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7.王配になるということ

「折角騎士団の視察をしたけれど、彼の腕前を見ることが出来なかったわ」


昨日の視察では、アンセルムが張り切って騎士団と手合わせしスヴェンは見学するのみだった。


「確かに百聞は一見にしかずですからね。スヴェンの優秀さを知るには直接ご覧になる方が良いかと。そうだ、剣術大会を開くのはいかがでしょう?いつも近衛騎士団の中だけで行っていますがこの際ですから全騎士団から参加者を募って実力をご覧になるのはいかがです?」


ここは執務室。この日はルーカスを呼び、クラースと共に執務に取り組んでいた。


「最近は式典などもありませんでしたから近衛騎士団は少し気が抜けてるところもありますものね。刺激になるし己の力を知る機会にもなりましょう。オークランス辺境伯に相談してみましょうか」


「承知しました」


ルーカスは今の話の内容を書き留め終えると顔を上げ、アリシアに目を向けた。真顔で書類と向き合っている彼女の様子に軽く笑みを浮かべた。



「陛下はスヴェンをお気に召したようですね」


ルーカスに言われてアリシアの心は跳ねた。


「なぜそう思ったのです?」


「スヴェンといる時の貴女は優しいお顔をされてましたよ?」


「…みんなそう思ったかしら?」


「いえ、身近にいる者しか気付かない程の僅かな違いだとは思います」


それを聞いてアリシアはふうと息を1つ吐いた。


「彼はどうお考えなのでしょう?私との結婚について、何かお話されましたか?」


「いえ、これといっては」


「あまり口数の多い方ではないのかしら?」


「そんなことはございませんが、スヴェンのいた環境を考慮致しますと女性に不慣れなのが窺えますから、陛下に対してというよりもそもそも女性と交流すること自体に戸惑っているようですね」


「そうですか」


(私が苦手というわけではないのね。騎士の皆さんとはしっかりお話していたから、てっきり私が駄目なのだと思ってしまったわ)


「陛下はスヴェンで間違いないと仰っておられましたし、もう少し陛下から働きかけてみられたらいかがですか?彼は王配と辺境伯の後継を天秤にかけてる訳ではないと思います。そもそも我々のように父親が立派な職にある高位貴族の嫡男にとっては王配になることに魅力はありません。悩むとすれば貴女の夫になることだと思いますよ。魅力的なのは貴女という存在なのです」


「ルーカス…」


(それってルーカスは私を天秤にかけなかったということかしら?)


「貴方にとっては私より宰相になることの方が魅力的だったということね」


ルーカスは自分にも当てはまる事例だったとうっかりした。


「あ、いえ、私が天秤にかけたというよりは父に逆らえませんでしたので、貴女に魅力がなかったというわけではございません」


「別にいいのよ。結果的にオークランス卿を紹介してくださいましたから。しかし本当に彼は貴方より優秀なのですか?」


「はい。士官学校同期生の中で、剣術も馬術も彼の右に出るものはいませんでした。これは今でも学生の間で語り継がれる程のものです。我々以降の卒業生で彼のことを知らぬ者はいないと言われています。ちなみに学術も優秀で、彼は私に次いだ成績だったのです」


「つまり剣術と馬術は首席で学術は次席だったということですね?」


「はい。総合すれば私は敵わないと思っております」


(それ程までに優秀なのに、彼も辺境伯夫妻もそれをひけらかすことなどなかったわ。カールグレーン侯爵なんて我が息子こそが優秀だと自慢して回ってたけど。実際ルーカスは優秀だったから嘘ではないと信じたけど、そのルーカスが敵わないという程の人物ということ?)


「それにしても、そんな優秀な彼を王配という立場に留めることは望ましいと思いますか?」


「私は、私の愛する女王陛下が至らない者の妻となることを望みません。それこそ、この者ならば納得できるという者が相手であって欲しいのです。私が唯一そう思えるのがスヴェンなのです。それに貴女もそう望んだではありませんか。私よりも優秀な男子をと」


「…それもそうですわね」


アリシアには時間がない。地盤を固め磐石な体制で国政を務めなければならない上に身を守る必要があった。当初、結婚相手は誰でも良いと考えていた。結局の所この国を治めるのは自分であり、昔から側においている家門の者たちで周りを固めている。ただ、やはり女王の伴侶となるのだ。国民が納得するような資質や人望を兼ね備えていて欲しかったし、世継ぎのことを考えれば優秀な遺伝子は欲しい。アリシアは"アリシア"の伴侶ではなく"女王"の伴侶を望んだ。恋愛は関係ない、愛は後に育めば良いと。ところがアリシアは実のところスヴェンの美しさに一目惚れしてしまった。彼に恋に落ちたのだ。ルーカスに覚られるほど顔に出ているということだ。こうなると誰でも良くはなくなった。


「明日はオークランス辺境伯夫人と街へ行かれるご予定でしたね」


「ええ。王都観光のためご案内差し上げたいと思っておりますわ。女性の少ない領地で生活している辺境伯夫人に楽しんでもらいたいのです。せっかくですので、女性同士で楽しみたいと考えてます」


「女性同士でしたら問題ないでしょうかね」


「何がです?」


「貴女はとても目立ちますので、隣に男性がいたらそれはそれは物凄い大騒ぎになります。さらに言えば、それがスヴェンだとしたら…。想像を絶します」


「…仰りたいことはわかります」


(ルーカスも苦労すると言っていたものね。彼のあの見目では普通に街を歩けないかもしれないわ)



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


作者のモチベーションに繋がりますので、よろしかったら、評価していただけると嬉しく思います。



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