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 目の前に並べられた刀はメインウエポンとして使うようになのか全て太刀のようだ。

 俺の手持ちは現在9100リルで、店主がある程度考慮してくれたのかどの刀も違いはあれど予算内に収まるものだった。


 ひとつ手にとって感触を確かめた後、ゆっくりと鞘から抜き取ると波紋のついた美しい刀身が現れた。


「おお・・・!」


「はは!そんなキラキラした目で熱心に見られると恥ずかしいもんだな。」


「これ、店主が打ったのか?」


 俺の感動した様子に照れたように反応する店主を見て質問すると、にかっと笑って頷いた。


「もちろんだ!ここにある武器は全部俺の作品だからな!」


「それは凄いな。」


 全て自分で打っているものと聞いて素直に驚く。

 ゲームなのだから当たり前なのかもしれないが、武器をつくる人が目の前にいることになんだか感慨深いものを感じる。


 商品には全て鑑定証がついていて武器の付加効果や製作者などが書かれている。

 鑑定証をつくるには鑑定士のジョブが必要になるので店を開くには必要なジョブだが、鑑定士はスキルが鑑定しかないので商売しないのならはっきりいってジョブの無駄だろう。クラスアップすればどうなるか分からないけど。

 しかし、少ないからこそ鑑定士は重宝されているらしい。


 俺は刀についた鑑定証をみながらどの刀がいいかじっくりと見極める。


「これ、かな?」


 手にとったのは鞘も持ち手も全体が黒でシンプルなデザインのもの。

 刀身は白銀で波紋も美しく、シンプルでよく見るオーソドックスな刀だ。

 値段は4000リルと良心的で俺でも余裕で買える値段だった。


【鉄の刀 ☆1】

 STR+15 AGI+20 耐久値:100%

 製作者:ガッツ


 ☆はレア度と呼ばれ装備できるレベルを表している。レア度がないやつもあるらしいが、プレイヤーメイドは大体レア度がある。

 俺はまだレベル1なので装備できるのは☆1までの装備だ。レベルが10になると☆2の武器や防具なども装備できるようになるというようなシステムになっている。

 消耗品にもレア度はあるが、プレイヤーのレベルに関係なく誰でも使える。その分値段は高くなるのでレベルの低いプレイヤーがレア度の高い消耗品を買うのは難しいだろうが。


 ちなみに武器の名前は作成者がつけるはずだ。

 ガッツのセンスのなさにはちょっと涙をそそられる。


「今、なんか失礼なこと考えなかったか?」


「べつに?」


 ガッツの怪しむような視線にさっと顔をそらしつつ答えると「・・・ま、いいか。」とガッツの呟きが聞こえた。


「その武器は妥当なところだな。使いやすいやつだし最初にはいい武器だと思うぞ。」


 話を戻すようにガッツが俺の選んだ武器を見てそう話した。

 ガッツにお墨付きをもらえたので初めて扱うにはこの刀はなかなかいい武器なのだろう。


「それじゃあこれにするよ。」


「おう!レベルが上がって武器が物足りなくなったらまた来てくれ!」


「ああ。そのときはよろしく。」


 お金を払って武器を買った俺はガッツに挨拶をして店を出た。

 早く試し切りをしたくてフィールドに駆けていきたい気持ちになるが、時間を確認するとそろそろ落ちなければならない時間だ。

 ゲームの中は時間が加速しているから普通の時間より長く遊べてはいるんだが、やはりゲームをしていると時間があっという間に過ぎていくように感じる。


 俺は買ったばかりの刀をメニューから装備するとログアウトの操作をしてゲームの世界を後にするのだった。


 次の日。朝食を食べ終えた俺はもろもろを済ませ、さっそくゲームにログインした。

 今は冬休みなので好きなだけゲームができるのだ。


 ログインした場所は昨日と同じく噴水のある広場。

 宿ではログアウトしなかったので当然だな。

 現実ではまだ朝だが、ゲームではどうやらお昼頃のようだった。


