6 ナイトとの出会い
そんなこんなで、キラキラ石は50個ほど運び終わった。
糸もせっせと結んで、なんとか長い一本にしたものをすでに18本作製。
(糸の撚り方?知らないよ!結ぶしかできないし!泣ける!!)
今私は、カラスと私が食べ尽くした殻を、全部糸にして、ひたすらキラキラ石に巻き付けている。
もくもく、もくもく。
――と、急に影が落ちた。
(え……?)
何気なく顔を上げた私は、そのまま盛大に叫んだ。
「ぎゃああああああああああ!!!!!」
いや、叫ぶでしょ!?だって、物語の中にしかいないハーピーみたいなのが空から降りてきたんだよ!!
しかも、こっちめがけて直滑降で!!
そして、それが「カラスとの再会」だった。
「おー!コハル、起きてるのか!」
ばさっと地面に着地したハーピー(仮)は、なぜかめちゃくちゃ日本語が上手だった。
日本語?てか魔物??
と混乱してたら、声も出てたらしい。
話を聞くと、元はただの地球のカラスだった。
「お前と一緒に、鳥居くぐったんだよな!俺!」
と言いながら、にっかにかの笑顔。
顔をよく見ると――
アーモンド型の黒い瞳、艶のある黒髪、翼のような手。
嘴はもうないけど、足は鳥っぽさを残して太めで、鍵爪も健在。
それでいて、やたら肌が白く、しかも顔がなぜかイケメン寄り。
(いや、それより……)
「ちょ、ちょっと!近いんだけど!!」
「え、いいだろ?仲良しだし?」
すぐ顔を寄せてきて、頭を私の肩に乗せようとしてくる。
いや、距離感!!バグってる!!!
戸惑いながらも、私は聞いてみた。
「ていうか、なんで私の名前知ってるの?」
するとハーピー(仮)は、ちょっと得意げに言った。
「女の親が呼んでるの聞いた。コハル、って。間違いない!」
(……あー、現代での話か)
思い出す。たしかに、散歩中に何度かカラスを見た。 その時、母が私を呼ぶ声を、あいつは聞いていたんだ。
「なんでそんなに私に懐いてんの?」とさらに聞くと、
ハーピー(仮)はちょっと拗ねた顔で言った。
「……だって、お前、俺助けてくれたじゃん」
え?と首を傾げると、彼は続けた。
「ほら、ゴミの網に絡まって、首しまりそうになってたとき……助けてくれただろ?」
(ああーーー!!!)
思い出した。 ゴミ集積所で、網に引っかかってもがいてたカラスを、私が縄を切って助けたんだった。
「……あー、あんときのゴミカラス?」
「ゴミ言うな!あれからゴミは漁ってない!!」
怒ってるけど、なんか可愛い。
さらに彼は、ねちねち続ける。
「あの後も、何回もお前んとこ行ったのに、無視されまくった……」
「え、知らん……」
「散歩のときもついていったのに、気づかねぇし……」
ええー……ストーカーみたいじゃん。思わずそう言うと、「違う!護衛だ!」と真剣な顔。さて、そんな彼に、私は当然聞いた。
「名前は?」
すると、彼はきょとんとしてから言った。
「ない」
(ない……まあ、カラスだもんね……)
最初は「困る!」って思ったけど、よく考えたら、そりゃ野生のカラスに名前なんかないか、って妙に納得してしまった。じゃあ、こっちでつけるしかない。
「うーん、護衛してくれてるし、守ってくれてるし……ナイト、みたいな?」
ぽつりと言ったその瞬間――
「ナイト!?俺ナイト!?ナイト!!」
めっちゃ嬉しそうに連呼するハーピー(仮)。
(いや、まだ『みたいな』って言っただけ……)
でも、あまりに嬉しそうだから、それ以上訂正できなかった。
「……うん、ナイト…が似合ってるんじゃないかなー」
ナイトは、羽根をばさばさ動かして、子犬みたいに喜んでいた。
その後、ナイトは喋れるのがうれしいのか、自分の変化について、ずぅーと語ってくれた。
「山が高すぎて飛びにくいから、しゃーなしで歩いてたんだよ。そしたら足が太くなってきて、羽根で実をいじってたら手っぽくなって、飛べねぇ!ってバタついたら背中に羽根がもう一対生えた!」
楽しそうすぎるだろ、お前。
しかも、こうも言う。
「実を食って、水を飲むと、体が変わる!考えることも増えた!」
(それ、めっちゃ重要じゃん……)
異世界といえば、魔法、聖女、勇者、世界樹、魔石、聖水、知恵の実――。
それに、人間は「手」を使って進化したってどこかで聞いた。
知恵の実で進化が促され、聖水で状態異常(進化前)を治す……?
それって――
「……実が知恵の実、水が聖水だね」
ぽつりと口にすると、ナイトはまたもやじぃっと私を見て、にこーっと笑った。
「コハル、やっぱかしこいなぁ~~」
「べ、別に普通だし!!!」
(ちょっとだけ嬉しい)
そんなわけで、私は今日から、 超なつっこいナイトと一緒に暮らすことになった。
「なぁ、コハル、もっと近く行っていいか?」
「だから近いって言ってるでしょー!!」
「えへへ~~~」
ぎゅっ。
ナイトは、またもや私を羽根で包み込む。
……なんか、
「まぁ……いっか」
って気持ちになるのが、不思議だった。
甘える相手ができるって、やっぱり嬉しい。
こんな異世界でも、世界はちゃんと、あったかいんだなぁ。




