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1.結婚しよう

それは直感だった。

目の前に現れたのは、白。

そして、赤。

真っ白な中の赤に、囚われた。



■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□



ここは都会になりきれない、田舎とは言い難い、そんな街。

私はここで生まれた訳ではなく、この街に憧れている訳でもない。

仕事……この街の看守として配属された。

看守になったのは丁度3年前。

職探しのデータを新着順に見て、最初に目について応募したら採用となった。

その時私はまだ故郷に居て、その街の看守だった。

故郷で働くのは別に辛くもなく、楽しくもなく、普通。

だから別に配属先の異動は望んでいなかった。

そんな中、上司や先輩が苦味を潰したような顔で会話していたのを耳にした。


「あー、どうしようかねぇ」


「……何をですか、隊長」


「上からのラブレター。あの街の看守が足りないから誰かくれってよ」


「あの街?あー、あの死刑場ですか?」


「そー。とは言っても、"今は死刑ってどうよ?"派が多いから死刑執行は少なくなったけどな」


「そうですね。今死刑になるのは、相当頭のネジ吹き飛んだヤバい奴ぐらいです」


「そこが問題なんだよなぁ」


「問題?」


「イカれた奴しかいないから、誰もあそこの看守をやりたがらない」


「関わり合いになりたくないですよね、絶対」


「だよなぁ。頭おかしい奴と関わってたら、こっちまで気が狂っちまう」


「断れませんか?そんなとこにやれる子はウチには居ませんよ」


「オレも断りたいのよ。けどねぇ……」


「良い言い訳が無いと?」


「そー。突っぱねるそれなりの理由が必要な訳」


「こっちだって人足りてない、で良いじゃないですか」


「確かに足りてないんだけどな。上が言うには、ウチは多いらしくて1人寄こせだそうだ」


「無理無理無理。あんな所にやれる子はいません」


死刑場。

頭のイカれた奴らの最期の場所。

誰もやりたがらない仕事。


「隊長、副隊長。私が行きます」


自分から、言ってしまった。

私は仕事に対して非積極的だ。

与えられた仕事を忠実にこなし、勤務時間内に終わらせる。

面倒事は絶対に首を突っ込まないタイプ。

なのに、自然と口から出してしまい……今に至る訳だ。

後悔は今の所ない。

勤務場所付近の家を借りれたし、必要な物は近くのお店で買えて不便はない。

そして今の所、死刑確定者は1人だけ。

そう、目の前に囚われている女の子だけ。

透き通るような白い肌に、柔らかそうな白い長髪。

まつ毛も眉も真っ白。

ぷくっとした紅色の唇。

少し薄汚れた囚人服。

そしてなんと言っても、その赤い瞳。

ペタリとくだけた正座をしながら見上げてくる赤。

初めて会った時も思った。

一度、二度、三度、今でも思う。


「考えてくれた?結婚しよう」




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