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27.覚悟は決まった

一方、闘技場ではスヴェンとルーカスが勝ち上がり、決勝へと駒を進めていた。


「これより、決勝戦を始める!選手は前に!」


スヴェンとルーカスは向かい合った。


「スヴェン、私は優勝しなければならない。しかし、当初の目的とは違う。今は正々堂々と君と向き合わせてもらう」


ルーカスは玉座にいるアリシアに目を向けた。視線の先に気付いたスヴェンは眉根を寄せた。


「ルーカス、君とアリシア様は恋仲なのか?」


ふふっとルーカスから笑みが溢れた。


「いや、ただ、私にとって彼女は唯一の太陽だ。彼女を守りたい。近くから。だから宰相を目指した。早く代替わり出来るようにとね。今は毎日側にいられる」


「ルーカス…」


「だが、そんな私の太陽には半端な伴侶などいらない。私より優れていなければ私は受け入れないぞ、スヴェン」


スヴェンは、もしアリシアがルーカスのことを思っているならば引き下がり辺境伯の後継者になることも考えた。だが、アリシアの言葉がこだまする。


『貴方の勝利しか望みません。私は貴方の勝利が欲しいのです』


アリシアはスヴェンの勝利を望んでいる。


アンセルムにも何が起ころうとお前のやるべきことは剣術大会を優勝することだと告げられた。


そして、ルーカスは剣術大会の開催が決まったときから、さらには今でさえ裏を返せばこう言っている。


『勝利し完璧な伴侶だと示せ』と。




ルーカスの視線の先ではリースベット嬢がなにやらルーカスに合図を送っている。そしてにこやかに手を振った。それを確認しルーカスは笑みを浮かべた。


「どうやら間に合ったようだ」


「間に合ったとは?」



ルーカスがスヴェンに向き直ると審判の手が上がった。


「勝負!はじめ!!」


二人は戦いを始めた。


これまでのお遊戯会とは打って変わってとても見応えのあるものだった。


「君に勝つことで私は優れていることが証明できる!学生時代には勝てなかったが、私はこれでも近衛の副団長を務めた身。努力はしてきたんだ!」


ルーカスは攻撃の手を止めない。


一進一退のようにも見えた、しかし、それは長くは続かず、二人の力の差は明らかであった。


ルーカスの額には汗が滲み出ているのに対し、スヴェンは涼しげな顔をしていた。


「これまでの試合を見ていなかったのか?君は、第二騎士団のことを全く理解していないようだ。生と死が隣り合う場での活動が求められる私たちの覚悟とそれに対する鍛練を甘く見ないでもらえるか?」


そう言うと、スヴェンは一瞬でルーカスと間合いを詰め、その瞬間、ルーカスの剣は遠くに弾かれた。一振だった。そして切先はルーカスの眉間に向けられた。


「どれだけ資質があろうとも、努力がなければ実力は伴わない。今回の剣術大会は、日々の鍛錬の差がはっきりと現れた」


ルーカスは両手を上げ、降参の意思を示した。


「君は女王のお側にいるために宰相になったと言っていたな?側で仕える臣下の一人になるはずだ。時には近衛よりも近くにいることになるだろう。騎士でなくても鍛練は怠るな。そして、私はそんな君よりも女王の近くに座る」


その言葉を聞き、ルーカスはニカッと笑った。


「覚悟は決まったようだな、スヴェン」


「え?」


「そんな牽制するな。私には婚約者がいるからな。ずいぶん待たせてしまった」


ルーカスは客席を見上げると心配そうに手を組み合わせているリースベットに手を振った。


「アリシアを守ることは私たちの総意なんだ。私たちは同士だ。案ずるな、私たちの絆は深い。無駄な嫉妬は必要ないぞ。ただ、騎士よりも近い臣下か…。そうだな。君の言葉、肝に銘じるよ」


リースベットを見つめながらそう告げると、ルーカスはリースベットの元へと駆けていった。二人は笑顔で抱き合った。

観客は盛り上がりを見せた勝負の余韻に浸りつつ、敗れた者の一つの愛を見届けた。


表彰へと移った。勝者となったスヴェンは、女王より月桂冠と一際華やいだ一輪の深紅のバラが手渡された。そして、観客らはそのバラの行方に注視した。


スヴェンはその場で跪くと、女王を見上げた。


そして女王の右手を取ると口付けた。


「女王陛下、臣下として、国のため、陛下の為に尽くすと誓います」


その行為に観客は拍手を送り、女王は深く頷いた。


しかし、それだけでは終わらなかった。


今度はアリシアの左手を取り、口付けた。


「アリシア様、私、スヴェン・オークランスは騎士の名の元に誓う。貴女を守り、貴女に仕え、貴女と生涯共にあると」


そう告げるとバラを差し出し、こう続けた。



「貴女を愛しています。私と結婚してください」



アリシアはスヴェンの手からゆっくりと慎重にバラを受けとった。



「私からもお願いします。貴方と共にありたい。私の伴侶となってください」



その光景に観客は総立ちとなり沸いた。




騎士の誓い、愛の誓い、そして恋慕の花の風習は、廃れることなくこの先も語り継がれることとなった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


作者のモチベーションに繋がりますので、よろしかったら、評価していただけると嬉しく思います。



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