、受理されたならそれでいいが、受理されずに今の活動も禁止されてしまったらと思うと…。
「ていうか今更なんですけど、何で僕たちは『マッドキラー』を追ってるんですか?」
「あぁ、そういえば言ってませんでしたね。そちらこそ、理由も知らずによく手伝ってくれましたね?」
「え?そうですね…言われたことは断れないというか、別に断る理由もないというか…」
お人好しの裕哉は、頼まれたことは何でも引き受けるという性格だった。そのため、支部長に命令されたから断らずに引き受けたのだ。
「理由は、単純明快。依頼されたんですよ、その『マッドキラー』を見つけてくれって」
「依頼?何のために?」
「さぁ?それは私には分かりませんね。依頼主は、その点に関しては何も話してはくれませんでしたから。ただ、推測するに"復讐"したいんでしょうね。おそらくは」
復讐、その言葉から連想できる依頼主は、犯罪者の仲間…。それは、蓮介も分かっているだろう。ならばなぜこの依頼を受けたのか。そもそも、学生治安維持委員会本部はこれを容認しているのか…。
「大丈夫なんですか?この依頼を受けても」
「問題ないよ。上がOKを出したんだ。でも、裕哉が嫌というならやめてもらっても構わないよ」
「いえ、受けた仕事は最後までやり通しますよ」
ここで逃げることは、裕哉にはできない。一度受けた仕事は、最後までやり切るのが裕哉のポリシーだからだ。
「ん?本部がOKを出したなら、夜間の捜索どうこうで悩む必要なくないですか??」
「…それもそうだね」
「支部長…わかってましたね?」
「…さっ、今日も聞き込みと行くよ」
「…はい」
蓮介の返答に納得がいかない裕哉であったが、とりあえず夜の捜索はできそうでよかったと安堵する。
裕哉と蓮介は、『マッドキラー』について調べるため今日も聞き込みへ街に繰り出すのであった。




