37.【後日譚】女王の結婚~安寧にむかって~
この日はスヴェンとヴァランデルの士官学校について議論していた。
来月の結婚式を終えるといよいよスヴェンが王配となり、王配の職務が始まるからだ。
アリシアはかねてから疑問を抱いていた件について質問をした。
「徴兵制をとる意味はあると思いますか?有事の為の徴兵制ですが、騎士を職業に選ばなかった国民の剣術は衰えているでしょう。剣術大会では騎士団間での格差も明らかになりました。これについてはどう考えますか?」
「なにも、剣術を備えるだけが戦いに必要な技能ではありません。士官学校で学ぶのは剣術や馬術だけではないからです。有事の際に生きるために必要な知識も学びます。また、一般教養も学びますので読み書き計算は出来るようになります。この事は、騎士として従事しなかった場合にも役立つ事なのです。そして、全男子国民が士官学校に通います。これは公的補助もあり、貧富に差があろうと学びの場は平等に提供されているのです。貧しい者でも学校へ通うことが出来るのです。この事から、意味は絶対にあると断言できます」
「士官学校では戦うのに必要な技能や知識だけを学ぶわけではないのですね」
「それに、この国は小国です。全国民を兵力として備えておくことは重要と考えます。自分の身、もしくは自分の家族だけでも守れるだけの力は備えておくべきなのです」
現国民は争いとは無縁で生きてきていた。それだけ平和だったのだ。そこに外部からの侵略や反乱がおきかけたということは国民の中で危機感を持つには十分なきっかけとなった。
「ブルーノの話では現在在学中の者は、これまでの態度とは全く違う姿勢で勉学に取り組んでいると言います。第一、第三騎士団らも同様です。国家の危機についてまで考えが及ばなかったとしても危うく身の危険に曝されることになった訳ですから」
国家の危機という言葉に、アリシアは王族の血筋を遺さねばならないことの史実をスヴェンに伝えねばならないと決意した。
◇◇◇
「では、この暮らしやすい環境は神の御加護があるからだということですか?」
「はい。今度ラウラ様の墓石を訪ねようと思っています。ラウラ様たっての希望で特別な場所に祀られているので今まで訪れたことはなかったのですが、史実を知った以上お会いしておくべきだと思いました」
「私も同行しても構いませんか?私の由来がヴァランデル将軍にあるというのであれば尚更です。初代女王にご挨拶させてください」
後日、自然保護区にあるラウラの墓石に向かった一行は驚いた。近年は誰も足を踏み入れていないはずのその場所は、草花が綺麗に生え揃っていて、墓石には苔の一つも生えていなかった。
「誰が手入れを……」
ガサッ
「!」
物音に反応した護衛騎士は携えている剣に手をかけたが、アリシアはそれを制した。
「ラウラ様の墓前ではやめてちょうだい。それに、身の危険を感じません」
それはスヴェンが微動だにしなかったことからも判断できることであった。
現れたのは鹿や兎、リスや狐など森の住人たちであった。
アリシアは他のものたちを残し一人で歩みを進めていくと、彼らはゆっくりとアリシアに近づきまるで騎士の誓いのように鼻先をアリシアに寄せ始めたのだ。その様子にはアリシアも感動し彼らに挨拶をした。
「今はあなたたちがラウラ様をお守りしているの?」
墓前まで来ると、アリシアは不思議な感覚に襲われた。温かく何かに包まれているような感じがしたのだ。
「なんて居心地が良いのでしょう」
アリシアは墓前で膝をつくと対話を始めた。
「ラウラ様、此度はお騒がせしました。あなたが守ろうとしたこの地を脅かす騒ぎとなってしまったこと、お詫び申し上げます。また今回、私の、そして王族の由来を知ることになりご挨拶に伺いました」
アリシアは立ち上がると側に来るようスヴェンを呼んだ。
「ラウラ様、私が伴侶に選んだ者です。国の維持、そしてこの地の安寧に勤めて参ります。温かく見守りくださいませ」
すると、ブワッと風が吹き二人を包み込むように花弁が舞った。まるで加護を与えてくれたかのような現象に二人が認められたと思えたのであった。先祖に挨拶を済ませた二人は森の住人たちにもふれあい、今後の安寧を誓ったのであった。
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