25.まるでお遊戯会
「何を見させられてるのです?」
時を同じくしてアリシアもまた試合にぼやいていた。
「これではまるでお遊戯会ですね…」
「普段の騎士団の鍛練の方が見応えありますわよね?」
クラースもまた飽き始めていた。そこへ護衛騎士を交代すると一人の騎士がやって来た。
「交代?持ち場を予定もなく変わることは通常しないが?」
この日はエリアスが担当していたが、エリアスも寝耳に水だったようだ。
「この通りの試合の状況ですので、実力者でありますエリアス様に出場をお願いしたいと指示がありまして…」
「え!?だったらもっと真剣に鍛練しておくべきだったなぁ」
頭をガシガシとかきながらこの日までの行いを悔いていた。そして交代しようとした時、アリシアはエリアスを制止した。
「お待ちになって、エリアス。そこの貴方、第一騎士団に入って間もないのではなくて?貴方に指示したのはどなた?」
アリシアが名前を覚えてないような騎士が護衛に代わると言う。アリシアは不審に思った。
「団長です」
「そう。では確認をします。アロルドを呼んできなさい。エリアスはここで待機を」
「あ、はい」
しばらくしてアロルドがやってきた。
「陛下、いかがなさいましたか?」
「エリアスとそこの騎士の交代を命じたのは貴方ですか?」
「はい。このペータルの枠でエリアスを出場させるために交代するようにと」
「出場者は事前に提出しています。残った人員で適材適所に振り分けたはずです。この変更は貴方の提案ですか?」
「はい。さすがにこの様では観覧者に申し訳ないと、志願者枠を設けていたのは第一と第三騎士団だけでしたので、実力を鑑みてエリアスが相応しいかと」
「第三騎士団からも交代者を出しているのですか?」
「そちらは確認が取れてはおりませんが…」
「そもそも城内での催しです。主催は私なのですよ?勝手に変えてもらっては困ります。ここにいるのは騎士だけではないのですよ?外部から民を招待しているのです。安全に実施するには計画にないことをするのは間違っているとは思いませんか?団長である貴方の行動としては相応しくありませんね」
「はい。失礼しました」
「おやおや?何か問題が起こりましたかな?」
そこにアーロン・カールグレーンが従者を携え現れた。
「あら、侯爵。貴方がここに上がる権利はもうありませんが?外部の方は口を挟まないでいただきたい」
「外部とは失礼ですね。これでも30年ほど宰相を務めた身です。さらに申し上げれば現宰相は私の息子ですから」
「良く言えば更迭ですが、私は貴方のことを罷免したつもりですから外部に違いはありません」
「ぐっ!」
大勢の前で宰相の変更についてはアーロンが罷免されたと披露され、アーロンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「それで?貴方はここに何をしに来たのです?ルーカスの第二試合はまだ先になりそうですよ?」
「いやぁ、陛下の元に人が集まっておりましたから何事かと思いましてね」
「貴方には関係のないことですわ・・・、いえ、関係あるかしら?」
その返答にアーロンは鼻をひくつかせ、続きを促した。
「とてもつまらない試合だとは思いませんか?私はまるでお遊戯会のようだと思ってしまいました」
はあ、やれやれと大袈裟にため息をついたアリシアに、アーロンは拍子抜けした。
「は?」
「ですから、つまらない試合でしょう?第一騎士団の鍛練の様子の方がまだ見応えがあるというものですわ」
「そ、それが何か?」
「ええ、ですから、この状態をどうにかしたいのだと相談を受けた所です」
そしてアリシアがアロルドに目を向けるとアロルドは肯定した。
「ですが、私としては事前に申請された者以外を出場させる気はありません。アロルド、本日の私の護衛騎士はエリアスです。よろしいですね?」
「はい」
「では持ち場に戻りなさい」
アロルドはペータルと共に闘技場へと戻っていった。
「お騒がせしましたわ、侯爵。お目汚しな試合もあるようですが、試合も消化されてきました。あら、次はルーカスが出ますわよ。お席でご覧になったらいかがですか?」
「ええ、そうすることにしましょう」
アーロンは従者に「来い!」と声をかけアリシアから離れていった。
アーロンと距離が出来たことで、アリシアはエリアスに声をかけた。
「エリアス、私はここから動くことはありません。本日の護衛騎士は貴方だと言いましたが私の駒となり動いてください」
「いやしかし陛下?」
「クラースに側を離れないように言ってますので私が一人になることはありません。貴方はアロルドの動きを追ってください」
「団長の?」
「反旗を翻す動きが見られれば拘束を。そしてこのことは内密に進めなさい」
「かしこまりました」
エリアスは少し離れた場所に立ち一度護衛の位置につくと、頃合いを見図り任務へとついた。
「彼を行かせてよろしかったのですか?」
「ええ。エリアスは私に忠誠があります。彼は問題ないでしょう。それに、ベロニウス侯爵家の護衛騎士が私を護衛対象に入れているようですし」
やや離れた位置にいるリースベットを護るように位置している護衛騎士が、ペータルが近づいてきた時に警戒をみせた。この日何かが起こることをリースベットも知っているのだ。
「おそらく利用されているだけで、彼女自身に利はないのかもしれません」
疎遠であったがそれまでは姉妹のように仲が良かった。そんな彼女が敢えて距離を取っていたのだとしたら…。この日の挨拶ではその想いが垣間見えた。
(私は貴女のことも大切です。もし私に何かあれば、リースベットが背負うことになるのですから)
◇◇◇
「おい!連絡はまだないのか。女王にも大きく動きがないじゃないか」
「直に第一報があるかと思うのですが…」
アーロン・カールグレーンは落ち着きのない様子で苛立ちを隠せずにいた。
「女王の間合いに誰も配置できてないではないか。何をやってるんだあいつは」
アロルドによる護衛の交代は策略の一つだったのだろう。
「ルーカス様が出場者となっては他に人員が不足しているのは否めません」
「それに、なんたる体たらく。女王も言っていたがまるでお遊戯会じゃないか。こちらに人員を確保していたんではないのか?」
「第二騎士団の実力が浮き彫りになった形ですね…」
ここまで勝ち残っているものは第二騎士団員が半数以上で、力の差は歴然と言って良いものであった。資質の問題か、はたまた鍛練の賜物か。もしくはみる目がなかった可能性も否めない。
「一報が入り次第実行だ。もう後戻りは出来んからな」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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