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15.適材適所で幸せですというお話

数日後、アリシアはエメリと観劇した。題材は『恋慕の花』。主人公は記憶障害のため思い出が作れない令嬢。ある日出会った手負いの騎士を助けたところ二人は恋に落ちるが、翌日にはそのことを主人公は忘れてしまう。主人公の病を知った騎士は何度もはじめましてをやり直し二人は何度も恋をする。そしていつしかそれは儀式となり、出会うとすぐに花を差し出し貴女をお慕いしていますと告げられることで騎士に恋するところから毎日が始まるようになるのだ。



「感動しましたわ!でも、毎日が幸せそうでそれでも切なさもあって、久しぶりの演劇はとても楽しめました」


「『恋慕の花』を題材にした劇は何種類も脚本があるんです。今回のものも良かったと思います。エメリ様にお楽しみいただけて良かったです」


観劇が終わると二人はティータイムを楽しみつつ、感想を言い合った。



「あの、つかぬことをお伺いしますが、エメリ様はオークランス辺境伯とどのようにお知り合いになったのですか?」


紅茶を口にしていたエメリはカップを置いた。


「あら、私たちの馴れ初めですか?政略結婚ですわ」


仲の良さから恋愛結婚だと思っていたアリシアは驚いた。


「政略ですか。ではご両親が取決めに?」


「はい。わたくし、初めはオークランスに嫁ぐことだけは避けたいと思っていましたの。私はヴァランデル地方に隣接する領地を持つヘドルンド伯爵の長女でした。下に妹があと3人おりまして4人姉妹でしたの。父は長子である私をとりあえず嫡子として育ててはいましたが、娘を嫁がせることが親の務めと思っている人でしたので残った一人が継げば良いとか、まだまだ男子を授かる可能性にもかけていたようでしたわね。当時ヘドルンドの治安は最悪でした。治安というよりは秩序ですわね。女性を求めたヴァランデルの男たちがよく訪れていたのです。絆された女性が予期せぬ妊娠に悩みを抱える事案が多数あり、遊女で生計を立てるものまで現れました。事態を重くみた父はオークランス領の実態を把握すると助けを求めたのです。ヴァランデルに隣接するヘドルンドでこの状態ですから、ヴァランデル内にあるオークランスはもっと状態が悪いかと思われたのですが逆だったんです。将軍が当主であるオークランスでは治安の悪化は防げていたのです。ちょうど年頃になるアンセルム様がいましたから、歳の近い私か次女のどちらかと婚約しないかと話を持ちかけたのです。オークランスは代々嫁の獲得に悩んでいましたから先代辺境伯はこの縁談に了承してくださいました。そして、妹を婚約者にと指名されました」


「エメリ様ではなかったのですか!?」


「はい。ですが、この話には続きがあるのです」


また紅茶を一口すすり潤すと、エメリは続きを話し始めた。


「妹は泣いて嫌がりました。治安が悪くないと判明してもオークランスは女性が少なく娯楽も少なくて閉鎖的でしたから。そして後日指名が私に変わったのです。先代辺境伯が妹を指名した理由は私は長女だからヘドルンドの嫡子だろうと配慮してくださったからだったのです。先程も申しましたように父は必ず長子が嫡子にとは考えてはおりませんでしたから最終的に婚約者は私になったのです。こうして私はオークランスに嫁ぎましたが、夫となる人にお会いして驚愕しましたわ。彼はとても素敵な人だったんです。今はあんなに熊のような大男ですが、当時は今のスヴェンにそっくりでしたのよ?すぐに好きになってしまいました。今となってはオークランスに嫁いで良かったと思っておりますわ。私も単純ですわね。それに実は後にアンセルム様が教えてくれたのですが、どちらかで私を見かけて一目惚れしていたそうなのですよ。縁談の絵姿を見て大層驚いて、もらい受けるなら姉の方が良いとすぐに了承したと言っていましたわ」


政略結婚と言っていたが、これはちゃんとした恋物語だった。


「オークランス辺境伯は今も十分素敵だと思いますよ。それで、ヘドルンドはどうなったのですか?」


「私たちの結婚の誓約により、先代辺境伯が策を講じてくださいました。ヘドルンドは次女が嫡子となり婿を迎えました。お相手は当時第二騎士団で隊長を務めていたカール様です。カール様は平民出身ながらも隊長になられた実力者です。ヘドルンド伯爵の当主は次女が継ぐわけですから、カール様は騎士として第二騎士団に所属し続けました。騎士団の隊長がいる領地で女遊びに繰り出そうと考える者は減り、ヘドルンドの秩序は回復いたしました。カール様も貴族籍を得ることが出来ましたので、騎士らへの威厳を保つことにも成功しました。互いに利益を生む縁談を先代辺境伯が取決めになってくださったのですわ」


「そうでしたか」


「お話が長くなってしまいましたね。ですが、今は皆幸せですというお話ですわ」


エメリはにっこりと微笑むとまた一口菓子を頬張った。そんな幸せそうなエメリを見てアリシアは悩んでしまった。


威厳のある当主が存在することで治安と秩序が守られている2つの領地。第二騎士団の将軍と隊長がいるということだけで十分な効果を発揮している。そんなオークランスの優秀な跡継ぎであるスヴェンをアリシアが迎えてしまって良いものか?エメリの話で政略結婚でも恋もするし愛も育つと知ることが出来て嬉しかったが、適材適所というものがある。もはや、当初とは違いスヴェンとの婚約は女王としてではなくアリシアとして望ましく思っていて、国の為を思えば彼を女王の婚約者として選ぶべきではないのかもしれないと考え始めるのであった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


作者のモチベーションに繋がりますので、よろしかったら、評価していただけると嬉しく思います。



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