16.勝ちを捧げるってことだろ
王宮に来て10日が経ち剣術大会まで10日となったこの日、スヴェンはエリアスに依頼し剣術の鍛練に励んだ。
(こんなに剣を握らなかったのは初めてだ。感覚を取り戻さないと…)
「いやぁ、さすがだな。一振が重いよ」
エリアスは汗を拭いつつ手に感じた痺れを取り払うように腕を降った。
「エリアスはなかなか筋が良いが、今回の大会は参加しないんだな?」
「まぁな。スヴェンが出るんじゃ優勝はまず出来ないだろうし、そもそも上位4人に入れなかったしなぁ」
「上位4人?」
「ああ。全騎士団合同の剣術大会だからな。各騎士団の威信もかかってるし実力者を出そうってことで、近衛騎士団は抜き打ちで試験をしたんだ。その結果上位4人と志願者を参加者に登録することになってさ、そうなってくると4人っていうのは実力的に隊長が選ばれたってことよ」
「そうか」
「そういえばルーカスも出るらしいな」
「え?あいつも?」
「ああ。志願者枠って訳じゃないけどさ、参加させてくれって陛下に直談判したらしいぜ。あいつついこの間まで近衛の副団長だったし」
(直談判?陛下の命があればなんて言ってたのに?)
「なあ、急な剣術大会ってお前の王都視察と何か関係あるのか?」
「何だ?急に」
「優勝者には報奨があるだろう?優勝候補の筆頭はお前だし、何か欲しいものでもあるのか?」
「いや、特にはないが?」
「そりゃそうだよな。辺境伯嫡男だし、次期将軍とまで言われてるだろ?地位も名誉も十分だ」
(本当にそうだろうか?今は彼女の横に立つのに相応しいという十分な証明が欲しい…)
「それにお前が王都に来たのって婚約者候補に会うためだったっけ?その割にはいつも王宮にいるような…?」
「母に止められたんだ。街には出ないようにと」
「え?」
「花でいっぱいになってしまうから…」
「…ああ、なるほど…。大変だな、それはそれで」
羨ましむではなく、同情の眼差しだった。
「あっ!ってことは何人かは恋人を失うことになりそうだな…」
「?」
「剣術大会は一般公開されるし、っていっても身内や関係者が入場対象だけど、一勝でもして勝ちを恋人や妻に捧げるだろう?お前がいたら心奪われるに決まってるじゃん。ルーカスもそんな感じだったけどアイツは令嬢の扱い慣れてるし、ちゃんと令嬢らも憧れで終われるけどよ。あっ!この大会で婚約者候補を探すってことか?それならお前が街に出る必要ないもんな」
「まあ、…似たようなものか」
なーんだそっかぁとエリアスはすっきりしたようだった。
(勝ちを捧げる、か…)
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