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月と太陽 ーその1-

「すみません、通してください…!!」


 人ごみをかき分ける、一人の青年の声が聞こえてきた。彼の名前は、北陽(ほくよう)裕哉(ゆうや)学生治安維持委員会(S M C)第十三区画支部に所属している、高校一年生だ。彼は今、とある事件の捜査を依頼されてこの場に来ていた。

 現場を調査している警察官に、学生治安維持委員会(S M C)であることを提示して、中に入れてもらった。


「これは…」

「おそらく『マッドキラー』の仕業です」


 テープで囲われた区画には、気絶させられているゴロツキのものと思われる血痕が飛び散っていた。既に身柄は確保されてはいるが、彼らの事情聴取はほとんど意味をなさないのは分かっている。なぜならば、皆そろってこう言うからだ。「一人の子供がやったことだ。気づいてら捕まっていた」と。

 最近この案件が、立て続けに発生している。昔から年に数件起こっていた程度だったにもかかわらず、今は週に三回のペースだ。それが、何を意味するのかは分からないが、良いことではないのは明らかだった。


「裕哉、よく来たね」

「支部長!!」


 現場には、先に派遣された学生治安維持委員会(S M C)第十三区画支部支部長の辻元(つじもと)蓮介(れんすけ)がいた。この依頼は、危険度が高いと判断されて、支部長が単独で追っていたものだ。しかし、なかなか足取りをつかめず、学生治安維持委員会(S M C)であるにも関わらず、特に仕事ももらえず暇をしていた裕哉に声がかかったというわけだ。


「実際にこの現場を見て、どう思う?」

「そうですね…」

 

 何か言わないといけないと思いつつも、言葉が出ない。


「すまない、すこし難しい聴き方だったね。私の感想としては、この件の犯人は相当な手練れだ。見てみるんだ、血痕が異様に少ないと思わないか?」


 蓮介は、周囲を指差しながらそう言った。確かに、争ったにしては血痕が少なく見えた。裕哉はそんな現場を見たこのはないため、比較することはできないが、蓮介の言うことは納得していた。

 つまり、敵は犯罪者の超能力者をいとも容易く御せる者。そんな人物を追っているのだ。裕哉の体に緊張が走った。


「怖気づいたかい?」

「いや、そんなことはありません。僕は任された仕事は、ちゃんとこなしますよ!」

「それならよかった。早速聞き込みといこう」


 裕哉と蓮介は、二手に分かれて聞きこみ調査を開始した。裕哉にとって、聞き込み調査も初めてなため、何をすればいいのかもわからずにただ周囲をあたふたするだけだった。

 気づけば、現場からすこし離れたところまで来てしまっていた。場所も市街地から外れ、人気はほとんどないようだった。


「ここは、どこだ?はぁ、やっぱり無理なのかな…」


 裕哉は、昔はわがままで、嫌なことや面倒なことは何もしたくない、そんな子供だった。

 中学生になってからはとある出来事をきっかけに、学生治安維持委員会(S M C)に入りたいと考えていたが、なかなか上手くいかず、やっとの思いで今年度の試験で合格に至る。しかし、合格できたのも運がよかったからで、受けた年の試験が簡単でなければ落ちてしまったと常日頃思っていた。

 実際に、裕哉に与えられた仕事は、街の掃除などで、別に学生治安維持委員会(S M C)でなくともよいようなものだった。


「うぅ、日光…辛い…」


 裕哉が落ち込んで歩いていると、ふとどこかから少女の声が聞こえてきた。裕哉は、聞き込みよりもまず先にその声の主を探すことを優先すべきだと考え、落ち込んだ気持ちを叩いて鼓舞し、走り出した。

 数分後、あれから声は聞こえなくなったが、聞こえる範囲から逆算すれば見つけられると思い無我夢中で走っていた。そして、声が聞こえた時すぐ側にあった一つの廃ビルにたどり着いた。


「ここか?」


 太陽が昇り、後少しで正午という時間帯だが、それでも廃ビルは暗く、一人で入るのには勇気が必要だった。それでも、もし声の主がこの中にいるのならば、一秒でも早く駆け付けたい。その一心で裕哉は中へと歩みだした。

 一階は、暗く太陽光も差し込まない。日光が辛いならば、この階層にいる可能性が高いが、なぜだかそれは違う気がした。人の気配がどんなものかもわからないが、素人目にも気配はないような気がした。

 少し歩くと、二回に続く階段を発見した。ひびが何か所か入っていたため、慎重にゆっくりと階段を昇って行く。なんとなくだが、確信を持って言えることがある。この先にいる。

 証拠もないのに謎の自信に後押されて、ついに二階に踏み込んだ裕哉の目の前には、確かに一人の少女が横たわっていた。


「大丈夫ですか…!!」


 裕哉は、迷わず少女の元まで走っていく。うつ伏せに倒れていたため、優しく体を反転させた。今は眠っているだけのようだったが、衰弱していることに間違いはなかった。

 裕哉が触れたことで、目を覚ましたのか一言ポツリと呟いた。


「うぅ…おなか…空いた…」


 意識はあるようで、裕哉はホッと一息ついた。

 少女が言ったことについては、寝言かもしれないが、衰弱していたため嘘とは思えない。しかし、好きでもないものを買ってきて、食べてくれるかは怪しいだろう。

 答えてくれるかは分からないが、とりあえず何が欲しいのか聞くことにした。


「えっと…何か食べたいものはありますか?」

「生…菜…」

「え?」

「生野菜が…食べたい…」


 少女の口から飛び出した言葉が、流石に予想していなかった言葉だったために誠志は数秒頭の中で今の言葉を復唱していた。聞き間違いではないだろう。自分から聞いて、それを持ってこないのも違うので、少女を日の光が当たらなくて比較的きれいだった場所に移動させて、裕哉は生野菜を求めて街に繰り出すのであった。

学生治安維持委員会については『超醒の救世者』を参照ください

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