33.【後日譚】女王の結婚~王配の権利~
現在は婚約期間中で、アリシアもスヴェンも各々結婚に向けて環境を整えるために活動している。
スヴェンは領地で担当していた執務をブルーノに引き継げるように纏めたり、騎士たちの剣術指導も熱心に行っていた。
この日は王宮にスヴェンが訪問し、第一騎士団について話し合っている。
「今後は女王の管轄ではなく、王配の管轄にしたいと考えています」
「しかし、それでは君主の直属の機関ではなくなってしまうのでは?」
「そこも悩むところではありますが、統括という意味では技術も備えている貴方の方が望ましいと思います。私が貴方を夫に迎える場合においては、貴方が担当することがより良い環境となりましょう」
今までの流れを壊して良いものかと慎重なスヴェンと、時代の流れを組み刷新するべきだと考えるアリシアで意見が対立した。
「ここで王配が担当するとなれば、今後も第一騎士団に関しては王配が統括していくことになります。王配の権力が増すことになりませんか?」
「それは望ましくないですか?」
「はい、権力が増すということは、そこに魅力を感じ、また良からぬ思想の者が現れるのではということを私は危惧いたします。女王の威厳は保つ必要が、いえ、女王の威厳を守る必要があると考えます」
「……」
アリシアは熟考した。
「しかし、貴方は目の当たりにしたはずです。第一騎士団の力を。このままでは近衛としては使えません。今回の騒動、逆だったらどうなっていたことでしょう。第二騎士団が王都を狙ったとしたならば……。第一騎士団は街も女王も護れません。平和な世に胡座をかいていましたね。騎士に求むのは華やかさだけではなく、その能力です。そもそも剣術ができなければ存在する意味がありませんから」
「…、統括は致しましょう。しかしその上には女王陛下の存在があるべきです。王配は頂上ではなく、王配も女王の駒の一つであると」
「私は対等であって良いと思います。夫婦なのですもの」
「いえ、夫婦ですが対等であってはなりません。家庭内のことであればそれで良いでしょう。しかし、一国の君主と考えたらそれではなりません。例えば、王と王妃であったならば、王が絶対ではありませんか。貴族社会でもそうです。当主の妻はあくまでも妻で、当主ではないのです。その家の頂点にはありません」
男女が逆ではその状況はありえないというのがスヴェンの考えだ。だからこそ、長は長であると線引きが必要だと。
「でもそれでは貴方は軽んじられませんか?」
「そのための剣術大会の優勝では?私は誰よりも強かった。その証明をしたはずです。王配という地位を得たのは名ばかりではないと。力もある相応しい者を望むというのが陛下のお考えではありませんか?」
「そう、ですわね…」
「それに、王配だからではなく、女王陛下が私個人に任せたいと思ったからの人事であると、そう任命すればよろしいのです。毎回、君主がその時に相応しいと思うものを任命するのはいかがでしょうか?今回はたまたま、その人物が王配であったということです」
互いの考えをぶつけ合い、納得のいくまで話し合った。
「第一騎士団の統括を、他の職務と同じように相応しい人物の配属とするということですね。では、貴方がいる限り、貴方に任命してよろしいかしら?」
「はい。そのような手順でしたらお引き受けしましょう」
「この件は今度の議会で議題にいたしますね。それからもう一つ、臨時決裁権を宰相ではなく王配が持つことにしたいのですが、いかがでしょう?」
またまた大きな変革を提案してくるアリシアに、スヴェンは唖然とした。
「いかがでしょうって、それこそまた王配の権力が強まるのではないですか?」
「でも、その力を今までは宰相が持っていたことになるのですよ?王家でもないのに。王配は女王の夫です。政略的な婚姻が主でしょうが、それこそ相応しいと思う者が選ばれるでしょう。女王が自ら決定するのですから、そこには信頼もあるはずです。女王もしくは王女が対応出来ない事態が起こった場合のみの決裁権です。臨時とはいえ内容は緊急なものという縛りになるでしょう」
「これまでは宰相を担う家門が長らく受け継いできました。しかしその宰相が謀反を企てたことで信頼を失いました。だからこその改革というのは理解できます。しかし、そこは家門による職務の世襲制を廃止することで排除できる問題なのではないですか?」
「だからこそです。新任と有事までに信頼をおける関係まで築けるでしょうか?最も早くて私の出産です。でしたら、伴侶である王配が担うべきだと考えます」
「…、陛下の決裁権を代理で担うというのはやはり重責です。では、三権で担うというのはいかがでしょう?王配、宰相、貴族院の議会で一致したら裁決という流れはいかがでしょう?陛下と同じ力を臨時とはいえ備えるということがあってはならないことだったのではないでしょうか?」
「貴方という人は……。権力を持つことが出来るのに、欲のない人ですね」
「欲がないわけではありません。ですが、この国、そして女王陛下の為に尽くすことが正義だと考えています。それを外れるような案は受け入れがたいだけです」
「とても中立的で公平性のある意見ですね。では貴方の考えを採用したいと思います。こちらも次回の議会で提案したいと思います」
想像よりもずっと保守的な考えだったスヴェンだが、アリシアの意見も反映する中立的な案を提案してくれた。アリシアも女王であるにも関わらず、改革に積極的に取り組んだ。それだけ、今回の謀反は影響が大きかったと言えよう。全ては二人が作り上げる未来の国家の為だった。
「貴方に出会えて良かったわ。ルーカスに感謝しなければいけませんね」
スヴェン・オークランスを伴侶として迎えられることは、アリシアにとって幸運なことであった。
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