第六話 やっとひとつになれる
「......た、陽太!」
名前を呼ぶ声に目を覚ます。
何があったかを思い出すように、目を擦った。
「......もうすぐ夜明けだよ」
上体を起こして見上げると、空は蒼くなり始めていた。
そっと目の前に誠の手を差し伸べられた。
「終わりにいこう」
俺は誠に手を握り、助けられるようにして立ち上がった。
そして俺たちは、ゆっくりと歩き始めた。
手を強く繋いで、離さないように。
「やっぱりさ、どんな時でも綺麗な景色の中で消えたいよね〜」
誠の声や手が、微かに震えているのがわかった。
「だからこの時間に起こしたのか?」
「えへへ、なんでわかったの〜?」
甘えるような声で、無邪気に笑った。
蒼い空に、薄っすらと日が灯り始める。
「......なんで、僕を責めないの?」
いっときの沈黙の後、誠が訊いて来た。
「何言ってるんだ誠、君は何も悪くないじゃないか」
一瞬、繋いだ手に力が込められた。
砂浜と海が見えてきた。
「......手紙、読んでくれたんだね......」
「......俺がもっと早く、あそこから連れ出せばよかったのに」
後悔してもし切れない、取り返しのつかないことが起こってしまったのだ。
それは、
「”僕が君を置いて死んだこと”の方が、余程重罪だ」
もう、最初から分かりきっていたことだったのに、その言葉は酷く心を打った。
「ごめんね、僕がもっと勇気を出して言っていたら、こんなことには、ならなかった......!」
朝日が、誠の姿を溶かしながら映していた。
大粒の涙がこぼれ落ち、キラキラと光を反射する。
俺は誠のことを、強く抱きしめた。
冷たくて、もう温もりさえも感じられない。
「もう何も我慢しなくていい。
全部、俺が受け止めるから......」
そう言って、優しく頭を撫でた。
「あぁ、ずっと、怖かったんだ、
よう、たに知られる、っことも、、ぅぅ」
誠は、大きな泣き声を上げながら、本音を告白した。
「っ陽太を、残してっ死ぬなんて、ほん、とは嫌だった、でもっ、もう、限界でっ」
胸の奥にしまった沢山の思いを、誠は思い切りぶちまけた。
それを優しく包み込むかのように、彼の体を抱いた。
スマホの通知音が、何回も鳴り響く。
「ごめんなさい、っごめんなさい......!」
必死に叫ぶ誠を段々と見ていられなくなってくる。
「いい、もう、大丈夫だから......!」
その言葉に、誠は目を見開いて俺を見た。
彼は満面の笑顔を顔に浮かべた。
そして俺は、煩わしくなったスマホの通知音を、思い切り海に放り投げた。
「もう、こんなの終わらせよう。辛い過去なんて、もう何処にもない」
「うんっ......!!」
待ちわびた言葉に、彼は声を弾ませた。
崖の上、お互いの顔に手を当てる。
「ありがとう、陽太。僕をあの地獄から、連れ出してくれて」
ずっと待ち望んでいた時が、やってくるんだ。
「俺は誠となら、どこへだって行けるよ」
「もう絶対、離さないでね」
太陽の光は澄み、俺たちを迎え入れていた。
「もちろん、これからはずっと一緒だ」
お互いに顔を見て笑い合った。
そして、
ゆっくりと光に飛び込こむと、
永遠を誓った。
エピローグ
陽太、君に伝えないといけない事がある。
僕は父親から虐待されてた。
あと、
君と過ごした時間は宝物だよ。
君に救われて、
生きる意味を見つけた。
ごめんね
ありがとう
さようなら
愛してる。
M
ここまで読んでくださった方々へ。
ありがとうございました。
誠と陽太は無事に幸せになることが出来たのでしょうか。
この物語を書いている時にふと思った事なんですが、死を都合よく解釈するのってやっぱり生者の特権なんだな、と。
何言ってるんだって感じですが、深夜二時の寝ぼけ脳で考えたことなため、ほぼ独り言です。言いたかっただけなんです。
そんなことを考えながら書いたのが、この物語でした。
物語について書くつもりが、全然関係ないことばかり書いてしまいました。
「死に至る恋病」シリーズ、あと何作か書いていこうかなと考えておりますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
誠と陽太の前日譚も書こうかな。
少々長くなってしまいましたが、またいつか会いましょう。
さようなら!




