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5.恋に落ちた

アリシアは私室に戻るとベッドに突っ伏した。


「聞いてない…。あんなにお美しい見目をされてるなんて反則よ」


アリシアはベッドに顔を埋めたまま、拳をベッドに叩きつけている。その様子に侍女らは驚愕したが、見なかった振りをして支度を続けた。


(まさかあのようなお方とは…。確かに優秀である者を挙げてもらっただけで、見目についての条件は挙げなかったわね。だとしたら好条件過ぎますわ。ルーカスも綺麗だけれど系統の違う『美』なのよ。ルーカスが『太陽』であれば彼は『月』。なんてことなの。とても私の好みだわ)


ベッドで悶えているアリシアの様子に、筆頭侍女のミアが声をかけ提案した。


「アリシア様、本日の晩餐に着ていかれる衣装はお気に入りのこちらでいかがでしょうか?こちらをお召しになるようでしたら髪を結い上げた方がより一層輝きになると思いますよ」


アリシアは顔を上げると、衣装を確認し許可した。その乙女を覗かせた顔に侍女らはニコニコと微笑んだ。


「ねぇ、ミア?もしかして、何か漏れてました?」


「…。アリシア様もとてもお美しいですからお二人はとてもお似合いですよ」


「///やっぱり、聞こえていたのね?」



「ああ、もう、恥ずかしい。恥ずかしいわ」と呟いているアリシアを微笑ましく見つめながら、侍女らはアリシアを磨き上げた。


◇◇◇


「お待たせしました」


3人が着席している中、アリシアが入室した。お気に入りの衣装は首元が美しく見えるデザインで、髪を結い上げたことにより首が細く長いアリシアをより一層輝かせた。晩餐が始まるとアリシアを主導に会話を始めた。


「皆さんは苦手な食材や料理はございませんか?本日は様々な物をご用意させていただきましたが、明日以降のお料理の参考にさせていただきたいのですが」


「何でもよくいただきますよ。お気遣い感謝します」


アンセルムが代表して答えた。


「明日、私は公務が立て込んでおりましてお相手ができません。旅の疲れを癒すべくどうぞごゆっくりお過ごしください。王都での滞在中は何をされる予定だったのですか?」


その言葉に、アンセルムとエメリは目配せた。王宮に到着する前はスヴェンの嫁探しをしようとしていたからだ。


「私達は日頃ヴァランデルからあまり出ません。特に妻は嫁いでからは出たことがありませんでしたし、息子においては今まで1度も出たことがありませんでした。その為、王都を観光したり文化を堪能出来たらと考えております」


「まあ、それは素敵な滞在理由ですわね。それでしたら、辺境伯夫人とのお時間も頂戴してよろしいかしら?王都の貴族女性の流行や嗜みをご案内差し上げたいと思います」


「陛下直々にですか!?光栄です。是非ご一緒させてください」


エメリのホクホク顔にアリシアは満足だった。その横にいるスヴェンを見ると、表情はずっと真顔で笑みはない。話がつまらなかったかと心配になったが、親睦を深めるべくスヴェンにも話しかけることにした。


「オークランス卿は何か興味のあることやご趣味はございますか?王都で堪能したいことなどございましたら是非ご案内差し上げたいと思います」


「…」


スヴェンは口を開きかけて止まっている。そこへアンセルムが助け船を出した。


「陛下、息子は休日も剣を振ってるような剣術馬鹿でして、趣味というものが思い浮かばなかったのだと思います」


それを聞きアリシアは納得した。


(そういえば、オークランス辺境伯になるものは将軍となるべく英才教育を受けさせてると言っていたわね)


「それでしたら、近衛騎士団を視察なさいますか?鍛え上げられた第二騎士団とは異なりますから、互いにいい影響を受けることになるでしょう」


この国には3つの騎士団が存在する。第一騎士団は近衛騎士団と呼ばれ、王宮や王族に仕える。護衛の意味合いが強く戦闘とはまた違う。また祭典などでは華やかさも求められ、貴族令息が務めることが多い。第二騎士団はヴァランデル地方のオークランス領に所属し戦闘に備えた謂わば騎士のエリートが所属する。軍隊と言ってもよい。その為第二騎士団の団長は将軍と呼ばれる。第三騎士団は自警団の役割を担い、各地方に配属され治安の悪化を防いでいる。ヴァランデルにある士官学校を卒業すると騎士を希望する者は適正も見極めた上で各騎士団に所属する。スヴェンはもちろん第二騎士団に所属しており、ルーカスは近衛に所属していたがこの度の世代交代により退団している。


近衛騎士団の視察を提案されたスヴェンはようやく口を開いた。


「はい。是非」


(低く響く、これまたなんて素敵なお声なのでしょう)


やっと聞くことになったスヴェンの声に、アリシアの胸は高鳴った。


「それでは今度見に行きましょう」


◇◇◇


翌日は話の通り、アリシアの公務が立て込んでいたため交流することはなかった。


「オークランス辺境伯らは何をしてお過ごしでしたか?」


ミアはアリシアの身支度を整えながら答えた。


「皆様、特に夫人は旅のお疲れが見られまして王宮内にてお休みになられてましたよ。辺境伯様とオークランス卿は王宮内を見学されてました。特に書庫に感動されておりまして、お二人で読書に耽っていらっしゃいましたよ?あの大きな身体からは想像できませんでした」


現将軍はアンセルムだ。大きな身体に髭を蓄えた男からは想像できないと言うのも理解できる。お二人でということはスヴェンも読書をしていたということだ。趣味を聞き出す事ができなかったアリシアは良いことを聞いたと喜んだ。


「では、夫人の体調が回復されているようでしたら3日後に街へ出掛けましょう。明日は近衛騎士団の視察をしましょうか」


「そのようにお伝えしておきます」



この10日間でスヴェンが王配に相応しい人物か最終的に見極めなければならない。婚約するためというよりは婚約イコール即刻結婚でなければならないとアリシアは考えていた。


『現時点ではスヴェン・オークランスで間違いないと思っています』


ああ言ってしまった手前、こちらから不適合を言い渡すには余程の欠点がなければ申し出にくくなってしまった。クラースの調査報告が急がれるのであった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


作者のモチベーションに繋がりますので、よろしかったら、評価していただけると嬉しく思います。



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