17.王の血をひく者
一緒に夜空を見たあの日から数日が経っているが、あれ以降アリシアが公務に勤しんでいるため二人の時間が設けられることがなかった。
(食事も共には出来ていないが、こんなに忙しいのは通常のことなのだろうか?)
「ご公務って忙しいのねぇ。陛下はその合間に時間を作ってくださっていたのね」
二人で夕食を摂っていると、エメリもスヴェンと同じことを考えていたようだった。
「そうですね」
「無理もないわよね。今や王家はアリシア様お一人だし、王族だっていないものね」
「王族がいないのですか?王の血筋をひくものはいないのですか?」
スヴェンの疑問にエメリは首を傾げた。
「あら?あ、そうね。スヴェンには王都に関することすらお話してこなかったものね。厳密に言えばいらっしゃるのよ。先々代の女王陛下には王妹殿下がいらっしゃったのよ。この国の王家は特殊でね、なぜか女性しかお生まれにならないの。そのため国王は女性よ。だからなのかしら?結婚が晩婚になりやすいしお忙しいから妊娠出産の機会が少なくなってしまうのね。いつもお子さまはお一人やお二人くらいなの。そうなると、直系しかいない代もありますわ。そしてね、第二王女殿下以降は未婚のままでいらっしゃることがほとんどなの」
「どちらかに輿入れされないのですか?」
「王家の血筋の女性よ?女性しか産まない可能性が高すぎるのよ。基本的に男尊女卑の貴族社会において男子を産まないとわかっている女性は敬遠されてもおかしくないでしょ?」
「確かに、そうですね…」
「だから国王にならなかった王女殿下は生涯王家を支えて終えることが常なのよ。話が逸れたけど戻すわね。そんな中、先々代の王妹殿下はご結婚をされたの」
「え?それはどなたと?」
「ベロニウス侯爵様よ」
「ベロニウス侯爵…、それは有名なお話なのですか?」
「ええ。有名なロマンスですから。当時では、いえ今でもですけど珍しく恋愛結婚でいらしたのよ。女性の間では語り継がれています」
「ということは、現ベロニウス侯爵家の当主は女性ですか?」
「いいえ。ベロニウス侯爵はまだご存命で現役なの。でも嫡子だったご令嬢はお亡くなりになっていて、嫡孫がご令嬢なはずですわ」
それを聞くや否やスヴェンはさらに頭を悩ませることになった。なぜならルーカスの婚約者であるリースベット嬢は、ベロニウス侯爵家の令嬢だからだ。エメリの話が本当であれば、リースベット嬢は王族の血をひき、ルーカスと結婚すれば宰相を生業としているカールグレーンに男子が産まれなくなる可能性がある。いや、ルーカスには妹がいる。妹が嫡子となりルーカスがベロニウス侯爵家に婿入れする形の婚約なのだろうか。しかし男子がいるにも関わらず女子が家督を継ぐことはまずない。特に宰相を女子が務めることは考えられなかった。すでにルーカスが宰相を継ぎ務めている以上、爵位も職務も妹の跡継ぎに継がせるには無理がある。そして、ルーカスが宰相の職と共にベロニウスに入ったとしても跡継ぎに男子が存在しない可能性が高い。
(一体、何を考えている?ルーカス、いやカールグレーン侯爵の方か?)
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