32.【後日譚】女王の結婚~ブルーノ・オークランス➂~
「それでは、オークランス卿が常日頃から信頼関係を築きあげてきた結果が、今回の功績に繋がったということなのですね」
アリシアは詳細を聞き終え、総括した。
「はい。権力による抑圧や行使では人の心というのは掴めません。恐怖による負の感情よりも歓喜や希望による正の感情こそが大切だと考えます」
「随分と達観しておられますね。なんとも心強いご子息ですね、オークランス辺境伯」
「はい。私もここまでとは思いませんでした。まだまだ若輩者ですからこれからさらに鍛え上げようと考えておりましたが、未来は明るいものとなるでしょう」
「ええ。これからのオークランスを期待しております」
アリシアはブルーノの考えに感心し、重要な領地であるオークランスの未来に期待した。
「ところで、オークランス卿には婚約者はいらっしゃるのですか?」
「いえ、おりません」
「では、これからお忙しくなりますね」
表彰の式典で、ブルーノ・オークランスという存在がお披露目となるだろう。地位も功績も見目にも華のあるブルーノにはたくさんの縁談が舞い込むことが予想される。これまではヴァランデル地方やオークランス領は日の目を見ることは少なかったが、女王の婚約者の出身地であることや剣術大会でもその技術を披露することになった第二騎士団の存在が、オークランスを明るく照らすことに繋がった。オークランス辺境伯の後継者が一気に婚約者候補の筆頭となることは想像に難くない。
「それに関しては、憂鬱でしかありません……」
この日もたくさんの花に囲まれて馬車に乗ることになったアンセルムは憂いた。その傍らにいるブルーノは侍女から飲み物のおかわりを貰っている。笑顔とともに礼を述べている様子のブルーノに、アリシアはスヴェンとの違いを感じた。
「オークランス卿は随分と社交的なのですね。女性にも慣れていらっしゃるようにお見受けしますが」
スヴェンと比較されての発言だろうと感じたブルーノは、自分の置かれた環境の違いを説明した。
「兄よりは慣れているかもしれませんね。私は次男ということもあり比較的自由にさせてもらってました。幼いころから叔父上に懐いていたこともあり、ヘドルンド領に遊びに行くことも多かったのです。そこには従姉妹もおりましたから、よくままごと遊びの相手をさせられたものです」
そう言い終えお茶を一口すするブルーノの様子にエメリの面影を見たアリシアは、思わず笑みを溢してしまった。
「フフ。そうでしたか。これはまたオークランス辺境伯の御苦労が目に見えますわね」
愛嬌や社交性も加わるとなるとさらに人気が出るであろう。山積みになるであろう釣書が想像できたのであった。
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