哀戦士
その間に「黒子ちゃん」で書いたスーパーのレジ係の吉田さんに激はわしたり、どうもはわ気症な僕でした。これは元奥さんにも当てはまるんだけど、やっぱり僕は150センチくらいの身重がベストはわわだ。カワウソちゃんのが、顔はかわいい。でもちょっと不細工なくらいだったら、僕は全身の雰囲気を選ぶのである。
ある日僕はカワウソちゃんに聞いてみた。「僕明後日○○○って部署なんすけど、どこっすか?」「あー○○○はあしょこお。れも、なにしゅゆんらろ?(ああ○○○はあそこ。でも、何するんだろ?)」
彼女が指差す先には田舎アヴリルが居た。田舎アヴリルはそのツンと張ったバストと共にツンと鼻っ柱を上に向け、そこから品定めするみたいに僕を見てくる。見てるのは僕だけど。そこに爽やかイケメンインド野郎が絡んで、遠目からもイチャつき加減が目に余る。「旅行がどうやら…」ラインかなんかでやれよ。ようし、機は熟した。僕が成敗してやる。待ってろよ。
「ふたばしゃあん、今日はべちゅの仕事してもあうかもしえましぇん。あっちのお部屋で」「はわわ」
お部屋
すべてわかった。カワウソちゃんは、その生まれ持ったかわゆさで、純粋培養された天然ぶりっ子だ。ふつう責任者として派遣さんに指示する時「お部屋」ってワードは出て来ない。元奥さんが同じ立場なら「双葉さん、今日は別の仕事シてもらいます。あっちの部屋で」と言うだろうし、その方が一般的だ。
しかし彼女のその自然な媚態からは1ミリの嫌味も感じない。蒲鉾みたいに板に付いている。彼女を射止めて3子を設けた旦那は幸せ者だ。けれどもやっぱりあの険しい表情を、旦那には向けるんだろうか?それでも十分彼女はかわいい。
「ふたばしゃんしゅいましぇん。お昼2時からでいいでしゅか?わたしたちは先にイッちゃうんれすけど、ここ2時までしか使えないんれ」「はわわ。大丈夫です。イッちゃってください」
僕はターボをかけた。黙々と、彼女が昼休みから戻るまでにキリ良く終わらせよう。
ガッチャンコ、ガッチャンコ。
1時間後、彼女が顔を見せた。
「あ、ちょうろ(あ、丁度)」
「はわわ(はい)、ギリで積み上がっちゃいました」
僕が積み上げた製品を運ぼうとする彼女。高く積みすぎたが為に、崩れ落ちる。刹那、あの、あっ、諦め、その笑顔。
「はわわ」
「はわわ」
「はわはわわ」
「はわはわはわわ」
それから僕は彼女とふたり、崩れないように押さえて製品を運んだ。
幸せな時間だった。