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純粋な魔術師系のジョブを選択することにした。
こういったファンタジーの世界のゲームにはやはり魔法使いというのは憧れる。
問題はどの魔術師のジョブにするかなんだが。
「・・・『風の魔術師』のジョブを選択する。」
『『風の魔術師』のジョブが選択されました。続けてジョブを選択しますか?』
「ああ。」
特に変わった感じはなかったが新しいジョブを獲得できたらしい。
迷ったあげく選択したのは風の魔術師。
特に深い意味はなくてなんとなくだが、うまくすれば空を飛べたりするんじゃないかと期待している。
これで残るジョブはあと3つ。
無理して埋める必要はないが、ステータス値にプラスがあるので選択しておいた方がお得だという思いはある。
ジョブを多く選択する利点はステータス値やスキルを多く覚えられることで、欠点は経験値が分散されるのでジョブのレベルが上がりにくくなること。
どっちにしろジョブのレベルキャップは100レベルなので最終的にはジョブを全て埋めることにはなる。
「ランダムを。」
結局めぼしいジョブに検討がつかなかったので全部選択するのは欲しいジョブを見つけてからでも遅くはないはず。
とりあえずランダムであとひとつジョブを選択して2つは保留にしておくことにした。
『ランダムが選択されました。ジョブをランダムで表示します。』
ルーレットの画面が表示されてドラムのような音とともにくるくるとまわる。
数秒待つとピコン!と音がなって画面にジョブが表示された。
「『召喚士』か・・・。」
ランダムで表示されたジョブを見て考える。
ゲームのジョブとしてはそこそこメジャーなものだろう。
どうせ一緒にプレイするようなメンバーもいないし、ソロの俺にとってこれはなかなかいい選択じゃないだろうか?
「質問なんだがテイマーのジョブもあるのか?」
『はい。調教師というジョブがあります。』
やっぱりサモナーがあればテイマーもあったか。
調教師って名前はちょっとあれだが、普通のテイマーだよな?
「2つのジョブの違いは?」
『ひとつはモンスターの入手方法ですね。テイマーはフィールドに現れた魔物をテイムして仲間にします。それに対して召喚士、サモナーは召喚によってランダムで仲間にするのです。ふたつめは連れ歩く必要があるかないかです。テイマーはモンスターを連れながら行動しなければいけませんが、サモナーは召喚によって召喚や送還が可能です。』
なるほど。
どちらにも長所と短所があるわけか。
召喚士は召喚や送還があるので必要なときだけ呼び出しができるので便利だが、仲間がランダムで決められるというのは痛いところではある。
が、逆に考えればアタリなら見たこともない強力なモンスターを仲間にできる可能があるということでもある。
それはとても魅力的だ。
うん。召喚いいんじゃないか?
「『召喚士』のジョブを選択する。」
『『召喚士』のジョブが選択されました。続けてジョブを選択しますか?』
「いや。今回はここまでで。」
『かしこまりました。ジョブの選択を終了します。引き続き『fragment・online』の世界をお楽しみください。』
ひとまずジョブ選択が終わり転移したのはシスターが案内してくれたもとのジョブクリスタルのある場所。
《「チュートリアル4、神殿でジョブを獲得しよう」をクリアしました。報酬1000リルを獲得しました。》
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チュートリアル
1、冒険者ギルドで登録しよう。 クリア!
2、依頼を受けてみよう。クリア!
3、戦闘をしてみよう。クリア!
4、神殿でジョブを獲得しよう。クリア!
