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女王の目醒め ーその2ー

「お、おい…!!」


 裕哉(ゆうや)は、倒れた(しずく)を抱えてそう言った。雫は衰弱しきっており、廃ビルで出会ったときよりもひどそうだった。

 裕哉の知る限り、先ほどの戦闘で雫がやられたとは思えない。つまり、別の要因があるということだ。

 それはおそらく、雫の超能力に関係がある。裕哉はそう確信していた。学生治安維持委員会(S M C)であれば、名前から所属校や超能力について調べることができるが、裕哉はそれをしなかった。履歴から正体をばらしてしまうかもしれないと思ったし、それよりも、自分の持つ権力を使って人の一番見られたくないと思われる部分を、覗きたくなかったからだ。

 一先ず、この屋敷を抜け出して、安全な場所まで逃げないといけない。そう思い、立ち上がった瞬間。入り口の扉がゆっくりと開いた。


「やはり来たか」


 そこには、スーツの男とその部下の男がたっていた。

 裕哉を使っておびき出す。裕哉を痛めつけることで、『マッドキラー』助けにくると踏んでいたようで、実際それが当たってしまった。


「お前ら…」

「はぁ、恨むならその女を恨むんだな」


 そういうと、部下の男を置いてスーツの男は一人あの部屋へと戻っていった。次の瞬間、部下の男の攻撃を食らって裕哉のみが部屋の壁にたたきつけられた。


「くはっ…!!」


 裕哉は既に用済みなのだろう。先ほどよりも、重い一撃が裕哉の腹に突き刺さった。

 部下の男が持っている超能力は、バリアだ。つまり、この一撃は素の攻撃ということになる。この時点で、自身の超能力を上手く扱えていない裕哉に勝ち目はないだろう。それでも引くわけにはいかない。今、自分の方が危険な状況に置かれていたとしても、裕哉の頭に"逃げる"の三文字は存在しなかった。


「ほう、向かってきますか」

「…」


 今まで何も言わなかった、部下の男が口を開けたことよりも、次の攻撃をどう受け流すか。裕哉の頭には、それしか浮かんでいなかった。超能力による理不尽な攻撃でない限り、必ず道は見えてくる。諦めずに挑戦し続けて、学生治安維持委員会(S M C)に入ることができた裕哉にとって、これしきのことで、投げ出すわけがなかった。


「まったく、一人で乗り込んできたときからどうかと思いましたが、やはりあなたは頭が悪いようだ。学生治安維持委員会(あなたたち)と同じように、我々も超能力者を調べる伝手がありましてね。あなたが、超能力を扱えていないことなど分かり切っているのですよ。だから、あなたに勝機はありません」


 そう言うと、部下の男の姿が裕哉の目の前から突然消えた。瞬間、裕哉の後ろに現れ、勝負を決める一撃を繰り出した。

 しかし、その一撃は裕哉に読まれており、すんでのところで躱された。そして、今度は裕哉の一撃が部下の男の腹部に突き刺さる。その衝撃で、先ほどの裕哉と同じように、部の男下は部屋の壁にたたきつけられた。

 このとき、裕哉は無意識ではあるが超能力を使っていた。裕哉の超能力は、体内の『ナスラ』を活性化させて、それを血と共に巡らせることで、身体能力を向上させることができる。つまり、普通の一撃よりも重たい攻撃が、部下に突き刺さったのだ。突き刺さった、はずだった…。


「嘘だろ…」


 塵煙(じんえん)が舞っていて、正確な状況をとらえきれずにいたが、それでもわかる。先ほどの裕哉の攻撃に、手応えを感じられなかったのだ。

 事実、部下の男はやられていない。裕哉の拳が届く前に、一転特化のバリアを張って直撃を防ぐことに成功していた。ただし、無傷というわけでもないようだ。

 なめてかかればどうなるか、今の一撃で理解したのだろう。部下の男は、先ほどよりも早く、静かに動き始めた。無意識に使った超能力で、筋肉に無理をしたので、裕哉は動くことができない。

(まずっ…)

 裕哉は、とっさに身構える。と言っても、体が思うように動かないので、パンチに使わなかった左手で顔を守っただけだが…。

 

「はぁぁぁ!!」


 部下の男の攻撃は、雫によって防がれた。今度はバリアを張るのが間に合わなかったようで、入口の扉をぶち破って、気を失ってしまった。

 雫の様子は、前まで見たそれとはまるで違った。いつもの雫なら攻撃するときに叫びはしない。叫んだのは、そうしなければ攻撃に力を乗せられないと、直感で感じ取ったからだ。

 実際、雫の息は荒く、立っていられないのか、膝をついていた。また、手に持っていたはずの深紅の短剣は、粉々に崩れ跡形もなくなっていた。そもそも、さっきまで倒れていた雫がさらに超能力を使ったらどうなるかなんて、考えるまでもなく答えが見えているものだ。それは雫自身が一番知っているはず。それでも、その力を使って裕哉を助けたのは…。


「おいおい、どうなってるんだ?」


 部下の男が、なかなか報告に来ないことにしびれを切らしたのか、スーツの男が戻ってきていた。


「戻ってこないと思っていたが、まさかやられているとは…まぁ、いい」


 スーツの男は、怒りを見せるわけでもなく、いたって冷静に見えた。実際そうなのだろう。部下の男がやられたとしても、その次のプランがあったからだ。それは…。


「ぐああぁぁぁぁぁぁぁっ…!!!」


 スーツの男が用意したスラップバンドのようなものを雫の腕に巻き付けた瞬間だった。部屋中に、雫の悲鳴がこだました。


「さて、どうなることやら」


 雫がうずくまると同時に、スラップバンドは粉々になって砕け散った。そして、解き放たれる。雫が嫌い、封印したものが。スーツの男の毒牙によって。

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