嘘、偽り
「飽きた」
ただそれだけが口癖で
この世を憂い続けてきた
お金も地位も信頼も
そして何よりも「愛」もこの手の中にある
無駄な世間話
余計なお節介
見え透いた嘘
建前上の接待
普遍的な恋慕
薄っぺらい友情
媚びを売る敗者
全部、全部、僕が考え得るパターンの範疇の人間共しかいない
超えるものなど存在しない新規性を失った世界
愚鈍な人間共を創って神は何が楽しいのか
手の内にいる転がしても僕は何も楽しいと思わない
一つ成長したとて、僕からすればまた無様になったようにしか見えない
あれも、これも、下位互換
生きていて楽しいのか?
あぁ、何も知らないから楽しいのか
朝に日は登り、夜に沈む
僕の人生は永遠に夜だ
今日が来て知っていることの再確認
明日が来て知っていることの再確認
そして明明後日が来てーー
ループしている世界だと言ってくれた方がまだ良い
生きる意味などとうの昔に消え失せ
幾度となく繰り返される事象をぼんやりと見届けているだけの存在
朝は決まってご飯、焼き魚、味噌汁、納豆
昼は……? 夜は……? 何か食べていただろうか
会話は単調
機嫌は凪
今日も、なにも、ない
「ここで飛び降りたら死ねるのに」
「ここで吊れば死ねるのに」
「ここで火を付けたら死ねるのに」
「ここで沈めば死ねるのに」
「ここで腹を裂けば死ねるのに」
解決する方法は簡単である
そこに求める答はないけれど
死について考える時だけは心も身体も軽い
そういうものなのさ
橋の上で地平線を眺める
月がこちらを見て嗤う
「自己欺瞞の成れ果てが」
そうかもしれない
だから空虚なのかもしれない
確かめる方法はたくさんあったはずなのに
今はもう、一つだけ
ただ一つだけ
悲しいのか?
でも涙は出ない
心も痛くない
「ーーなら確かめてみろ」
そう言われた気がした
誰に?
月か?
いや、僕自身に
この世において最も単純明快な解決策だ
橋の手摺に飛び乗り、真下を見る
真っ暗で何mあるのかも分からない
あぁ、こんなときに分からないだなんて
まぁいい
どちらにせよ結末は変わらない
一歩踏み出せば、おしまい
浅はかな自分に祈って
「もうなにも、なにもないんだから。なにも……」
ーー空に足を伸ばし、常闇へ堕ちた
未だ彼を知る者はなし