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《おめでとうございます!すべてのチュートリアルをクリアしました。報酬5000リルを獲得しました。これでチュートリアルを終了します。引き続き『fragment・online』の世界をお楽しみください。》
チュートリアルを全部済ませたところでアナウンスが流れ、チュートリアルの終わりを確認する。
やっとチュートリアルを全部終わらせることができたか。
報酬も結構もらえたし、刀を買う資金にできるからありがたいな。
刀の値段もちょっと分からないし、いい武器を買いたいからお金はあればあるだけいい。
「お疲れ様でした。無事ジョブを選択できましたか?」
声をかけられて振り向くとシスターが微笑みながらたたずんでいた。
「ええ。おかげさまで。」
「それはようございました。あなたに神のご加護があらんことを。」
何故か急に祈ってくれたシスターは祈りを終えるとそのまま俺を外まで案内してくれた。
挨拶をして神殿を後にした俺は次の目的だった刀を入手するため武器屋へと向かう。
防具も欲しいところだが、情報によるとレベル10くらいまでは最初にもらった初期装備で十分足りるそうだ。
初期装備は耐久値がなくて使いやすいらしいし。
露店の多い道を通ると客を呼び込むための声と引き寄せられるような美味しそうな匂いであふれていた。
「ちょっとそこのお兄さん!うちの串焼き食べていかない?うちの自慢、特性の甘だれ美味しいよ!」
こちらに向かって元気に声を張り上げるおば、マダムに手招きされるまま近づいた。
たしかに香ばしくて食欲をそそるいい匂いだし、ちょうどお腹が空いていたところだ。
ちなみにこのゲームには目に見える形では表示されないが空腹システムが存在している。
食事をとらないと空腹を感じ、それを無視しているとバッドステータスがつくのだ。
「たしかに美味しそうな匂いだな。これはなんの肉なんだ?」
「もちろんトビウサギさ。安価で美味しいからここじゃよく食べられるんだよ。」
「へえー。じゃあ2本買うよ。」
「あいよ!2本で60リルだよ!」
2本で60リルということは1本30リルなのか。
このゲームでの定価は分からないけどお手軽な値段だと思う。
まるでエアペイみたいだなと思いながらパネルにギルドカードをかざして支払いを済ませると香ばしい匂いをさせる串焼きを2本受けとる。
「まいどあり!」
店主の元気な声を背に道を歩きながら行儀が悪いなと思いながらも串焼きをかじる。
香ばしい甘いたれが舌を喜ばせ、柔らかい肉を噛み締めた。
「うまいな!」
ゲームの世界で普通に味覚を感じるだけでも凄いのに、それに加えて現実にも劣らない美味しさ。
それだけだもこのゲームに価値があるといえるはずだ。
あっという間にぺろりと2本とも食べ終えると今度こそ武器屋を探して道を歩く。
探しているのは掲示板で目をつけたプレイヤーの店だ。
「あれか?」
見つけたのは『ガッツの武器屋』とかかれた看板がかけれた小さな店。
どうやらプレイヤーの店らしく、まだ一週間しかたっていないのにもう自分の店をたてているとは素直に驚く。もしかしたらβテスターかもしれないな。
ドアを開けるとカランカランといい音がして、カウンターから低い声で「いらっしゃい。」と声がかけられた。
「どうも。」
「あんた見ない顔だな。新規プレイヤーか?」
「そうなんだ。今日始めてね。」
にかっと笑うドワーフのプレイヤーは楽しそうに笑いながら何度も頷いた。
「そうかそうか。これはいいゲームだからかなり楽しめると思うぞ。それで今日は武器探しか?」
「まあね。刀を探しにきたんだ。」
「刀か。刀って人気なんだが扱いが難しいらしくてな。武器を変えるやつが結構多いんだよ。」
「そっか。たしかにまったくの素人には難しいかもな。俺はちょっとは経験があるから多分大丈夫、かも。」
「おう。なんだ経験者だったか。それなら余計なお世話だったかもな。」
「いや。真剣は触ったことないし、経験っていってもたいしたものはしてない。」
本当に自慢できるほどやってないからな。
剣道やっている人は別かもしれないけど。
「じゃあ、まだ始めたばかりなんだよな。そんなにレベルの高い武器は無理か。そんじゃこれの中から好きなのを選んでくれ。」
店主のプレイヤーが持ってきてくれたのは合計八本の刀。
ゲームの中だけどいよいよ真剣を持てるということに興奮する。
ああ、このゲーム始めて良かったな。
俺は刀を眺めながらこのゲームをくれた姉さんに心の中でそっとお礼を述べるのだった。