24.アンセルムが見たもの
「エメリに渡すとはな。あれでは注目を浴びて敵わんな」
アンセルムはやれやれといった様子だった。
「すみません父上。勝手なことをして。しかし、まだ、私と陛下の関係を知らしめるのはいかがなものかというのと、こんな小さな勝利を捧げるのは失礼ではないのかというのと、私で本当に良いのかと…」
「まだ何か悩むことがあるのか?」
アンセルムからすれば想い合っているのは明らかであった。何か障害になっていることなどあっただろうか?
「多少周りが騒がしくなるかもしれんが、お前の気持ちを優先してくれて構わないし、お前が一番相応しい騎士だと思うがな」
アリシアを護る、その目的を考えるとこれ以上相応しい護衛騎士はいないだろう。そう思わせるためにはやはり、この大会での優勝が必須条件だ。
「陛下は生涯のパートナーをお探しだ。お立場を考えても半端な相手は望んでおられない。お前を候補であると挙げてもらった以上、お前も覚悟を持つんだ」
アンセルムの言うことは最もだった。そもそも自分はこの国の貴族だ。女王が望むのであればそれに従い尽くす身だ。そして彼女に対して思う気持ちはそれだけではない。恋に落ちて惹かれているのだ。相応しいのは誰よりも自分だと示す為にやはりこの大会は負けるわけにはいかなかった。
この先の試合はなんともいえないものであった。2戦と3戦があっさり終わってしまったこともあり、見応えのあった試合は初戦のみ。第二騎士団の実力がありすぎて、順当に勝ち上がるのは第二騎士たちと、もちろんルーカスとスヴェンであった。そして、同じ騎士団同士の戦いは力が拮抗しているため見ていられるものの、盛り上がりに欠けた。今行われている試合なんかはまるでお遊戯会のようであった。
「何を見させられてるんだ?勝つ気があるのか?」
アンセルムは白けた目を向けた。
それは観客たちも同様で、これが国を代表する騎士たちの剣術なのかと呆れた様子であった。
「で?指示を出してるのはあいつか?」
柱の影に立つ第三騎士団の団長オロフは試合にも目を向けていたが、時々アーロン・カールグレーンにも目を向けていた。時間の調節をしていたのだろう。彼らが待っているのはおそらくオークランスの陥落という名の吉報だ。
「勝利したとして、そんなに早く仕留められると考えていたのか?馬鹿なヤツめ」
力のあるものたちをオークランスに向かわせたのだろう。だからこそ剣術大会がお粗末なものになっている。
「まだ、俺が選出した第二騎士たちの方が優秀じゃないか…。ん?」
アンセルムがぼやいていると、アーロンに動きがあった。
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