 今日の予定は刀の試し切りと新しいジョブの確認。


 と、その前に空腹を満たすために露店でなにか食べ物を買うことにする。

 食堂やレストランに行ってもいいんだが、今は早くフィールドに行きたいという気持ちがはやる。


 露店の通りは今日も賑わっていて、美味しそうな匂いと客を呼び込むための声が飛び交っていた。

 こうして見ているとNPCもプレイヤーも分からないくらいだな。


 俺はひとつの露店に立ち寄ると手軽に食べることができるように肉の挟まった大きめのサンドイッチを購入。

 ジュース、ここでは果実水というらしいが、それを専門に売っている店でブドウジュースも購入して食事にした。

 お値段は合計で240リルとお買い得。


 シャキシャキのキャベツと分厚い肉がタレによく絡んでいてボリュームもあり満足できる味だった。

 ブドウジュースも現実と変わらない味でなかなか美味しい。

 昨日も思ったが、こんな美味しくては食事のためにゲームを始めるとかいうのもありそうだ。


 適当なところで腰かけて食事を済ませるとさっそくフィールドへと向かう。

 ここは安全策をとって始まりの草原へと向かうことにした。

 余裕があるようなら今日のうちに違うフィールドに行きたいところだ。


 始まりの草原のフィールドは相変わらず人が少ない。

 第2陣が来るとしばらくはここも賑わうんだろうが、モンスターが弱すぎるために今は仕方がないだろう。

 今の俺にとってはのびのびと狩りができるのでラッキーではあるんだが。


 今日の狙いはトビウサギ。

 肉が旨いしここではよく食べられるので需要が高く、プチスライムよりも買い取り額が高い。

 攻撃手段は体当たりで魔法などの特殊攻撃はないが、プチスライムと違いスピードが高めで機動力がある。


 まあ、刀士のジョブはスピードに補正が大きいしトビウサギくらいなら大丈夫だと予想している。


 刀をすらりと引き抜いていつでも戦闘が開始できるように構えたまま獲物を探す。

 トビウサギはいきなりとびかかってくることがあるので注意しなくてはならない。


 少し歩くとガサゴソと草が揺れてウサギのモンスターが飛び出してきた。

 ここにいるウサギのモンスターはトビウサギしかいないので当たりだろう。


 むやみに自分から向かうことはせずに刀を構える。

 わざわざ自分の方から来てくれるんだ。

 俺はそれを待つだけでいい。


 トビウサギが跳んでくる進行方向に刀を置き、体を少しずらしてすれ違いざまにすっと刀を走らせる。


「ピギュ!」


 トビウサギの飛び込んでくる勢いが強かったからか、俺は特に苦労することもなくトビウサギを真っ二つにした。

 クリティカル判定でもあったのかもしれないな。


 赤いエフェクトが飛び散りトビウサギが力をなくしたようにどさりと横たわった。


 うん。見た目が可愛い分、ゲームとはいえなんだか罪悪感があるな。

 救いはグロいことになっていないことか。


 モンスターは傷を受けると赤いキラキラしたダメージエフェクトが出るんだが、リアルな血とか肉とかは表現されていない。

 真っ二つに切れたモンスターの断面はただ黒い表面になっている。

 そこまでリアルにするとゲームを楽しめない人が出てくるだろうからその配慮だろうな。


 ちなみにモンスターではない普通の動物はその部分もリアルに表現されていて、モンスターとは違い解体ができるそうだ。だから、ドロップ品はないけど、一度に皮や全ての肉の部位などを入手できる。

 猟師のジョブをとればモンスターでも解体ができるようになると聞いたけど。

 まあ、俺には関係ないかな。


 俺はトビウサギに近づいて剥ぎ取りナイフを突き立てる。

 ドロップしたのはなぜか竹の葉につつまれたウサギの肉。


 なんで包装してあるのかと聞くのはお間違いなんだろうな、きっと。

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